マナビング情報セキュリティマネジメント

外部記憶媒体の読込み禁止で新たに減るリスクを見分ける

情報セキュリティマネジメント試験 令和元年度秋期 午後 問30 / セキュリティ › 情報セキュリティ対策

過去問にチャレンジ

令和元年度秋期 午後 問30

問問3の共通の文

業務委託先への情報セキュリティ要求事項に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 X社は,携帯通信事業者から通信回線設備を借り受け,データ通信サービス及び通話サービス(以下,両サービスを併せてXサービスという)を提供している従業員数70名の企業である。X社には,法務部,サービスマーケティング部,情報システム部,利用者サポート部(以下,利用者サポート部をUS部という)などがある。X社では,最高情報セキュリティ責任者(CISO)を委員長とした情報セキュリティ委員会(以下,X社委員会という)を設置している。X社委員会では,情報セキュリティ管理規程の整備,情報セキュリティ対策の強化などが審議される。X社委員会の事務局長はUS部のS部長である。各部の部長は,X社委員会の委員及び自部における情報セキュリティ責任者を務め,自部の情報セキュリティに関わる実務を担当する情報セキュリティリーダーを選任している。US部の情報セキュリティリーダーはG課長である。 US部には,25名の従業員が所属している。主な業務は,Xサービスを利用している顧客,及びXサービスへの新規の申込みを検討している潜在顧客(以下,Xサービスを利用している顧客及び潜在顧客を併せてX顧客という)からの問合せへの対応業務(以下,X業務という)である。 〔US部が利用しているコールセンタ用サービスの概要〕 US部では,X業務を遂行するためにクラウドサービスプロバイダN社のSaaSのコールセンタ用サービス(以下,Nサービスという)を利用している。NサービスはISMS認証及びISMSクラウドセキュリティ認証を取得している。Nサービスには,会社から貸与されたPCのWebブラウザから,暗号化された通信プロトコルである[a]を使ってアクセスする。Nサービスは,図1の基本機能及びセキュリティ機能を提供している。

図1 Nサービスの基本機能及びセキュリティ機能

Nサービスのデータベース(以下,NDBという)に,氏名,年齢,住所,利用中のサービスプラン,問合せ対応記録その他のX顧客に関する情報(以下,X情報という)は暗号化されて,また,検索用キーは平文で保存されている。①X情報は,US部の従業員に貸与しているPCにだけ格納した暗号鍵を用いて,US部の従業員が復号できる仕組みになっている。PCへのログインには利用者IDとパスワードが必要である。 X社では,Nサービスのセキュリティ機能のうち手動実行機能は,管理者アカウントをもつUS部の特定の従業員だけが実行できる。X社利用分の監査ログは,X社の情報システム部が常時監視している。 US部では,業務効率化の一環として,2019年10月にX業務の3割を外部に委託し,残りの業務は継続してNサービスを利用しながらUS部内で遂行することにした。その委託先の第一候補がY社である。Y社を選んだ理由は,次の2点である。 他の候補と比較してサービス内容に遜色がなく,しかも低価格であること秘密保持契約を締結した上で,業務委託に関わる範囲を対象とした,情報セキュリティ対策の評価に協力してくれること 〔Y社の概要〕 Y社は,次のコールセンタサービス(以下,Yサービスという)を提供する従業員数200名の企業である。 委託元に代わって顧客からの製品やサービスに関する様々な問合せや苦情などを受け付ける。委託元の製品やサービスの評判を新聞,雑誌などのメディア,インターネット上のSNS,掲示板などを基に調査し,委託元に報告する。著作物を複製する場合は,著作権者の許諾を得て行う。 Y社はコールセンタシステム(以下,Yシステムという)を構築し,通常はそれを利用してYサービスを提供している。 Y社の組織の主な業務及び体制を表1に示す。

表1 Y社の組織の主な業務及び体制(抜粋)、注記・注1

Y社は,従業員を対象に,原則4月及び10月の1日に社内の定期人事異動がある。また,これらの時期以外でも組織再編,業務の見直しなどの理由で人事異動がある。Y-CS部のパートタイマは,1年間で約2割が退職する。人事総務部は,欠員補充のために,ほぼ同数を新規に採用している。 〔Y社の情報セキュリティ対策〕 Y社は,東京都内の7階建てビルの3~5階に入居しており,他の階には別の企業が入居している。ビルの出入りは誰でも可能であり,階段やエレベータを使用して,各階に移動できる。Y社の入退管理を図2に示す。

図2 Y社の入退管理

3階はY-CS部の,また,4階及び5階は他部の業務エリアである。 Y-CS部の管理職及び一般従業員は,5階の会議室で営業部の従業員と会議をすることが多いので,3階及び5階への入室権限が与えられている。 3~5階には,複合機が2台ずつ設置されており,コピー,プリント,スキャンの機能が使用できる。Y-CS部はスキャンの機能を使用して,新聞,雑誌などに紹介された委託元の製品やサービスに関する記事をPDF化し,委託元に報告している。スキャンしたPDFファイルは電子メール(以下,電子メールをメールという)にパスワードなしで添付されて,スキャンを実行した本人だけに送信される。PDFファイルの容量が大きい場合は,PDFファイルを添付する代わりにプリントサーバ内の共有フォルダに自動的に保存され,保存先のURLがメールの本文に記載されて送信される。その際,メールの送信者名,件名,本文及び添付ファイル名の命名規則などは,複合機の初期設定のまま使用している。そのため,誰がスキャンを実行しても,メールの送信者名などは同じになる。複合機のマニュアルはインターネットに掲載されている。 管理職にはデスクトップPC及びノートPCが,その他の従業員にはデスクトップPCが貸与されている。ノートPCは,社内会議での資料のプロジェクタによる投影,在宅での資料作成などに利用する。Y社が貸与しているPC(以下,Y-PCという)の仕様及び利用状況を表2に示す。

表2 Y-PCの仕様及び利用状況(抜粋)

プロキシサーバには次の機能があるが,現在は使用していない。 指定されたURLへのアクセスを許可又は禁止する機能(以下,プロキシ制御機能という)利用者ID及びパスワードによる認証機能(以下,利用者認証機能という) プロキシサーバのログ(以下,プロキシログという)はログサーバに転送され,3か月間保存される。プロキシログは,ネットワーク障害,不審な通信などの原因を調査する場合に利用する。プロキシログには,アクセス日時及びアクセス先IPアドレスが記録されるが,利用者認証機能を使用すると,Webサイトにアクセスした従業員の利用者IDも記録される。 VPNサーバにはパケットフィルタリングの機能及びあらかじめ設定したドメインへの通信を禁止する機能(以下,両機能を併せてVPN制御機能という)があるが,現在は使用していない。 〔Y社からの提案〕 Y社がX業務に利用するシステム又はサービスは表3に示す2案がある。X社から特段の要求がなければ,Y社は案1を採用する。

表3 Y社がX業務に利用するシステム又はサービス

〔X社委員会における案1及び案2の検討〕 X社委員会は,案2では,案1のもつ[b]できるので,案2の採否について議論した。X社委員会では,業務委託後の残留リスクを受容できると判断できた場合は,Y社に委託することにした。そこで,CISOは,業務委託に関わる範囲を対象としてY社の情報セキュリティ対策を確認し,X社委員会に報告するようS部長に指示した。 S部長は,G課長にY社の情報セキュリティ対策を確認して報告するよう指示した。S部長は,情報システム部に技術面での協力を依頼し,同部のH主任がG課長に協力することになった。 〔X社の情報セキュリティ要求事項と評価〕 G課長とH主任は,自社の情報セキュリティ管理規程を基に,X業務の外部への委託における情報セキュリティ要求事項(以下,X要求事項という)を取りまとめた。 X社とY社間で秘密保持契約を締結した後,G課長は,Y社を訪問した。G課長はY社の承諾を得た上で,X要求事項を基に,Y-CS部従業員へのヒアリング及び設備状況の目視による確認などを行った。その際,T部長及びF課長に同行を依頼した。その後,表4のとおり評価結果と評価根拠をまとめてY社に事実確認を依頼したところ,"事実だ"との回答があった。評価結果は次のルールに従って記入した。 要求事項を満たす場合:"OK"要求事項を満たさない場合:"NG"

表4 X要求事項に対するY社の対策の評価結果と評価根拠(抜粋)、空欄c・d・e・下線②

〔評価結果に対する対応案の検討〕 後日,G課長はT部長とF課長に,Y社と業務委託契約をしたいと伝え,その前提として,評価結果が"NG"の要求事項への対応を依頼した。Y社はG課長に③対応案を伝えた。G課長はH主任と相談の上,対応案をS部長に報告した。 S部長が表4及び対応案をX社委員会に報告したところ,Y社にX業務を委託することが承認され,無事に業務が開始された。X社はY社への業務委託によって業務の効率化を進めることができた。

設問3〔X社の情報セキュリティ要求事項と評価〕について,(1)~(4)に答えよ。 (4) 表4中の項番14について,Y社が追加の対策をとり,要求事項を満たすことによってどのような情報セキュリティリスクが低減できるか。次の(ⅰ)~(ⅳ)のうち,適切なものだけを全て挙げた組合せを,解答群の中から選べ。 (ⅰ) Y-PC内のデータを外部記憶媒体に保存して持ち出される。 (ⅱ) Y-PC内のデータを複合機でプリントして持ち出される。 (ⅲ) Y社で許可していないアプリケーションソフトウェアが保存されているUSBメモリをY-PCに接続されて,Y-PCに当該ソフトウェアが導入される。 (ⅳ) マルウェア付きのファイルが保存されているUSBメモリをY-PCに接続されて,Y-PCがマルウェア感染する。

  1. ア

    (ⅰ)

  2. イ

    (ⅰ),(ⅱ),(ⅳ)

  3. ウ

    (ⅰ),(ⅲ)

  4. エ

    (ⅰ),(ⅳ)

  5. オ

    (ⅱ)

  6. カ

    (ⅱ),(ⅲ)

  7. キ

    (ⅱ),(ⅲ),(ⅳ)

  8. ク

    (ⅲ)

  9. ケ

    (ⅲ),(ⅳ)

  10. コ

    (ⅳ)

会話形式の解説

講師講師
今回は、委託先のY社がPCの外部記憶媒体に追加の対策をとったとき、どのリスクが減るかを選ぶ問題です。外部記憶媒体とは、USBメモリのような持ち運べる記録装置のことです。まず、表4の項番14がNGになった理由を確かめましょう。
受験者受験者
評価根拠の欄に「外部記憶媒体のデータの読込みが可能となっている」とあります。読込みができることが問題なのですね。
講師講師
そのとおりです。要求事項は外部記憶媒体へのアクセスの禁止なので、追加の対策は読込みの禁止になります。次に、表2の「共通」欄で、Y-PCにすでにある制御を見てください。
受験者受験者
外部記憶媒体はデータの読込みだけを許可、アプリケーションソフトウェアはY社が許可したものだけ導入できる、の二つが書かれています。
講師講師
ここが判断の土台です。問われているのは「追加の対策で新たに減るリスク」なので、すでに今の制御で防げているものは答えに含めません。この考え方で(ⅰ)から順に見ていきます。
受験者受験者
(ⅰ)はUSBメモリにデータを保存して持ち出すリスクですね。媒体へのアクセス禁止の典型的な効果に思えるので、正しいと考えました。
講師講師
そこが引っかかりやすい点です。媒体への保存は書込みにあたりますが、現状でも読込みだけが許可され、書込みはできません。つまり(ⅰ)はすでに防げていて、追加の対策による効果ではありません。
受験者受験者
なるほど、差分で考えるのですね。(ⅱ)の複合機でプリントして持ち出すほうは、どうでしょうか。
講師講師
印刷は外部記憶媒体を使いません。媒体からの読込みを禁止しても、プリントによる持出しは止まりません。ですから(ⅱ)も当てはまりません。
受験者受験者
(ⅲ)は、許可していないアプリがUSBメモリから導入されるリスクです。読込みが関わるので、減りそうに見えます。
講師講師
確かに媒体からの読込みは関わります。ただ、表2にはY社が許可したアプリだけを導入できる制御がすでにあります。未許可アプリの導入は今の制御で制限済みなので、新たに減るリスクではありません。
受験者受験者
残る(ⅳ)は、マルウェア付きのファイルが入ったUSBメモリで感染するリスクですね。
講師講師
マルウェアは、不正な動作をするプログラムのことです。現状は読込みが許可されているので、媒体内の感染ファイルをPCに取り込めてしまいます。読込みを禁止すれば、この経路の感染リスクが減ります。
受験者受験者
そうすると、追加の対策で新たに減るのは(ⅳ)だけなので、(ⅳ)のみの組合せが正解ですね。(ⅰ)や(ⅲ)を含む組合せは、すでに防げているものが混ざっているので誤りだと分かりました。
講師講師
そのとおりです。整理すると、書込みを禁止すれば媒体への保存による持出しを防げます。読込みを禁止すれば媒体経由のマルウェア感染を防げます。印刷による持出しは、媒体の制御では防げません。

まとめ

この問題は、委託先のPCで外部記憶媒体へのアクセスを禁止する追加対策をとったとき、新たに減るリスクを選ぶものです。表2によると、Y-PCではすでに外部記憶媒体の書込みが禁止され、アプリケーションも許可したものしか導入できません。表4項番14がNGになった理由は読込みができる点なので、追加の対策は読込みの禁止です。媒体への保存による持出しや未許可アプリの導入は今の制御で防げており、印刷による持出しは媒体の制御と関係しません。したがって、新たに減るのは媒体経由のマルウェア感染だけで、正解はコです。

解答・解説

正解はコです

この問題のテーマ

表4の項番14は、外部記憶媒体(USBメモリなど)へのアクセス禁止を求めています。この問題では、Y-PCの現状の制御に読込み禁止を加えたとき、新たに低減できるリスクを判断します。

解き方の考え方

まず表2の「共通」欄で、Y-PCにすでにある制御を確かめます。外部記憶媒体は読込みだけが許可され、アプリケーションは許可されたものだけ導入できます。次に表4項番14の評価根拠を見ると、NGの理由は読込みができる点です。したがって、追加の対策は読込みの禁止です。最後に(ⅰ)〜(ⅳ)を一つずつ照らします。(ⅰ)の媒体への保存は、書込みが不可なので現状でも防げています。(ⅱ)の印刷は媒体を使わないため、読込み禁止では止まりません。(ⅲ)の未許可アプリの導入は、既存の導入制限で防げています。(ⅳ)の媒体内のファイルによる感染は、読込みを止めると防げます。よって、適切なのは(ⅳ)だけです。

選択肢ごとの解説

  1. ×ア  (ⅰ)
    (ⅰ)だけを挙げる組合せです。媒体への書込みは現状でも許可されていないため、(ⅰ)の保存による持出しは追加対策による効果ではありません。
  2. ×イ  (ⅰ),(ⅱ),(ⅳ)
    (ⅰ)は書込みの禁止ですでに防げています。また、(ⅱ)の印刷は媒体を使わないため、読込み禁止では止まりません。
  3. ×ウ  (ⅰ),(ⅲ)
    (ⅰ)の書込みと(ⅲ)の未許可アプリ導入は、どちらも現状の制御で制限されています。そのため、追加対策で新たに減るリスクではありません。
  4. ×エ  (ⅰ),(ⅳ)
    (ⅳ)は追加対策で減ります。一方、(ⅰ)は書込みがすでに禁止されているため、余分な記述が入っています。
  5. ×オ  (ⅱ)
    (ⅱ)は複合機で印刷して持ち出すリスクです。印刷は媒体からの読込みと関係しないため、読込み禁止では低減できません。
  6. ×カ  (ⅱ),(ⅲ)
    (ⅱ)の印刷は読込み禁止の対象外です。また、(ⅲ)の未許可アプリ導入はすでに制限されています。
  7. ×キ  (ⅱ),(ⅲ),(ⅳ)
    (ⅳ)は減りますが、(ⅱ)の印刷は止まりません。さらに、(ⅲ)は既存の制御で防げているため、誤りです。
  8. ×ク  (ⅲ)
    (ⅲ)については、Y-PCには許可したアプリだけを導入できる制御がすでにあります。そのため、未許可アプリの導入は追加対策による効果ではありません。
  9. ×ケ  (ⅲ),(ⅳ)
    (ⅳ)は減ります。しかし、(ⅲ)は現状ですでに制限されているため、この組合せは誤りです。
  10. ○コ  (ⅳ)
    現状では媒体からの読込みが許可されています。そのため、マルウェア(不正な動作をするプログラム)付きのファイルをPCに取り込めます。読込みを禁止すれば、このファイルによる感染のリスクが減ります。したがって、(ⅳ)だけを挙げたコが正解です。

POINT

  • 追加の対策で低減できるリスクは、現状の制御との差分で判断します。
  • 外部記憶媒体の書込みを禁止すると、媒体への保存による持出しを防げます。
  • 外部記憶媒体の読込みを禁止すると、媒体経由のマルウェア感染を防げます。
  • 印刷による持出しは、外部記憶媒体の制御では防げません。

※出典:令和元年度秋期 情報セキュリティマネジメント試験 午後 問3 設問3(4)(一部改変)