マナビング情報セキュリティマネジメント

プロキシログと利用者認証で情報の持出しをけん制する対策

情報セキュリティマネジメント試験 令和元年度秋期 午後 問32 / セキュリティ › 情報セキュリティ対策

過去問にチャレンジ

令和元年度秋期 午後 問32

問問3の共通の文

業務委託先への情報セキュリティ要求事項に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 X社は,携帯通信事業者から通信回線設備を借り受け,データ通信サービス及び通話サービス(以下,両サービスを併せてXサービスという)を提供している従業員数70名の企業である。X社には,法務部,サービスマーケティング部,情報システム部,利用者サポート部(以下,利用者サポート部をUS部という)などがある。X社では,最高情報セキュリティ責任者(CISO)を委員長とした情報セキュリティ委員会(以下,X社委員会という)を設置している。X社委員会では,情報セキュリティ管理規程の整備,情報セキュリティ対策の強化などが審議される。X社委員会の事務局長はUS部のS部長である。各部の部長は,X社委員会の委員及び自部における情報セキュリティ責任者を務め,自部の情報セキュリティに関わる実務を担当する情報セキュリティリーダーを選任している。US部の情報セキュリティリーダーはG課長である。 US部には,25名の従業員が所属している。主な業務は,Xサービスを利用している顧客,及びXサービスへの新規の申込みを検討している潜在顧客(以下,Xサービスを利用している顧客及び潜在顧客を併せてX顧客という)からの問合せへの対応業務(以下,X業務という)である。 〔US部が利用しているコールセンタ用サービスの概要〕 US部では,X業務を遂行するためにクラウドサービスプロバイダN社のSaaSのコールセンタ用サービス(以下,Nサービスという)を利用している。NサービスはISMS認証及びISMSクラウドセキュリティ認証を取得している。Nサービスには,会社から貸与されたPCのWebブラウザから,暗号化された通信プロトコルである[a]を使ってアクセスする。Nサービスは,図1の基本機能及びセキュリティ機能を提供している。

図1 Nサービスの基本機能及びセキュリティ機能

Nサービスのデータベース(以下,NDBという)に,氏名,年齢,住所,利用中のサービスプラン,問合せ対応記録その他のX顧客に関する情報(以下,X情報という)は暗号化されて,また,検索用キーは平文で保存されている。①X情報は,US部の従業員に貸与しているPCにだけ格納した暗号鍵を用いて,US部の従業員が復号できる仕組みになっている。PCへのログインには利用者IDとパスワードが必要である。 X社では,Nサービスのセキュリティ機能のうち手動実行機能は,管理者アカウントをもつUS部の特定の従業員だけが実行できる。X社利用分の監査ログは,X社の情報システム部が常時監視している。 US部では,業務効率化の一環として,2019年10月にX業務の3割を外部に委託し,残りの業務は継続してNサービスを利用しながらUS部内で遂行することにした。その委託先の第一候補がY社である。Y社を選んだ理由は,次の2点である。 他の候補と比較してサービス内容に遜色がなく,しかも低価格であること秘密保持契約を締結した上で,業務委託に関わる範囲を対象とした,情報セキュリティ対策の評価に協力してくれること 〔Y社の概要〕 Y社は,次のコールセンタサービス(以下,Yサービスという)を提供する従業員数200名の企業である。 委託元に代わって顧客からの製品やサービスに関する様々な問合せや苦情などを受け付ける。委託元の製品やサービスの評判を新聞,雑誌などのメディア,インターネット上のSNS,掲示板などを基に調査し,委託元に報告する。著作物を複製する場合は,著作権者の許諾を得て行う。 Y社はコールセンタシステム(以下,Yシステムという)を構築し,通常はそれを利用してYサービスを提供している。 Y社の組織の主な業務及び体制を表1に示す。

表1 Y社の組織の主な業務及び体制(抜粋)、注記・注1

Y社は,従業員を対象に,原則4月及び10月の1日に社内の定期人事異動がある。また,これらの時期以外でも組織再編,業務の見直しなどの理由で人事異動がある。Y-CS部のパートタイマは,1年間で約2割が退職する。人事総務部は,欠員補充のために,ほぼ同数を新規に採用している。 〔Y社の情報セキュリティ対策〕 Y社は,東京都内の7階建てビルの3~5階に入居しており,他の階には別の企業が入居している。ビルの出入りは誰でも可能であり,階段やエレベータを使用して,各階に移動できる。Y社の入退管理を図2に示す。

図2 Y社の入退管理

3階はY-CS部の,また,4階及び5階は他部の業務エリアである。 Y-CS部の管理職及び一般従業員は,5階の会議室で営業部の従業員と会議をすることが多いので,3階及び5階への入室権限が与えられている。 3~5階には,複合機が2台ずつ設置されており,コピー,プリント,スキャンの機能が使用できる。Y-CS部はスキャンの機能を使用して,新聞,雑誌などに紹介された委託元の製品やサービスに関する記事をPDF化し,委託元に報告している。スキャンしたPDFファイルは電子メール(以下,電子メールをメールという)にパスワードなしで添付されて,スキャンを実行した本人だけに送信される。PDFファイルの容量が大きい場合は,PDFファイルを添付する代わりにプリントサーバ内の共有フォルダに自動的に保存され,保存先のURLがメールの本文に記載されて送信される。その際,メールの送信者名,件名,本文及び添付ファイル名の命名規則などは,複合機の初期設定のまま使用している。そのため,誰がスキャンを実行しても,メールの送信者名などは同じになる。複合機のマニュアルはインターネットに掲載されている。 管理職にはデスクトップPC及びノートPCが,その他の従業員にはデスクトップPCが貸与されている。ノートPCは,社内会議での資料のプロジェクタによる投影,在宅での資料作成などに利用する。Y社が貸与しているPC(以下,Y-PCという)の仕様及び利用状況を表2に示す。

表2 Y-PCの仕様及び利用状況(抜粋)

プロキシサーバには次の機能があるが,現在は使用していない。 指定されたURLへのアクセスを許可又は禁止する機能(以下,プロキシ制御機能という)利用者ID及びパスワードによる認証機能(以下,利用者認証機能という) プロキシサーバのログ(以下,プロキシログという)はログサーバに転送され,3か月間保存される。プロキシログは,ネットワーク障害,不審な通信などの原因を調査する場合に利用する。プロキシログには,アクセス日時及びアクセス先IPアドレスが記録されるが,利用者認証機能を使用すると,Webサイトにアクセスした従業員の利用者IDも記録される。 VPNサーバにはパケットフィルタリングの機能及びあらかじめ設定したドメインへの通信を禁止する機能(以下,両機能を併せてVPN制御機能という)があるが,現在は使用していない。 〔Y社からの提案〕 Y社がX業務に利用するシステム又はサービスは表3に示す2案がある。X社から特段の要求がなければ,Y社は案1を採用する。

表3 Y社がX業務に利用するシステム又はサービス

〔X社委員会における案1及び案2の検討〕 X社委員会は,案2では,案1のもつ[b]できるので,案2の採否について議論した。X社委員会では,業務委託後の残留リスクを受容できると判断できた場合は,Y社に委託することにした。そこで,CISOは,業務委託に関わる範囲を対象としてY社の情報セキュリティ対策を確認し,X社委員会に報告するようS部長に指示した。 S部長は,G課長にY社の情報セキュリティ対策を確認して報告するよう指示した。S部長は,情報システム部に技術面での協力を依頼し,同部のH主任がG課長に協力することになった。 〔X社の情報セキュリティ要求事項と評価〕 G課長とH主任は,自社の情報セキュリティ管理規程を基に,X業務の外部への委託における情報セキュリティ要求事項(以下,X要求事項という)を取りまとめた。 X社とY社間で秘密保持契約を締結した後,G課長は,Y社を訪問した。G課長はY社の承諾を得た上で,X要求事項を基に,Y-CS部従業員へのヒアリング及び設備状況の目視による確認などを行った。その際,T部長及びF課長に同行を依頼した。その後,表4のとおり評価結果と評価根拠をまとめてY社に事実確認を依頼したところ,"事実だ"との回答があった。評価結果は次のルールに従って記入した。 要求事項を満たす場合:"OK"要求事項を満たさない場合:"NG"

表4 X要求事項に対するY社の対策の評価結果と評価根拠(抜粋)、空欄c・d・e・下線②

〔評価結果に対する対応案の検討〕 後日,G課長はT部長とF課長に,Y社と業務委託契約をしたいと伝え,その前提として,評価結果が"NG"の要求事項への対応を依頼した。Y社はG課長に③対応案を伝えた。G課長はH主任と相談の上,対応案をS部長に報告した。 S部長が表4及び対応案をX社委員会に報告したところ,Y社にX業務を委託することが承認され,無事に業務が開始された。X社はY社への業務委託によって業務の効率化を進めることができた。

設問4〔評価結果に対する対応案の検討〕について,(1),(2)に答えよ。 (2) 本文中の下線③について,表4中の項番18の要求事項への有効な対応案としてどのようなものがあるか。次の(ⅰ)~(ⅴ)のうち,有効なものだけを全て挙げた組合せを,解答群の中から選べ。 (ⅰ) Nサービスにログインできる従業員のデスクトップPCからWebブラウザを削除し,導入が必要な場合にだけ,システム管理部に申請する。 (ⅱ) Nサービスにログインできる従業員は,デスクトップPCは使用せずに,ノートPCだけを使用してX業務を実施する。 (ⅲ) Nサービスにログインできる従業員を対象に,プロキシサーバの利用者認証機能を使用し,プロキシログを監視する旨を通知する。 (ⅳ) デスクトップPCからはNサービスだけにアクセスすることを社内ルールに明記し,Nサービスにログインできる従業員を対象に,通知する。 (ⅴ) プロキシサーバのプロキシ制御機能を使用して,Nサービス以外へのアクセスを禁止する。

  1. ア

    (ⅰ)

  2. イ

    (ⅰ),(ⅴ)

  3. ウ

    (ⅱ)

  4. エ

    (ⅱ),(ⅲ)

  5. オ

    (ⅱ),(ⅴ)

  6. カ

    (ⅲ)

  7. キ

    (ⅲ),(ⅳ)

  8. ク

    (ⅳ)

  9. ケ

    (ⅳ),(ⅴ)

  10. コ

    (ⅴ)

会話形式の解説

講師講師
X社がY社に業務を委託する前の評価で、項番18が「NG」でした。この問題では、その項番18への有効な対応案を5つの中から全て選びます。項番18は、インターネット上のWebサイトへX情報(X社の顧客情報)が持ち出されることを「けん制」する対策を求めています。
受験者受験者
「けん制」というのは、持出しを止める仕組みのことですか。それなら、通信を遮断する案が一番強そうに思えます。
講師講師
ここが最初のつまずきどころです。けん制は、不正を思いとどまらせる抑止の効果を指します。技術的に完全に止めることまでは求めていません。そのうえで、業務を止めない対策かどうかも確かめます。
受験者受験者
では、Webブラウザを削除して、必要なときだけ申請する案はどうでしょうか。ブラウザがなければWebサイトにも書き込めません。
講師講師
NサービスはWebブラウザからアクセスするサービスでしたね。ブラウザを削除すると、Nサービスそのものが使えなくなります。それではX業務ができないので、この案は無効です。
受験者受験者
なるほど。デスクトップPCをやめてノートPCだけを使う案は、どうでしょうか。
講師講師
この案は使うPCを替えるだけで、持出しを思いとどまらせる仕組みがありません。それに表2のとおり、ノートPCは社内外へ持ち運べます。X業務を3階のエリアに限る要求とも両立しないので、無効です。
受験者受験者
プロキシサーバの利用者認証機能を使って、プロキシログを監視すると通知する案はどうでしょう。プロキシログは中継サーバの通信記録のことですよね。
講師講師
そうです。利用者認証機能を使うと、プロキシログにアクセスした従業員の利用者IDが記録されます。誰がどこへアクセスしたかが残るわけです。さらに監視していると通知すれば、持出しを思いとどまらせる効果が出ます。
受験者受験者
通常の業務はそのまま続けられるので、けん制の目的に合っているのですね。では、デスクトップPCからはNサービスだけにアクセスするという社内ルールを明記して通知する案も、抑止になりそうです。
講師講師
このルールには問題があります。Y社は、委託元の評判をSNSや掲示板などで調べて報告する業務も行っています。Nサービス以外を見てはいけないというルールは、その調査業務と両立しません。
受験者受験者
残りは、プロキシ制御機能でNサービス以外へのアクセスを禁止する案です。これはルールではなく、技術的に遮断する案ですね。
講師講師
そうです。技術的に遮断すると、SNS等の調査業務ができなくなります。それだけでなく、表2にあるマルウェア定義ファイルの更新も止まります。PCは1日1回ベンダのサーバにアクセスして更新しているからです。
受験者受験者
まとめると、有効なのは利用者認証を使ってプロキシログを監視すると通知する案だけですね。ブラウザ削除は業務が止まり、ノートPCに限るのは抑止になりません。ルールと遮断は、調査業務などと両立しません。
講師講師
そのとおりです。正解はカになります。対策を選ぶときは、要求事項の目的に合っているかと、既存業務や必要な通信を止めないかの両方を確かめてください。

まとめ

この問題は、委託先Y社の評価で「NG」になった、Webサイトへの顧客情報の持出しをけん制する対策について、有効な対応案を選ぶものです。「けん制」は不正を思いとどまらせる抑止の効果を指し、技術的に完全に止めることまでは求めていません。プロキシサーバの利用者認証機能を使うと、プロキシログに利用者IDが記録されます。監視していることを通知すれば、通常業務を保ったまま抑止できるので、この案が有効です。ブラウザ削除やNサービス以外の遮断、Nサービスだけを使うという社内ルールは、X業務やSNS等の調査業務、定義ファイルの更新と両立しません。ノートPCに限る案には抑止の仕組みがありません。

解答・解説

正解はカです

この問題のテーマ

委託先Y社の評価で「NG」だった項番18(Webサイトへの X情報(X社の顧客情報)の持出しをけん制する対策)に対して、有効な対応案を選ぶ問題です。

解き方の考え方

まず、項番18が求めるものを確かめます。求めているのは「けん制」、つまり持出しを思いとどまらせる抑止策です。次に、(ⅰ)〜(ⅴ)が抑止になるか、業務を止めないかを順に照らします。(ⅰ)のブラウザ削除は、Webブラウザで使うNサービス自体が使えなくなるので無効です。(ⅱ)は使うPCを替えるだけで、持出しを抑える仕組みがありません。(ⅲ)は利用者IDがプロキシログ(中継サーバの通信記録)に残り、監視することも通知されるので有効です。(ⅳ)と(ⅴ)はNサービス以外への通信を一律に断ちます。そのため、SNS等の調査業務やマルウェア定義ファイルの自動更新(表2)を妨げます。

選択肢ごとの解説

  1. ×ア  (ⅰ)
    (ⅰ)のブラウザ削除だけを選んでいます。NサービスはWebブラウザから使うため、削除するとX業務ができなくなります。
  2. ×イ  (ⅰ),(ⅴ)
    (ⅰ)は業務を止めてしまいます。(ⅴ)の一律遮断は、調査業務や定義ファイルの更新を妨げます。
  3. ×ウ  (ⅱ)
    (ⅱ)のノートPC限定は、持出しを抑える仕組みを持ちません。また、ノートPCは3階の外へ持ち出せます。
  4. ×エ  (ⅱ),(ⅲ)
    (ⅲ)は有効です。しかし(ⅱ)が無効なので、この組合せは誤りです。
  5. ×オ  (ⅱ),(ⅴ)
    (ⅱ)には抑止の仕組みがありません。(ⅴ)は必要な通信まで止めてしまいます。
  6. ○カ  (ⅲ)
    (ⅲ)では、誰がどこへアクセスしたかが記録に残ります。監視の通知と合わせると、通常業務を保ったまま持出しを抑止できます。したがって、カが正解です。
  7. ×キ  (ⅲ),(ⅳ)
    (ⅲ)は有効です。一方、(ⅳ)の「Nサービスだけにアクセス」という規則は、SNS等の調査業務と両立しません。
  8. ×ク  (ⅳ)
    (ⅳ)の規則は、Nサービス以外のサイトを見る調査業務と両立しません。
  9. ×ケ  (ⅳ),(ⅴ)
    (ⅳ)の規則と(ⅴ)の技術的な遮断は、どちらも他サイトを一律に禁じます。そのため、業務用のサイトや更新先にも接続できなくなります。
  10. ×コ  (ⅴ)
    (ⅴ)でNサービス以外を遮断すると、定義ファイルの更新先など必要な通信も止まります。

POINT

  • 「けん制」は、不正を思いとどまらせる抑止の効果を指します。
  • 利用者認証を使うと、プロキシログに利用者IDが記録されます。
  • 記録があることと監視することを通知すると、抑止になります。
  • 対策を選ぶときは、既存業務や必要な通信を止めないかも確かめます。

※出典:令和元年度秋期 情報セキュリティマネジメント試験 午後 問3 設問4(2)(一部改変)