サイバーキルチェーンの意味と紛らわしい用語の区別
情報セキュリティマネジメント試験 令和6年度 問4 / セキュリティ › 情報セキュリティ
過去問にチャレンジ
サイバーキルチェーンに関する説明として,適切なものはどれか。
- ア
委託先の情報セキュリティリスクが委託元にも影響するという考え方を基にしたリスク分析のこと
- イ
攻撃者がクライアントとサーバとの間の通信を中継し,あたかもクライアントとサーバが直接通信しているかのように装うことによって情報を盗聴するサイバー攻撃手法のこと
- ウ
攻撃者の視点から,攻撃の手口を偵察から目的の実行までの段階に分けたもの
- エ
取引データを複数の取引ごとにまとめ,それらを時系列につなげたチェーンに保存することによって取引データの改ざんを検知可能にしたもの
会話形式の解説
講師今回はサイバーキルチェーンの意味を問う問題です。選択肢には、別の用語の説明が混ざっています。それぞれ何の説明なのかを見分けられるかがポイントです。
受験者「チェーン」という名前なので、何かがつながっていく話だとは思います。ただ、委託先のリスクの選択肢も、取引データをチェーンにつなぐ選択肢もそれらしく見えて迷いました。
講師そこが狙われているところです。まず、委託先の情報セキュリティリスクが委託元にも影響する、という考え方は何と呼ばれるでしょうか。
受験者取引先とのつながりから生じるリスクなので、サプライチェーンリスクでしょうか。
講師そのとおりです。名前に「チェーン」が入っていますが、取引先とのつながりによるリスクの話です。攻撃を段階に分けて整理するモデルではありません。
受験者取引データを取引ごとにまとめて時系列につなげ、改ざんを検知できるようにする選択肢は、ブロックチェーンですよね。
講師はい。ブロック同士をハッシュ値などで連結しているので、過去のデータを書き換えると矛盾が出て見つかりやすくなります。ハッシュ値は、データから計算される要約値のようなものです。これも攻撃の段階モデルとは関係がありません。
受験者通信を中継して、クライアントとサーバが直接やり取りしているように見せかけて盗聴する選択肢は、攻撃の話なので正解に近いのかと思いました。
講師その説明は中間者攻撃のものです。攻撃に関する内容ではありますが、具体的な攻撃手法の一つにすぎません。サイバーキルチェーンは個別の手口ではなく、攻撃全体の流れを段階に分けて整理する枠組みです。ここで性格が違います。
受験者そうすると、攻撃者の視点から、偵察から目的の実行までの段階に分けたもの、という選択肢が正解ですね。
講師そうです。代表的な段階は、偵察・武器化・配送・攻撃・設置・遠隔操作・目的の実行の7つです。段階ごとに検知や遮断の対策を考え、なるべく早い段階で攻撃を断ち切るために使われます。
受験者整理すると、委託先のリスクはサプライチェーンリスク、通信の中継による盗聴は中間者攻撃、データを連結して改ざんを検知するのはブロックチェーン、攻撃を段階に分けるモデルがサイバーキルチェーン、ということですね。
講師よく整理できています。この問題には、サイバーキルチェーン、サプライチェーンリスク、ブロックチェーンと、「チェーン」の付く紛らわしい用語が並んでいます。響きだけで選ばないようにしましょう。なお、攻撃手法をもっと細かく分類した知識ベースとしてMITRE ATT&CKがあり、サイバーキルチェーンと一緒に使われることもあります。
まとめ
サイバーキルチェーンは、攻撃者の視点から、攻撃の手口を偵察から目的の実行までの段階に分けて整理したモデルです。代表的な段階は、偵察・武器化・配送・攻撃・設置・遠隔操作・目的の実行の7つで、段階ごとに検知や遮断の対策を考えるのに使います。委託先のリスクが委託元に及ぶ考え方はサプライチェーンリスク、通信を中継して盗聴する手口は中間者攻撃、取引データを連結して改ざんを検知する仕組みはブロックチェーンです。「チェーン」の付く用語が並んでいるので、名前の響きではなく中身で区別することが大切です。
解答・解説
正解はウです
この問題のテーマ
サイバーキルチェーンの意味を正しく理解しているかを問う問題です。サプライチェーンリスク、中間者攻撃、ブロックチェーンといった、名前や説明が紛らわしい用語と区別できるかが問われています。
解き方の考え方
まず、サイバーキルチェーンが「攻撃者の視点から、攻撃を段階に分けて整理したモデル」であることを思い出します。そのうえで、各選択肢がどの用語の説明なのかを判断していきます。委託先のリスク、通信の中継による盗聴、取引データの連結による改ざん検知は、それぞれ別の用語を説明したものだと見抜ければ、消去法でも正解にたどり着けます。
選択肢ごとの解説
- ×ア 委託先の情報セキュリティリスクが委託元にも影響するという考え方を基にしたリスク分析のこと委託先の情報セキュリティリスクが委託元にも影響するという考え方は、サプライチェーンリスクに当たります。名前に「チェーン」が入っていて紛らわしいですが、取引先とのつながりから生じるリスクの話です。攻撃の段階を整理するモデルではありません。
- ×イ 攻撃者がクライアントとサーバとの間の通信を中継し,あたかもクライアントとサーバが直接通信しているかのように装うことによって情報を盗聴するサイバー攻撃手法のことクライアントとサーバの通信を中継し、両者が直接通信しているように見せかけて盗聴する手口は、中間者攻撃の説明です。これは具体的な攻撃手法の一つです。攻撃全体の流れを段階に分けて整理する枠組みであるサイバーキルチェーンとは性格が異なります。
- ○ウ 攻撃者の視点から,攻撃の手口を偵察から目的の実行までの段階に分けたもの攻撃者の視点から、攻撃の手口を偵察から目的の実行までの段階に分けたものは、サイバーキルチェーンの説明です。段階は偵察・武器化・配送・攻撃・設置・遠隔操作・目的の実行の7つが代表的です。段階ごとに検知や遮断の対策を考えるために使われます。
- ×エ 取引データを複数の取引ごとにまとめ,それらを時系列につなげたチェーンに保存することによって取引データの改ざんを検知可能にしたもの取引データを複数の取引ごとにまとめ、時系列につなげて改ざんを検知できるようにする仕組みは、ブロックチェーンです。ブロック同士をハッシュ値などで連結するため、過去のデータを書き換えると矛盾が生じて発覚しやすくなります。攻撃の段階モデルとは関係がありません。
補足
この問題では、選択肢の多くに「チェーン」という語が関係しているため、言葉の響きだけで選ぶと間違えやすくなっています。サイバーキルチェーンは特定の攻撃手法ではなく、攻撃の流れを整理するための枠組みだという点を押さえておくと、イの中間者攻撃のような個別の手口と混同しにくくなります。攻撃手法をより細かく分類した知識ベースとしてMITRE ATT&CKがあり、サイバーキルチェーンと併せて使われることがあります。
POINT
- サイバーキルチェーンは、攻撃を攻撃者の視点で段階に分けて整理したモデルです。
- 代表的な段階は、偵察・武器化・配送・攻撃・設置・遠隔操作・目的の実行の7つです。
- 段階ごとに検知や遮断の対策を検討し、なるべく早い段階で攻撃を断ち切ることに役立てます。
- 委託先のリスクはサプライチェーンリスク、通信の中継による盗聴は中間者攻撃、データの連結による改ざん検知はブロックチェーンと区別して覚えます。
