ハイブリッド暗号方式のメールで守れるものを鍵の使い方から考える
情報セキュリティマネジメント試験 令和元年度秋期 午前 問26 / セキュリティ › 情報セキュリティ対策
過去問にチャレンジ
手順に示す電子メールの送受信によって得られるセキュリティ上の効果はどれか。 〔手順〕 (1)送信者は、電子メールの本文を共通鍵暗号方式で暗号化し(暗号文)、その共通鍵を受信者の公開鍵を用いて公開鍵暗号方式で暗号化する(共通鍵の暗号化データ)。 (2) 送信者は、暗号文と共通鍵の暗号化データを電子メールで送信する。 (3)受信者は、受信した電子メールから取り出した共通鍵の暗号化データを、自分の秘密鍵を用いて公開鍵暗号方式で復号し,得た共通鍵で暗号文を復号する。
- ア
送信者による電子メールの送達確認
- イ
送信者のなりすましの検出
- ウ
電子メールの本文の改ざん箇所の修正
- エ
電子メールの本文の内容の漏えいの防止
会話形式の解説
講師今回は、共通鍵暗号と公開鍵暗号を組み合わせて電子メールを送る手順から、どんなセキュリティ上の効果が得られるかを考える問題です。手順の中で「誰のどの鍵が、何に使われているか」に注目してください。
受験者本文を共通鍵で暗号化して、その共通鍵を受信者の公開鍵で暗号化していますね。公開鍵暗号が出てくるので、なりすましの検出もできそうな気がして迷いました。
講師そこが引っかけどころです。手順で使われている公開鍵は、受信者のものです。受信者の公開鍵は誰でも手に入れて使えるので、第三者が同じ手順で暗号化して送っても、受信者には区別がつきません。
受験者送信者本人だと確かめるには、送信者の秘密鍵を使う処理が必要ということですか。
講師そのとおりです。送信者の秘密鍵で署名し、受信者がそれを検証する処理があれば送信者を確認できます。今回の手順には送信者の秘密鍵も署名の検証も出てこないので、なりすましの検出は得られません。
受験者では、本文の漏えい防止が正解でしょうか。共通鍵は受信者の秘密鍵でしか取り出せないので、途中で盗み見られても本文は読めないはずです。
講師正解です。共通鍵を復号できるのは対応する秘密鍵を持つ受信者だけなので、第三者は本文を読めません。これは機密性の確保にあたります。
受験者改ざん箇所の修正はどうでしょう。暗号文が書き換えられたら、復号がおかしくなって気付けるのではないかと思いました。
講師復号がうまくいかず、異常に気付ける場合はあります。ただ、どこが改ざんされたかを特定することも、元に戻すことも、この手順ではできません。改ざんを確実に検出したいなら、デジタル署名やMACを別に使う必要があります。
受験者送達確認のほうは、受信者から送信者へ「受け取りました」と返す仕組みが手順にないので、当てはまらないですね。
講師はい。手順にあるのは暗号化して読めなくする処理だけで、受信応答はありません。だから、得られる効果は機密性に限られると判断できます。
受験者受信者の公開鍵で暗号化すれば機密性、送信者の秘密鍵で署名すれば送信者の認証と改ざん検出、と分けて覚えればよさそうです。
講師その整理で大丈夫です。補足すると、この方式はハイブリッド暗号方式と呼ばれます。共通鍵を受信者の公開鍵で暗号化するので共通鍵を安全に渡せますし、公開鍵暗号で処理するのはサイズの小さい鍵だけなので、本文全体を公開鍵暗号で暗号化するより処理時間を短くできます。電子メールでの代表例にはS/MIMEやPGPがあります。
まとめ
本文を共通鍵で暗号化し、その共通鍵を受信者の公開鍵で暗号化して送る方式はハイブリッド暗号方式と呼ばれます。共通鍵を取り出せるのは受信者の秘密鍵を持つ本人だけなので、この手順で得られる効果は本文の漏えい防止、つまり機密性の確保です。受信者の公開鍵は誰でも使えるため、この手順だけでは送信者のなりすましは検出できません。また、改ざんがあれば復号の失敗で気付ける場合はありますが、確実に検出するにはデジタル署名やMACが必要で、改ざん箇所の修正もできません。受信者の公開鍵による暗号化は機密性、送信者の秘密鍵による署名は認証と改ざん検出、と区別して覚えましょう。
解答・解説
正解はエです
この問題のテーマ
共通鍵暗号と公開鍵暗号を組み合わせたハイブリッド暗号方式で電子メールを送受信したときに、どのセキュリティ上の効果が得られるかを問う問題です。
解き方の考え方
まず、手順の中でどの鍵が何に使われているかを確認します。本文は共通鍵で暗号化され、その共通鍵は受信者の公開鍵で暗号化されています。この共通鍵を取り出せるのは、対応する秘密鍵を持つ受信者だけです。手順にあるのは「暗号化して読めなくする」処理だけで、署名や受信応答の処理はありません。そのため、得られる効果は機密性の確保に限られると判断できます。
選択肢ごとの解説
- ×ア 送信者による電子メールの送達確認送達確認の説明は、この手順には当てはまりません。受信者が受け取ったことを送信者に知らせる受信応答のような仕組みは、手順のどこにも含まれていないからです。
- ×イ 送信者のなりすましの検出なりすましの検出という説明も誤りです。受信者の公開鍵は誰でも使えるので、第三者が同じ手順で暗号化して送っても区別できません。手順では送信者の秘密鍵が使われておらず、署名を検証する処理もないため、送信者本人であることは確かめられません。
- ×ウ 電子メールの本文の改ざん箇所の修正改ざん箇所の修正という説明は誤りです。暗号文が改ざんされると復号がうまくいかず、異常に気付ける場合はあります。しかし、どこが改ざんされたかを特定することも、元に戻すこともこの手順ではできません。
- ○エ 電子メールの本文の内容の漏えいの防止本文の漏えい防止という説明が正解です。本文は共通鍵で暗号化され、その共通鍵も受信者の公開鍵で暗号化されています。共通鍵を復号できるのは秘密鍵を持つ受信者だけなので、途中で盗聴されても第三者は本文を読めません。
補足
共通鍵を受信者の公開鍵で暗号化して送るので、共通鍵を安全に受け渡せます。また、公開鍵暗号で処理するのはサイズの小さい鍵だけなので、本文全体を公開鍵暗号で暗号化するより処理時間を短くできます。受信者の公開鍵で暗号化すれば機密性、送信者の秘密鍵で署名すれば送信者の認証と改ざん検出、と区別して覚えましょう。この仕組みを使った電子メールの代表例に、S/MIMEやPGPがあります。
POINT
- 本文は共通鍵で暗号化し、その共通鍵を受信者の公開鍵で暗号化して送る方式をハイブリッド暗号方式といいます。
- 受信者の公開鍵で暗号化した情報は、受信者の秘密鍵でしか復号できないため、得られる効果は機密性の確保です。
- 暗号化だけでは、送信者の認証や改ざんの検出はできません。これらにはデジタル署名やMACを別に使う必要があります。
- 手順の中で「誰のどの鍵が使われているか」を確かめると、得られる効果を絞り込めます。
