マナビング情報セキュリティマネジメント

アクセス場所を3階に限るにはどこで止めるか

情報セキュリティマネジメント試験 令和元年度秋期 午後 問31 / セキュリティ › 情報セキュリティ対策

過去問にチャレンジ

令和元年度秋期 午後 問31

問問3の共通の文

業務委託先への情報セキュリティ要求事項に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 X社は,携帯通信事業者から通信回線設備を借り受け,データ通信サービス及び通話サービス(以下,両サービスを併せてXサービスという)を提供している従業員数70名の企業である。X社には,法務部,サービスマーケティング部,情報システム部,利用者サポート部(以下,利用者サポート部をUS部という)などがある。X社では,最高情報セキュリティ責任者(CISO)を委員長とした情報セキュリティ委員会(以下,X社委員会という)を設置している。X社委員会では,情報セキュリティ管理規程の整備,情報セキュリティ対策の強化などが審議される。X社委員会の事務局長はUS部のS部長である。各部の部長は,X社委員会の委員及び自部における情報セキュリティ責任者を務め,自部の情報セキュリティに関わる実務を担当する情報セキュリティリーダーを選任している。US部の情報セキュリティリーダーはG課長である。 US部には,25名の従業員が所属している。主な業務は,Xサービスを利用している顧客,及びXサービスへの新規の申込みを検討している潜在顧客(以下,Xサービスを利用している顧客及び潜在顧客を併せてX顧客という)からの問合せへの対応業務(以下,X業務という)である。 〔US部が利用しているコールセンタ用サービスの概要〕 US部では,X業務を遂行するためにクラウドサービスプロバイダN社のSaaSのコールセンタ用サービス(以下,Nサービスという)を利用している。NサービスはISMS認証及びISMSクラウドセキュリティ認証を取得している。Nサービスには,会社から貸与されたPCのWebブラウザから,暗号化された通信プロトコルである[a]を使ってアクセスする。Nサービスは,図1の基本機能及びセキュリティ機能を提供している。

図1 Nサービスの基本機能及びセキュリティ機能

Nサービスのデータベース(以下,NDBという)に,氏名,年齢,住所,利用中のサービスプラン,問合せ対応記録その他のX顧客に関する情報(以下,X情報という)は暗号化されて,また,検索用キーは平文で保存されている。①X情報は,US部の従業員に貸与しているPCにだけ格納した暗号鍵を用いて,US部の従業員が復号できる仕組みになっている。PCへのログインには利用者IDとパスワードが必要である。 X社では,Nサービスのセキュリティ機能のうち手動実行機能は,管理者アカウントをもつUS部の特定の従業員だけが実行できる。X社利用分の監査ログは,X社の情報システム部が常時監視している。 US部では,業務効率化の一環として,2019年10月にX業務の3割を外部に委託し,残りの業務は継続してNサービスを利用しながらUS部内で遂行することにした。その委託先の第一候補がY社である。Y社を選んだ理由は,次の2点である。 他の候補と比較してサービス内容に遜色がなく,しかも低価格であること秘密保持契約を締結した上で,業務委託に関わる範囲を対象とした,情報セキュリティ対策の評価に協力してくれること 〔Y社の概要〕 Y社は,次のコールセンタサービス(以下,Yサービスという)を提供する従業員数200名の企業である。 委託元に代わって顧客からの製品やサービスに関する様々な問合せや苦情などを受け付ける。委託元の製品やサービスの評判を新聞,雑誌などのメディア,インターネット上のSNS,掲示板などを基に調査し,委託元に報告する。著作物を複製する場合は,著作権者の許諾を得て行う。 Y社はコールセンタシステム(以下,Yシステムという)を構築し,通常はそれを利用してYサービスを提供している。 Y社の組織の主な業務及び体制を表1に示す。

表1 Y社の組織の主な業務及び体制(抜粋)、注記・注1

Y社は,従業員を対象に,原則4月及び10月の1日に社内の定期人事異動がある。また,これらの時期以外でも組織再編,業務の見直しなどの理由で人事異動がある。Y-CS部のパートタイマは,1年間で約2割が退職する。人事総務部は,欠員補充のために,ほぼ同数を新規に採用している。 〔Y社の情報セキュリティ対策〕 Y社は,東京都内の7階建てビルの3~5階に入居しており,他の階には別の企業が入居している。ビルの出入りは誰でも可能であり,階段やエレベータを使用して,各階に移動できる。Y社の入退管理を図2に示す。

図2 Y社の入退管理

3階はY-CS部の,また,4階及び5階は他部の業務エリアである。 Y-CS部の管理職及び一般従業員は,5階の会議室で営業部の従業員と会議をすることが多いので,3階及び5階への入室権限が与えられている。 3~5階には,複合機が2台ずつ設置されており,コピー,プリント,スキャンの機能が使用できる。Y-CS部はスキャンの機能を使用して,新聞,雑誌などに紹介された委託元の製品やサービスに関する記事をPDF化し,委託元に報告している。スキャンしたPDFファイルは電子メール(以下,電子メールをメールという)にパスワードなしで添付されて,スキャンを実行した本人だけに送信される。PDFファイルの容量が大きい場合は,PDFファイルを添付する代わりにプリントサーバ内の共有フォルダに自動的に保存され,保存先のURLがメールの本文に記載されて送信される。その際,メールの送信者名,件名,本文及び添付ファイル名の命名規則などは,複合機の初期設定のまま使用している。そのため,誰がスキャンを実行しても,メールの送信者名などは同じになる。複合機のマニュアルはインターネットに掲載されている。 管理職にはデスクトップPC及びノートPCが,その他の従業員にはデスクトップPCが貸与されている。ノートPCは,社内会議での資料のプロジェクタによる投影,在宅での資料作成などに利用する。Y社が貸与しているPC(以下,Y-PCという)の仕様及び利用状況を表2に示す。

表2 Y-PCの仕様及び利用状況(抜粋)

プロキシサーバには次の機能があるが,現在は使用していない。 指定されたURLへのアクセスを許可又は禁止する機能(以下,プロキシ制御機能という)利用者ID及びパスワードによる認証機能(以下,利用者認証機能という) プロキシサーバのログ(以下,プロキシログという)はログサーバに転送され,3か月間保存される。プロキシログは,ネットワーク障害,不審な通信などの原因を調査する場合に利用する。プロキシログには,アクセス日時及びアクセス先IPアドレスが記録されるが,利用者認証機能を使用すると,Webサイトにアクセスした従業員の利用者IDも記録される。 VPNサーバにはパケットフィルタリングの機能及びあらかじめ設定したドメインへの通信を禁止する機能(以下,両機能を併せてVPN制御機能という)があるが,現在は使用していない。 〔Y社からの提案〕 Y社がX業務に利用するシステム又はサービスは表3に示す2案がある。X社から特段の要求がなければ,Y社は案1を採用する。

表3 Y社がX業務に利用するシステム又はサービス

〔X社委員会における案1及び案2の検討〕 X社委員会は,案2では,案1のもつ[b]できるので,案2の採否について議論した。X社委員会では,業務委託後の残留リスクを受容できると判断できた場合は,Y社に委託することにした。そこで,CISOは,業務委託に関わる範囲を対象としてY社の情報セキュリティ対策を確認し,X社委員会に報告するようS部長に指示した。 S部長は,G課長にY社の情報セキュリティ対策を確認して報告するよう指示した。S部長は,情報システム部に技術面での協力を依頼し,同部のH主任がG課長に協力することになった。 〔X社の情報セキュリティ要求事項と評価〕 G課長とH主任は,自社の情報セキュリティ管理規程を基に,X業務の外部への委託における情報セキュリティ要求事項(以下,X要求事項という)を取りまとめた。 X社とY社間で秘密保持契約を締結した後,G課長は,Y社を訪問した。G課長はY社の承諾を得た上で,X要求事項を基に,Y-CS部従業員へのヒアリング及び設備状況の目視による確認などを行った。その際,T部長及びF課長に同行を依頼した。その後,表4のとおり評価結果と評価根拠をまとめてY社に事実確認を依頼したところ,"事実だ"との回答があった。評価結果は次のルールに従って記入した。 要求事項を満たす場合:"OK"要求事項を満たさない場合:"NG"

表4 X要求事項に対するY社の対策の評価結果と評価根拠(抜粋)、空欄c・d・e・下線②

〔評価結果に対する対応案の検討〕 後日,G課長はT部長とF課長に,Y社と業務委託契約をしたいと伝え,その前提として,評価結果が"NG"の要求事項への対応を依頼した。Y社はG課長に③対応案を伝えた。G課長はH主任と相談の上,対応案をS部長に報告した。 S部長が表4及び対応案をX社委員会に報告したところ,Y社にX業務を委託することが承認され,無事に業務が開始された。X社はY社への業務委託によって業務の効率化を進めることができた。

設問4〔評価結果に対する対応案の検討〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) 本文中の下線③について,表4中の項番5の要求事項への有効な対応案はどれか。解答群のうち,最も有効なものを選べ。

  1. ア

    Nサービスのアクセス制御の設定機能でX社及びY社以外からのアクセスを禁止する。

  2. イ

    Nサービスの監査ログを監視し,3階の業務エリア以外からのアクセスを検知する。

  3. ウ

    Nサービスの顧客情報の操作権限の設定機能で,X情報の閲覧だけ許可する。

  4. エ

    VPNサーバのVPN制御機能を使用して,ノートPCからNサービスへのアクセスを禁止する。

  5. オ

    Y-CS部の管理職は,Nサービスへのアクセスを禁止する。

  6. カ

    プロキシサーバのプロキシ制御機能を使用して,Nサービスへのアクセスを禁止する。

会話形式の解説

講師講師
今回は、委託先のY社で、X社が使うクラウドのコールセンタ用サービス「Nサービス」に、どこからアクセスできるようにするかを考えます。要求は、アクセスできる業務エリアをY-CS部の業務エリアである3階だけに限ることです。この要求に最も有効な対応案を選びます。
受験者受験者
3階以外からのアクセスを止めればよいのですよね。それなら、プロキシサーバでNサービスへのアクセスを禁止する案が確実そうに見えます。
講師講師
止める力は確かに強いです。ただ、判断する前に、表2でPCごとの通信経路を確かめておきましょう。プロキシサーバは、社内からインターネットへの通信を中継するサーバです。どのPCがプロキシを通るでしょうか。
受験者受験者
デスクトップPCは社内の有線LANから、プロキシサーバ経由でインターネットに出ます。ノートPCも、VPNサーバに接続した後でプロキシサーバを経由します。両方とも通ります。
講師講師
そのとおりです。つまりプロキシで禁止すると、3階で使うデスクトップPCからもNサービスを使えなくなります。X業務そのものが続けられないので、プロキシで止める案は有効ではありません。
受験者受験者
なるほど。全部の端末が通る場所で止めると、必要な業務まで止まってしまうのですね。では、3階以外から使われるおそれがあるのはどの端末ですか。
講師講師
ノートPCです。管理職に貸与され、社内外の無線LANから使えて、5階の会議室や在宅でも利用されます。一方、デスクトップPCは机に固定され、社内の有線LANにだけつながります。
受験者受験者
ノートPCは、社内でも社外でも必ずVPNサーバに接続するのでしたね。そうすると、VPN制御機能でノートPCからNサービスへのアクセスを禁止すれば、3階以外からの利用だけを止められる、ということですか。
講師講師
そうです。VPNはノートPCだけが必ず通る経路なので、そこで止めれば5階や在宅からの利用を防げます。Y-CS部の業務エリアである3階で使う固定のデスクトップPCはVPNを通らないので、X業務は続けられます。これが正解です。
受験者受験者
Nサービス側の設定で、X社とY社以外からのアクセスを禁止する案はどうでしょうか。これも場所を絞っているように見えます。
講師講師
その設定で絞れるのは会社単位です。Y社からのアクセスは、どの階からでも許可されたままになります。Y社の中で3階以外の場所から使う場合を防げないので、要求を満たしません。
受験者受験者
監査ログ(操作の記録)を監視して、3階以外からのアクセスを見つける案もありました。見つけられれば十分な気がします。
講師講師
監視でできるのは、アクセスが起きた後に気付くことだけです。3階以外からアクセスできる状態はそのまま残ります。同じように、X情報(X社の顧客情報)の操作を閲覧だけに絞る案も、変わるのは操作の内容だけで、場所は限られません。
受験者受験者
残るのは、Y-CS部の管理職にNサービスの利用を一律に禁止する案です。ノートPCを持つのは管理職なので、これでも止められそうです。
講師講師
表1の注記では、主任以上が管理職とされています。表3を見ると、X業務を担当してNサービスにアクセスするのは主任2名で、監査ログで操作履歴を確かめる役目もあります。一律に禁止すると、3階で行う必要な業務まで止まります。
受験者受験者
整理すると、場所を限るには、その場所の外から使う端末だけが通る経路で止める必要があるのですね。検知や権限の絞り込みでは場所は限れず、全端末が通る経路で止めると業務が止まってしまう、ということですね。
講師講師
そのとおりです。対応策を選ぶときは、リスクを下げられるかと、業務を続けられるかの両方を確かめてください。今回は、その両方を満たすのがVPN制御機能でノートPCからのアクセスを止める案でした。

まとめ

業務委託先のY社で、Nサービスにアクセスできる場所をY-CS部の業務エリアである3階だけに限る対応策を選ぶ問題です。ノートPCは社内外どこからでも必ずVPNサーバを経由するため、VPN制御機能でノートPCからNサービスへのアクセスを禁止すれば、3階以外からの利用を防げます。デスクトップPCはVPNを通らないので、3階でのX業務は続けられます。プロキシで止めるとデスクトップPCも使えなくなり、ログ監視や権限の絞り込み、会社単位の制限では場所を限れません。管理職の一律禁止は、X業務を担当する主任の業務まで止めてしまいます。

解答・解説

正解はエです

この問題のテーマ

業務委託先Y社で、Nサービス(X社が使うクラウドのコールセンタ用サービス)にアクセスできる場所を、Y-CS部の業務エリアである3階だけに絞る対応策を選ぶ問題です。

解き方の考え方

最初に、表4の項番5の要求事項を確かめます。Nサービスにアクセスできる業務エリアを、Y-CS部の業務エリア(3階)だけに限ることです。次に、表2でPCごとの置き場所と通信経路を確かめます。デスクトップPCは机に固定され、社内の有線LANにだけつながります。一方、管理職に貸与されるノートPCは社内外の無線LANから使え、必ずVPNサーバを経由します。そのうえで、各選択肢が「3階以外からのアクセスを止め、3階からの業務は続けられるか」を照らし合わせます。

選択肢ごとの解説

  1. ×ア  Nサービスのアクセス制御の設定機能でX社及びY社以外からのアクセスを禁止する。
    アは、Nサービスの設定で、X社とY社以外からのアクセスを禁止する案です。この設定では、Y社からのアクセスはどの階からでも許可されたままです。そのため、Y社の中で3階以外の場所から使う場合を防げず、項番5の要求を満たせません。
  2. ×イ  Nサービスの監査ログを監視し,3階の業務エリア以外からのアクセスを検知する。
    イは、監査ログ(操作の記録)を監視し、3階以外からのアクセスを見つける案です。しかし、監視でできるのはアクセスが起きた後に気付くことだけです。3階以外からアクセスできる状態はそのまま残るため、アクセスできる場所を限るという要求にはなりません。
  3. ×ウ  Nサービスの顧客情報の操作権限の設定機能で,X情報の閲覧だけ許可する。
    ウは、X情報(X社の顧客情報)に対する操作権限を、閲覧だけに絞る案です。この設定で変わるのは、操作できる内容だけです。3階以外の場所からの閲覧は引き続きできるため、場所の限定にはなりません。
  4. ○エ  VPNサーバのVPN制御機能を使用して,ノートPCからNサービスへのアクセスを禁止する。
    エは、VPN制御機能を使い、ノートPCからNサービスへのアクセスを禁止する案です。ノートPCは社内外どこからでも、まずVPNサーバに接続してからインターネットに出ます。そのため、ノートPCが必ず通るVPNで止めれば、5階や在宅など3階以外からの利用を防げます。一方、3階の机に固定されたデスクトップPCはVPNを通らないので、X業務は続けられます。したがって、エが正解です。
  5. ×オ  Y-CS部の管理職は,Nサービスへのアクセスを禁止する。
    オは、Y-CS部の管理職によるNサービスの利用を一律に禁止する案です。ところが、表3でX業務を担当する主任2名は管理職に当たります。この2名は、監査ログで操作履歴を確かめる役目も持っています。管理職を一律に禁止すると、3階で行う必要な業務まで止まるため、有効な対応ではありません。
  6. ×カ  プロキシサーバのプロキシ制御機能を使用して,Nサービスへのアクセスを禁止する。
    カは、プロキシ制御機能でNサービスへのアクセスを禁止する案です。プロキシサーバ(社内からインターネットへの通信を中継するサーバ)は、デスクトップPCもノートPCも経由します。そのため、カの方法では3階のデスクトップPCからもNサービスを使えなくなり、X業務そのものが続けられません。

POINT

  • アクセスできる場所を限りたいときは、その場所の外から接続する端末だけが通る経路で止めます。
  • 検知(ログ監視)や権限の絞り込みでは、アクセスできる場所を限ることはできません。
  • 全端末が共通して通る経路で止めると、必要な業務も止まってしまいます。
  • 対応策を選ぶときは、リスクを下げられるかと業務を続けられるかを両方確かめます。

※出典:令和元年度秋期 情報セキュリティマネジメント試験 午後 問3 設問4(1)(一部改変)