内蔵ストレージを抜き取られたとき、どのパスワードなら守れるか
情報セキュリティマネジメント試験 平成31年度春期 午前 問22 / セキュリティ › 情報セキュリティ対策
過去問にチャレンジ
利用者PCの内蔵ストレージが暗号化されていないとき,攻撃者が利用者PCから内蔵ストレージを抜き取り,攻撃者が用意したPCに接続して内蔵ストレージ内の情報を盗む攻撃の対策に該当するものはどれか。
- ア
内蔵ストレージにインストールしたOSの利用者アカウントに対して,ログインパスワードを設定する。
- イ
内蔵ストレージに保存したファイルの読取り権限を,ファイルの所有者だけに付与する。
- ウ
利用者PC上でHDDパスワードを設定する。
- エ
利用者PCにBIOSパスワードを設定する。
会話形式の解説
講師今回は、PCから内蔵ストレージを抜き取られる攻撃への対策を考える問題です。注目してほしいのは、攻撃者がストレージを『自分で用意したPC』につなぐという点です。
受験者選択肢にパスワードの話がいくつも並んでいて、どれも効きそうに見えました。ログインパスワードを設定しておけば、とりあえず中は見られないのではと考えたのですが。
講師そう感じる人は多いです。ただ、OSのログインパスワードは、そのストレージに入っている元のOSを起動したときにしか働きません。攻撃者は自分のPCにストレージをつなぐので、元のOSは起動しないまま中身を読めてしまいます。
受験者ということは、ファイルの読取り権限を所有者だけにする設定も同じでしょうか。権限もOSが管理しているものですよね。
講師そのとおりです。アクセス権はOSが管理する仕組みなので、攻撃者の環境では元のOSの権限管理が働きません。権限の設定を迂回してファイルを読み出せるので、抜き取りへの対策にはなりません。
受験者BIOSパスワードはOSより手前の段階で効くので、こちらなら防げそうな気がします。
講師BIOSは、PCの起動時に最初に動く基本的なプログラムのことです。BIOSパスワードは、設定したPC本体の起動などを制限するもので、認証の情報はPC本体の側にあります。ストレージだけを抜いて別のPCにつなげば、この認証は関係なくなってしまいます。
受験者なるほど。守っているのはPC本体であって、ストレージではないのですね。そうすると、HDDパスワードはストレージそのものに掛かるパスワードということですか。
講師はい。HDDパスワードは、ストレージ装置の側でアクセスを制限する仕組みです。別のPCにつないでもこの認証が働くので、パスワードを知らない攻撃者は中のデータを読み出せません。これが正解です。
受験者整理すると、ログインパスワードとアクセス権はOS、BIOSパスワードはPC本体、HDDパスワードはストレージで働いていて、抜き取られても残るのはストレージ側の保護だけ、ということですね。
講師よく整理できています。『パスワード』と名の付く選択肢が並んだら、その認証がOS、PC本体、ストレージのどこにあるかで見分けるのがコツです。
講師補足すると、HDDパスワードとデータの暗号化は別物です。持ち出されたときの漏えい対策としては、ストレージ全体を暗号化する方法もよく使われます。また、HDDパスワードがどれだけ守ってくれるかは製品の実装によって違うことも、知っておくとよいでしょう。
まとめ
内蔵ストレージを抜き取って攻撃者のPCにつなぐ攻撃では、元のPCのOSやBIOSを通らずにデータが読まれます。OSのログインパスワードやファイルのアクセス権は、元のOSが動いているときにしか効きません。BIOSパスワードはPC本体を守る仕組みなので、抜き取ったストレージには効果が及びません。ストレージ装置自体で認証するHDDパスワードなら、別のPCにつないでも保護が残るため、これが対策になります。
解答・解説
正解はウです
この問題のテーマ
PCから抜き取った内蔵ストレージを攻撃者が別のPCにつないで情報を盗む攻撃に対して、どの認証・保護なら効果があるかを問う問題です。それぞれの対策が「どこで」働くのかの理解が問われます。
解き方の考え方
まず、攻撃者はストレージを攻撃者自身のPCにつなぐので、元のPCや元のOSは動かないことを押さえます。そのうえで、各選択肢の保護がOS、元のPCの本体(BIOS)、ストレージ装置自体のどこで働くかを分けて考えます。ストレージを別のPCに移しても保護が残るのは、ストレージ装置の側でアクセスを制限する仕組みだけです。この条件に合う選択肢を選びます。
選択肢ごとの解説
- ×ア 内蔵ストレージにインストールしたOSの利用者アカウントに対して,ログインパスワードを設定する。OSの利用者アカウントにログインパスワードを設定する対策は、元のOSを起動したときにしか働きません。攻撃者は自分のPCにストレージをつなぎ、元のOSへのログインを経ずにデータを読めます。そのため、ストレージを持ち出す攻撃は防げません。
- ×イ 内蔵ストレージに保存したファイルの読取り権限を,ファイルの所有者だけに付与する。ファイルの読取り権限を所有者だけに与える設定は、OSが管理するアクセス権です。攻撃者の環境では元のOSの権限管理が働かないので、その権限を迂回してファイルを読み出せます。ストレージの抜き取りへの対策にはなりません。
- ○ウ 利用者PC上でHDDパスワードを設定する。HDDパスワードは、ストレージ装置の側でアクセスを制限する仕組みです。ストレージを取り外して別のPCにつないでもこの認証は働くので、パスワードを知らない攻撃者は中のデータを読み出せません。これが正解です。
- ×エ 利用者PCにBIOSパスワードを設定する。BIOSパスワードは、設定したPC本体の起動などを制限するものです。認証の情報はPC本体の側にあるので、ストレージだけを抜き取って別のPCにつなげば、この認証は関係なくなります。そのため、ストレージ内の情報は守れません。
補足
「パスワード」と名の付く選択肢が並ぶときは、その認証がOS、PC本体、ストレージのどこにあるかで見分けるのが手がかりです。また、HDDパスワードとデータの暗号化は別物です。持ち出されたときの漏えい対策としては、ストレージ全体を暗号化する方法もよく使われます。HDDパスワードがどれだけ守ってくれるかは製品の実装によって違う点も、知っておくとよいでしょう。
POINT
- ストレージを抜き取る攻撃では、元のPCのOSやBIOSを通らずにデータを読まれます。
- OSのログインパスワードとファイルのアクセス権は、どちらも元のOSが動いているときにしか効きません。
- BIOSパスワードはPC本体を守る仕組みなので、抜き取ったストレージには効果が及びません。
- HDDパスワードはストレージ装置自体で認証するので、別のPCにつないでも保護が残ります。
