マナビング情報セキュリティマネジメント

成功アクセスが残るログはどれか 端末の閲覧経路で判断

情報セキュリティマネジメント試験 令和元年度秋期 午後 問16 / セキュリティ › 情報セキュリティ管理

過去問にチャレンジ

令和元年度秋期 午後 問16

問問2の共通の文

アカウント乗っ取りによる情報セキュリティインシデントに関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 P社は,従業員数300名の食品メーカーである。東京に本社があり,関東に営業所と工場が点在している。本社には,製造部,流通管理部,営業部,情報システム部などがある。営業所は,営業部の管轄であり,担当地域の取引店への営業,配送管理などを担当している。Q県を担当するR営業所には,所長と副所長のほかに,15名の営業担当者,2名の流通担当者,2名の事務担当者が配置されている。 P社では,最高情報セキュリティ責任者(CISO)を委員長とする情報セキュリティ委員会(以下,P社委員会という)を設置し,情報セキュリティポリシー及び情報セキュリティ関連規程を整備している。P社委員会の事務局は,情報システム部が担当し,情報システム部のL課長が情報セキュリティインシデント(以下,インシデントという)発生時のインシデント対応責任者を務めている。さらに,本社の各部の部長,各営業所の所長,及び各工場の工場長は,P社委員会の委員,及び自部署における情報セキュリティ責任者を務めている。各情報セキュリティ責任者は,自部署の情報セキュリティを確保,維持及び改善する役割を担っており,自部署の情報セキュリティに関わる実務を担当する情報セキュリティリーダーを選任している。R営業所の情報セキュリティ責任者はA所長であり,情報セキュリティリーダーはB副所長である。 P社では,全従業員が基盤情報システムを利用して日々の業務を行っている。基盤情報システムは,サーバ,ネットワーク及び各従業員に貸与される端末から構成され,設定と運用管理は,情報システム部が行っている。貸与される端末にはノートPC(以下,NPCという),デスクトップPC(以下,DPCという),及びスマートフォン(以下,スマホという)がある。図1にサーバの概要を,表1に端末の概要を示す。

図1 基盤情報システムのサーバの概要(抜粋)
表1 基盤情報システムの端末の概要(抜粋)と注1

〔チャットサービス〕 P社では,製造した食品の取引店への配送を,配送業者に委託している。交通事情などによって配送が遅延する場合,配送業者は,各営業所の流通担当者に電子メール(以下,電子メールをメールという)で連絡する。配送業者から連絡を受けた流通担当者は,メールで営業担当者に連絡し,営業担当者が各顧客に連絡している。 R営業所が担当する地域では,交通事情による遅延の頻度が高いので,流通担当者が営業担当者にメールを見たかどうかを電話で確認することも多く,連絡の煩雑さが問題となっている。R営業所の流通担当者であるKさんは,この問題を解決するために,V社が提供しているSaaS形式のチャットサービス(以下,Vサービスという)を配送の連絡に利用すること,及び業務効率化のためにVサービスをR営業所におけるその他の連絡にも利用することをA所長に提案した。A所長はこの提案をP社委員会に諮り,承認を得た。Vサービスのサービス仕様を図2に示す。

図2 Vサービスのサービス仕様(抜粋)1〜3
図2 Vサービスのサービス仕様(抜粋)続き・4

B副所長は,A所長の指示を受け,図3に示すR営業所でのVサービスの利用ルール(以下,Vサービス利用ルールという)を策定した。

図3 Vサービス利用ルール(抜粋)

A所長は,Vサービスの利用開始をB副所長に指示した。B副所長は,VサービスでR営業所用のWSを作成し,R営業所の全従業員をWSに参加させ,自身のほか事務担当者だけにWSの管理者権限を付与した。また,表2に示すGCを作成した上で,R営業所の全従業員に,Vサービス利用ルールを周知した。次に,R営業所の全てのNPC,DPC及びスマホのWebブラウザのブックマークにVサービスのURLを登録してもらった上で,6月1日に利用を開始した。

表2 R営業所で利用するGC

〔インシデント発生〕 7月3日の15時5分,B副所長のもとにKさんが報告に来た。報告内容は次のとおりであった。 営業担当者であるDさんから,表3に示すGCメッセージが送られてきた。不審に思ったので,Dさん本人が送信したGCメッセージであるかどうかを同日15時に①Dさんに電話で確認したところ,本日は,社外研修を受講しており,当該GCメッセージは送信していないとの回答であった。

表3 Dさんのアカウントから送信されたGCメッセージ

B副所長は,Dさんになりすました何者か(以下,なりすまし者という)がDさんのアカウントに不正にログインしたおそれがあると考え,A所長に報告した。 報告を受けたA所長は,インシデントの発生を宣言し,VサービスのGCを利用しないようR営業所の全従業員に通知するとともに,このインシデントについてCISO及びL課長に報告した。B副所長はL課長と協力し,②被害拡大の防止策を実施した。 〔被害状況の把握と影響範囲の調査〕 次は,インシデントの被害状況と影響範囲に関するL課長とB副所長の会話である。 L課長: 表3のGCメッセージ中のURL(以下,URL-Pという)はVサービスのURLではありません。悪意のあるサイトのURLと考えられるので,URL-Pへのアクセスの成功が記録されている可能性のある[a]のログについて調査しましたが,該当する記録はありませんでした。[a]のログだけでは確認できないので,③R営業所の従業員のうち,必要がある者に対してURL-Pにアクセスしたかどうかをヒアリングしましたが,全員がアクセスしていないという回答でした。Dさんのアカウントへの不正ログインによる情報漏えいの有無についてはどうでしたか。 B副所長: 事務担当者からの報告によると,なりすまし者がアクセスした可能性のある[b]のGCメッセージを調査した結果,P社の業務に関する情報はありましたが,会社が秘密と規定した情報(以下,秘密情報という)は含まれていませんでした。しかし,④現時点で確認可能なGCメッセージの調査だけでは十分な調査とはいえません。 L課長: [b]を利用していた利用者にヒアリングが必要ですね。ところで,GCに送信されたファイルはどうでしたか。 B副所長: 10ファイルありましたが,全てVサービス利用ルールを満たしたパスワードで保護されていました。 L課長: 今回の場合,パスワードで保護されていても,⑤なりすまし者が短時間にパスワードを入手又は特定して,ファイルの内容を閲覧できたと思われます。ファイルにはどのような情報が含まれていたのでしょうか。 B副所長: 業務に関する情報は含まれていましたが,秘密情報は含まれていませんでした。 L課長: 分かりました。調査結果をA所長及びCISOに報告しましょう。 〔原因調査〕 次は,原因に関するB副所長とL課長の会話である。 B副所長: Dさんにヒアリングしたところ,Vサービスにアクセスしてアカウントの確認をするように求めるメールがVサービスから来たので,すぐにNPCでメール中のURL(以下,URL-Rという)にアクセスし,メールアドレスとパスワードを入力したとのことでした。調べてみると,メールの時刻は7月3日11時22分でした。 L課長: URL-Rはフィッシングサイトと考えられます。URL-PとURL-Rは,DさんがURL-Rにアクセスした時点では,URLフィルタリングサービスに悪意のあるサイトのURLとして登録されていませんでした。しかし,現在は登録されていますし,フィッシング対策協議会のサイトに緊急情報として掲載されています。他の従業員が同様のメールを受信し,URL-Rにアクセスしていないかも調査します。念のため,Dさんが利用していたNPC(以下,NPC-Dという)は,証拠として保全し,詳細に調査します。詳細調査には,1週間掛かります。 B副所長: 1週間掛かると,⑥Dさんの業務に影響があります。 L課長: NPC-Dを初期化し,セキュリティ修正プログラムを適用してから,文書作成ソフトなどのアプリケーションソフトウェアを再インストールするという対応も考えられます。しかし,NPC-Dを初期化すると,⑦詳細調査に影響があります。⑧Dさんの業務への影響を軽減する策を講じれば大丈夫ですか。 B副所長: それなら大丈夫です。 〔対策の検討〕 B副所長及びL課長は,詳細調査の結果を基に,R営業所でのVサービス利用における問題点と対策を表4のように整理した。

表4 R営業所でのVサービス利用における問題点と対策(抜粋)

次は,表4に関するB副所長とL課長の会話である。 B副所長: 番号2の対策では,ログインが煩雑になり利便性が低下してしまうことを懸念しています。 L課長: それでは,[d]ことにすれば,利便性も保てます。 B副所長とL課長は,詳細調査の結果と今後の対策をA所長に報告し,承認を得た。また,A所長はP社委員会に報告し,承認を得た。その後,必要な対策を実施し,Vサービスの業務利用を再開した。今回のVサービス活用による業務効率化は,高く評価された。その後,VサービスはP社全体に導入され,業務効率向上に貢献した。

設問2〔被害状況の把握と影響範囲の調査〕について,(1)~(5)に答えよ。 (1) 本文中の[a]に入れる適切な字句はどれか。解答群のうち,最も適切なものを選べ。

  1. ア

    URLフィルタリング機能

  2. イ

    VPNサーバ

  3. ウ

    VPNサーバ及びURLフィルタリング機能

  4. エ

    VPNサーバ及びプロキシサーバ

  5. オ

    プロキシサーバ

  6. カ

    プロキシサーバ,VPNサーバ及びURLフィルタリング機能

  7. キ

    プロキシサーバ及びURLフィルタリング機能

会話形式の解説

講師講師
この空欄は、URL-Pへのアクセスの成功が記録されている可能性のあるログを答えるものです。見るべきなのは2点で、端末ごとにWebをどの経路で閲覧するかと、それぞれのログに何が記録されるかです。図1と表1を並べて確認しましょう。
受験者受験者
選択肢にはURLフィルタリング機能も入っています。悪意のあるサイトを止める仕組みなので、記録も一番残っていそうに思えますが、違うのでしょうか。
講師講師
そこが引っかけです。表1の注を見てください。スマホのURLフィルタリング機能はブラックリスト型で、ログに残すのはアクセスを遮断したときだけです。成功したアクセスは記録されません。
受験者受験者
それに、URL-Pは当時ブラックリストに登録されていなかったので、遮断もされていないということですね。
講師講師
そのとおりです。未登録だったので遮断されず、仮にアクセスしていてもログには何も残りません。ですから、URLフィルタリング機能を含む選択肢は、空欄の「成功が記録されている可能性のある」という条件に合いません。
受験者受験者
では、スマホのアクセスはプロキシサーバかVPNサーバのログで見られるのでしょうか。
講師講師
表1では、スマホは携帯通信網を経由して閲覧することになっています。どちらのサーバも通らないので、両方のログに残りません。スマホのアクセスは、どのログでも確認できないわけです。
受験者受験者
PCのほうはどうですか。NPCとDPCで経路が違った気がします。
講師講師
NPCは社内LANに直接つないでいればプロキシサーバ、それ以外の場合はVPNサーバを経由します。DPCはプロキシサーバを経由します。図1によると、この2つのサーバはアクセスの成功と失敗の両方をアクセスログに記録します。
受験者受験者
そうすると、プロキシサーバだけでは、社内LAN以外から接続したNPCのアクセスが抜けます。VPNサーバだけでは、社内LANにつないだNPCやDPCのアクセスが抜けます。両方そろえば、PCからのアクセスの成功はすべて押さえられるということですね。
講師講師
はい。正解は「VPNサーバ及びプロキシサーバ」です。「プロキシサーバ、VPNサーバ及びURLフィルタリング機能」は必要な2つが入っていますが、成功を記録しないURLフィルタリング機能まで含めている点が誤りです。
受験者受験者
本文に「aのログだけでは確認できないので」ヒアリングをしたとあるのは、ログで追えないスマホのアクセスを補うためなのですね。
講師講師
よく読めています。その点は、下線③のヒアリング対象を問う次の設問につながります。ログの問題では「フィルタリングがあれば記録も残る」と思い込まずに、経路と記録条件の2点を確認してください。ブラックリスト型のフィルタは、登録前のURLには何も働かないことも押さえておきましょう。

まとめ

この問題は、悪意のあるURLへのアクセス成功が記録されている可能性のあるログを選ぶものです。NPCは社内LANに直接つないでいればプロキシサーバ、それ以外ではVPNサーバを経由し、DPCはプロキシサーバを経由します。この2つのサーバはアクセスの成功と失敗の両方を記録するので、正解は「VPNサーバ及びプロキシサーバ」です。スマホは携帯通信網で閲覧するため両サーバを通りません。また、スマホのURLフィルタリング機能は遮断したときしか記録しないので、成功アクセスの確認には使えず、ヒアリングで補う必要があります。

解答・解説

正解はエです

この問題のテーマ

悪意のあるサイトのURL(URL-P)へのアクセスが成功したかどうかを確かめるには、どの機器のログを調べればよいかを問う問題です。端末ごとのWeb閲覧経路と、各ログに何が記録されるかを読み取る力が試されます。

解き方の考え方

まず表1で、端末ごとのインターネットの閲覧経路を確認します。NPCは社内LANに直接つないでいればプロキシサーバ、それ以外の場合はVPNサーバを経由し、DPCはプロキシサーバを経由します。次に図1と表1の注で、どのログに「アクセス成功」が残るかを確認します。VPNサーバとプロキシサーバは成功も失敗も記録しますが、スマホのURLフィルタリング機能は遮断したときしか記録しません。そのため、成功が記録されうるのはVPNサーバとプロキシサーバの2つだけです。

選択肢ごとの解説

  1. ×ア  URLフィルタリング機能
    URLフィルタリング機能だけを挙げていますが、スマホのこの機能はアクセスを遮断した場合にしかログを残しません。URL-Pは当時ブラックリストに未登録だったので遮断されておらず、仮にアクセスしていてもログには残りません。成功したアクセスを確認する手段にはなりません。
  2. ×イ  VPNサーバ
    VPNサーバのログだけでは、社外からNPCで閲覧した通信しか追えません。社内LANにつないだNPCやDPCはプロキシサーバを経由するので、その分のアクセスを見落とします。
  3. ×ウ  VPNサーバ及びURLフィルタリング機能
    VPNサーバとURLフィルタリング機能の組合せでは、プロキシサーバ経由のアクセスが確認できません。さらに、成功を記録しないURLフィルタリング機能が含まれているので、空欄の「成功が記録されている可能性のある」という条件にも合いません。
  4. ○エ  VPNサーバ及びプロキシサーバ
    VPNサーバとプロキシサーバは、アクセスの成功と失敗の両方を記録します。PCがWebを閲覧する経路はこの2つのどちらかに必ず当てはまるため、両方のログを調べればPCからのアクセス成功を網羅できます。
  5. ×オ  プロキシサーバ
    プロキシサーバのログだけでは、社外からVPNサーバ経由で閲覧したNPCのアクセスを確認できません。営業担当者などは社外でNPCを使う場面があるので、VPN側のログも欠かせません。
  6. ×カ  プロキシサーバ,VPNサーバ及びURLフィルタリング機能
    必要なプロキシサーバとVPNサーバは含んでいますが、URLフィルタリング機能まで加えている点が誤りです。このログは遮断時しか記録しないので、成功が記録されている可能性のある対象には入りません。
  7. ×キ  プロキシサーバ及びURLフィルタリング機能
    VPNサーバのログが抜けているため、社外からのNPCのアクセスを確認できません。加えて、成功を記録しないURLフィルタリング機能を含めている点も不適切です。

補足

本文の「aのログだけでは確認できない」という記述は、スマホからのアクセスがログで追えないことを指しています。この点が、下線③のヒアリング対象を考える設問2(2)にもつながります。「フィルタリング=記録が残る」と思い込むと、カやキを選んでしまいやすいので注意してください。ブラックリスト型のフィルタは、登録前のURLに対しては何も働かないという点も押さえておきましょう。

POINT

  • ログを調べるときは、端末ごとの通信経路と、そのログに何が記録されるかの2点を必ず確認します。
  • NPCは社内LAN直結ならプロキシサーバ、それ以外ならVPNサーバを経由し、DPCはプロキシサーバを経由します。
  • VPNサーバとプロキシサーバのログには、アクセスの成功と失敗の両方が記録されます。
  • スマホのURLフィルタリング機能は遮断したときだけ記録するので、未登録のサイトへの成功アクセスは残りません。
  • ログで確認できない経路(ここではスマホ)は、ヒアリングなど別の方法で補う必要があります。

※出典:令和元年度秋期 情報セキュリティマネジメント試験 午後 問2 設問2(1)(一部改変)