VDIによるWeb閲覧の分離で期待できる効果とは
情報セキュリティマネジメント試験 2022年 サンプル問題 問9 / セキュリティ › 情報セキュリティ対策
過去問にチャレンジ
A社では現在,インターネット上のWebサイトを内部ネットワークのPC上のWebブラウザから参照している。新たなシステムを導入し,DMZ上に用意したVDI(Virtual Desktop Infrastructure)サーバにPCからログインし,インターネット上のWebサイトをVDIサーバ上の仮想デスクトップのWebブラウザから参照するように変更する。この変更によって期待できるセキュリティ上の効果はどれか。
- ア
インターネット上のWebサイトから,内部ネットワークのPCへのマルウェアのダウンロードを防ぐ。
- イ
インターネット上のWebサイト利用時に,MITB攻撃による送信データの改ざんを防ぐ。
- ウ
内部ネットワークのPC及び仮想デスクトップのOSがボットに感染しなくなり,C&Cサーバにコントロールされることを防ぐ。
- エ
内部ネットワークのPCにマルウェアが侵入したとしても,他のPCに感染するのを防ぐ。
会話形式の解説
講師今回は、Webの閲覧を内部ネットワークのPCから、DMZに置いたVDIサーバ上の仮想デスクトップに移したときの効果を考える問題です。VDIは、サーバ上に利用者ごとの仮想的なデスクトップ環境を用意し、PCには操作結果の画面だけを送る仕組みです。変更の前と後で、インターネットと通信するのはどの機器かに注目してください。
受験者変更前はPCのブラウザが直接Webサイトと通信していました。変更後は仮想デスクトップのブラウザが通信するので、PCはインターネットと直接やりとりしなくなる、ということですか。
講師そのとおりです。Webから取ったファイルも、置かれるのはPCではなくDMZ上の仮想デスクトップになります。PCに届くのは画面だけです。
受験者それなら、うっかりマルウェアをダウンロードしても、入るのは仮想環境のほうですね。内部PCへのマルウェアのダウンロードを防ぐという選択肢が合いそうです。
講師はい、それが正解です。Webから内部PCへ直接ファイルが入る経路が分離される、というのがVDI導入の効果そのものです。汚染された仮想環境は削除できるので、内部ネットワークへの影響も避けやすくなります。
受験者MITB攻撃による送信データの改ざんを防ぐという選択肢も、ブラウザが別の場所にあるなら防げそうな気がして迷いました。
講師MITB攻撃は、利用者側のブラウザにマルウェアが入り込み、送信内容を書き換える攻撃です。仮想デスクトップ上のブラウザもそのマルウェアに感染するおそれがあるので、ブラウザを動かす場所を移しても根本的な対策にはなりません。VDIは閲覧場所を移す仕組みで、改ざんを防ぐ技術ではないのです。改ざん対策には、取引内容に署名して確かめる方法などが別に必要です。
受験者PCと仮想デスクトップのOSがボットに感染しなくなる、という選択肢はどうでしょうか。PCがインターネットと直接通信しないなら、感染しにくくなるとは思うのですが。
講師「感染しなくなる」とまで言うのは言い過ぎです。仮想デスクトップのOSも普通のOSと同じようにボットに感染することがあり、VDIを使っても感染しない保証はありません。この選択肢のように効果を言い切っている表現には注意が必要です。
受験者PCに侵入したマルウェアが他のPCに広がるのを防ぐ、という選択肢も、VDIとは別の話ということですね。
講師そうです。VDIは、Web経由でマルウェアが内部PCに入る経路を分けるための仕組みです。すでに侵入した後に内部ネットワークで感染が広がるのを防ぐには、ネットワークを分けるなど別の対策が必要になります。
受験者まとめると、VDIは入口を分ける対策であって、通信の改ざん防止や感染しない保証、内部での感染拡大防止までは含まない、という理解でよいでしょうか。
講師その理解で大丈夫です。VDIの問題では、何と何が分離されるのかをまず押さえ、その範囲を超える効果をうたう選択肢を外していくと判断しやすくなります。
まとめ
DMZ上のVDIサーバでWebを閲覧するように変えると、インターネットと通信してファイルを受け取るのは仮想デスクトップになり、PCには画面だけが届きます。そのため、Webから内部PCへマルウェアが直接ダウンロードされる経路が分離されます。一方、VDIはMITB攻撃による改ざんを防ぐ技術ではなく、仮想デスクトップのOSがボットに感染しない保証もありません。内部ネットワークでの感染拡大を防ぐには、ネットワーク分離など別の対策が必要です。
解答・解説
正解はアです
この問題のテーマ
Web閲覧の場所を内部ネットワークのPCから、DMZに置いたVDIサーバ上の仮想デスクトップに移したとき、どのようなセキュリティ効果が得られるかを問う問題です。VDIで「何が分離されるのか」を正しく理解しているかがポイントになります。
解き方の考え方
まず、変更の前と後で、インターネットと通信してファイルを受け取るのがどの機器なのかを比べます。変更後にWebサイトと通信するのはDMZ上の仮想デスクトップで、PCにはその画面が届くだけです。つまり、Webから取ったファイルはPCではなく仮想デスクトップに置かれます。この「通信とファイルの置き場所が分かれる」という効果に当てはまる選択肢を選び、VDIの役割を超える効果をうたう選択肢を外していきます。
選択肢ごとの解説
- ○ア インターネット上のWebサイトから,内部ネットワークのPCへのマルウェアのダウンロードを防ぐ。内部PCへのマルウェアのダウンロードを防ぐという説明は、VDIを導入する効果そのものです。Webサイトと通信してファイルを受け取るのはDMZ上の仮想デスクトップなので、マルウェアをダウンロードしてしまっても置かれる場所は仮想環境になります。PCには画面しか届かないため、Webから内部PCへ直接ファイルが入る経路がなくなります。
- ×イ インターネット上のWebサイト利用時に,MITB攻撃による送信データの改ざんを防ぐ。MITB攻撃による送信データの改ざんを防ぐという説明は、VDIの役割から外れています。VDIはWebを閲覧する場所を移す仕組みで、通信データの改ざんを防ぐ技術ではありません。仮想デスクトップ上のブラウザもMITBを仕掛けるマルウェアに感染するおそれがあり、改ざんへの対策としては取引内容に署名して確かめる方法などが別に必要です。
- ×ウ 内部ネットワークのPC及び仮想デスクトップのOSがボットに感染しなくなり,C&Cサーバにコントロールされることを防ぐ。PCと仮想デスクトップのOSがボットに感染しなくなるという説明は言い過ぎです。仮想デスクトップのOSも普通のOSと同じようにボットに感染することがあり、VDIを使っても感染しないという保証はありません。
- ×エ 内部ネットワークのPCにマルウェアが侵入したとしても,他のPCに感染するのを防ぐ。PCに侵入したマルウェアが他のPCへ広がるのを防ぐという説明は、VDIの効果ではありません。VDIは、Webを経由してマルウェアが内部PCに入る経路を分けるための仕組みです。すでに侵入した後に内部ネットワークで感染が広がるのを防ぐには、ネットワークを分けるなど別の対策が必要です。
補足
「感染しなくなる」「必ず防ぐ」のように効果を言い切る選択肢は、多くの場合誤りです。また、MITB攻撃は利用者側のブラウザに入り込んで送信内容を書き換える攻撃なので、ブラウザを動かす場所を移しても根本的な対策にはなりません。
POINT
- VDIはサーバ上に利用者ごとの仮想デスクトップを用意する仕組みで、PCには操作結果の画面だけが送られます。
- Web閲覧をDMZ上のVDIで行うと、PCがインターネットと直接通信しなくなり、Webから取ったファイルを処理する場所もPCから切り離せます。
- マルウェアに汚染された仮想環境は削除できるので、内部ネットワークへの影響を避けやすくなります。
- VDIは「入口を分ける」対策であり、通信の改ざん防止、感染しない保証、内部での感染拡大防止までは含みません。
