リスク受容に必要な手続は?JIS Q 27001で誰が承認するか
情報セキュリティマネジメント試験 令和元年度秋期 午前 問3 / セキュリティ › 情報セキュリティ対策
過去問にチャレンジ
JIS Q 27001:2014(情報セキュリティマネジメントシステム-要求事項)において,リスクを受容するプロセスに求められるものはどれか。
- ア
受容するリスクについては,リスク所有者が承認すること
- イ
受容するリスクを監視やレビューの対象外とすること
- ウ
リスクの受容は,リスク分析前に行うこと
- エ
リスクを受容するかどうかは,リスク対応後に決定すること
会話形式の解説
講師今回は、リスクを受け入れると決めるときに、JIS Q 27001(情報セキュリティマネジメントシステムの要求事項を定めた規格)がどんな手続を求めているかを選ぶ問題です。誰が受容を承認するのかと、リスクマネジメントの流れのどこで受容を決めるのかに注目してください。
受験者リスク受容は、対策をとらずにそのリスクを受け入れることですよね。受け入れると決めたなら、もう管理しなくてもよさそうに思えてしまいます。
講師そこが間違えやすいところです。受容したリスクも、残留リスク(対応した後に残っているリスク)として扱います。リスクは状況によって大きくなったり、新しく発生したり、消えたりします。そのため、監視とレビューを続ける必要があります。したがって、監視やレビューの対象外にするという選択肢は誤りです。
受験者受容は放置とは違うということですね。では、時期についての選択肢はどう考えればよいですか。
講師まず流れを思い出しましょう。リスクアセスメントとして特定・分析・評価を行い、次にリスク対応、その後に監視・レビューです。リスク受容は、評価の結果をもとに、リスク対応の中で選ぶ選択肢の一つです。
受験者そうすると、分析の前に受容を決めるというのは順序が逆ですね。分析していなければ、受け入れてよいかどうか判断する材料がありません。
講師そのとおりです。受容するかどうかは、分析と評価の結果を、組織が定めたリスク受容基準と照らし合わせて決めます。
受験者リスク対応の後に受容を決めるという選択肢は、少し正しそうに見えました。残留リスクを受け入れるのは対応の後のような気がして。
講師紛らわしいですね。ただ、受容はリスク対応の選択肢の一つなので、リスク対応のプロセスの中で決めるものです。対応が終わった後でなければ決められない、というものではありません。
受験者残るのは、受容するリスクをリスク所有者が承認するという選択肢ですね。リスク所有者というのは、そのリスクに責任を持つ人という意味でしょうか。
講師はい。リスク所有者は、そのリスクを運用管理することについて責任と権限を持つ人のことです。規格は、リスク対応計画と、受け入れる残留リスクのどちらについても、リスク所有者の承認を得ることを求めています。責任と権限を持つ人が決めることで、受容の判断が誰の責任なのかがはっきりします。
受験者まとめると、受容は分析・評価の結果と受容基準に基づいてリスク対応の中で選び、リスク所有者が承認し、その後も残留リスクとして監視を続ける、ということですね。
講師よく整理できています。補足すると、この問題はJIS Q 27001:2014を前提にしていますが、現在はISO/IEC 27001:2022に対応した改訂版が出ています。リスク所有者の承認を求める点は引き継がれています。「受容したからもう管理しない」と思わせる表現と、「承認者は責任と権限を持つリスク所有者」という点を押さえておきましょう。
まとめ
JIS Q 27001では、リスク対応計画と、受け入れる残留リスクについて、リスク所有者の承認を得ることが求められます。リスク受容は、リスクアセスメント(特定・分析・評価)の結果をリスク受容基準と照らし合わせ、リスク対応の選択肢の一つとして決めるものです。そのため、分析の前に受容することも、リスク対応が終わってから受容を決めることも、流れに合いません。また、受容したリスクも残留リスクとして監視とレビューを続ける必要があり、受容は放置とは違います。
解答・解説
正解はアです
この問題のテーマ
リスクを受け入れる(対策をとらずに残す)と決めるとき、JIS Q 27001:2014 がどんな手続を求めているかを選ぶ問題です。特に、誰が受容を承認するのかを確かめます。
解き方の考え方
まず、リスクマネジメントの流れを「リスクアセスメント(特定・分析・評価)→リスク対応→監視・レビュー」の順に思い出します。次に、リスク受容がその中のどこにあるかを確かめます。受容は、評価の結果をもとに、リスク対応の中で選ぶ選択肢の一つです。この流れと照らすと、時期が合わないウとエは外れます。また、監視をやめるとしているイも外れます。残るアが、リスク所有者による承認を求める規格の内容です。
選択肢ごとの解説
- ○ア 受容するリスクについては,リスク所有者が承認することこの肢は、受容するリスクをリスク所有者が承認する、と言っています。規格は、リスク対応計画と、受け入れる残留リスクの両方について、リスク所有者の承認を求めています。リスク所有者とは、そのリスクに責任と権限を持つ人です。この人が受容を決めれば、判断の責任の所在がはっきりします。したがって、正しい説明です。
- ×イ 受容するリスクを監視やレビューの対象外とすることこの肢は、受容したリスクを監視やレビューの対象から外す、と言っています。しかし、リスクは状況によって大きくなったり、新しく発生したり、消えたりします。そのため、受容したリスクも残留リスクとして監視とレビューを続ける必要があります。したがって、誤りです。
- ×ウ リスクの受容は,リスク分析前に行うことこの肢は、リスク分析の前に受容する、と言っています。しかし、受容するかどうかは、分析と評価の結果をリスク受容基準と照らして決めます。分析をしなければ、判断のもとになる情報がそろいません。したがって、順序が逆であり、誤りです。
- ×エ リスクを受容するかどうかは,リスク対応後に決定することこの肢は、受容するかどうかをリスク対応の後に決める、と言っています。しかし、受容はリスク対応の選択肢の一つです。そのため、リスク対応のプロセスの中で決めます。対応が終わるのを待つ必要はありません。したがって、誤りです。
補足
「受容したのだから、もう管理しなくてよい」と思わせる選択肢は、よくある引っかけです。受容は放置とは違い、管理を続けることを前提にした判断です。また、承認するのは担当者ではなく、そのリスクに責任と権限を持つリスク所有者だという点もよく問われます。
※この問題は JIS Q 27001:2014 を前提にしています。現在は、ISO/IEC 27001:2022 に対応する JIS Q 27001:2023 に改訂されています。リスク対応計画と残留リスクの受容にリスク所有者の承認を求める考え方は、改訂後も変わっていません。
POINT
- リスク受容とは、対策をとらずにリスクを受け入れると組織が意思決定することです。
- リスク対応計画と残留リスクの受容には、リスク所有者の承認が必要です。
- 受容は、リスクアセスメント(分析・評価)の結果とリスク受容基準に基づいて判断します。
- 受容したリスクも残留リスクとして、監視とレビューを続けます。
