WBSは何のために作るのか、ほかの管理手法とどう違うか
情報セキュリティマネジメント試験 2022年 サンプル問題 問40 / プロジェクトマネジメント › スコープマネジメント
過去問にチャレンジ
ソフトウェア開発プロジェクトにおいてWBS を作成する目的として,適切なものはどれか。
- ア
開発の期間と費用とがトレードオフの関係にある場合に,総費用の最適化を図る。
- イ
作業の順序関係を明確にして,重点管理すべきクリティカルパスを把握する。
- ウ
作業の日程を横棒(バー)で表して,作業の開始時点や終了時点,現時点の進捗を明確にする。
- エ
作業を,階層的に詳細化して,管理可能な大きさに細分化する。
会話形式の解説
講師今回はプロジェクト管理の問題です。WBSを作る目的を問われていますが、選択肢にはほかの管理手法の説明も混ざっています。どの説明がどの手法のものかを見分けるのがポイントです。
受験者WBSという言葉は覚えているのですが、ガントチャートやクリティカルパスとまとめて覚えてしまっていて、どれも工程表のようなものだと思っていました。
講師そこが混ざりやすいところです。まずは略語を広げてみましょう。WBSはWork Breakdown Structureの略です。Breakdownにはどんな意味があると思いますか。
受験者分解、でしょうか。そうすると、作業を分けていくための構造ということですか。
講師そのとおりです。プロジェクトの作業や成果物を、上の大きな単位から下の細かい単位へ階層的に分けていき、管理できる大きさにする図です。選択肢の中で「分解」を説明しているものを探すと、どれになりますか。
受験者作業を階層的に詳細化して、管理可能な大きさに細分化する、という選択肢ですね。ほかの選択肢は分解の話をしていないように見えます。
講師はい、それが正解です。では残りも確認しておきましょう。作業の順序関係を明確にしてクリティカルパスを把握する、という説明はどうでしょう。クリティカルパスは、遅れるとプロジェクト全体が遅れる作業のつながりのことです。
受験者順序や前後関係を表すなら、矢印で作業をつなぐアローダイアグラムのほうだと思います。WBSは階層で分けるだけなので、前後関係までは表さないということですか。
講師そうです。アローダイアグラム、つまりPERT図のようなネットワーク図の目的です。実務では、WBSで洗い出した作業を材料にして、その順序をネットワーク図で整理する流れになります。
受験者作業の日程を横棒で表して、開始・終了や今の進み具合を示すという選択肢は、ガントチャートの説明ですね。
講師正しいです。横棒で日程を表すのはガントチャートで、WBSは作業を分ける構造図なので日程は表しません。最後に、期間と費用のトレードオフの中で総費用を最適化する、という選択肢はどうですか。
受験者日程を縮めると費用が増える、といった関係を分析する話なので、費用と期間を扱う別の手法の目的だと思います。WBSには費用と期間の最適な組合せを求める仕組みはないですよね。
講師そのとおりです。整理すると、分解がWBS、順序とクリティカルパスがアローダイアグラム、日程と進捗の見える化がガントチャート、期間と費用の最適化はまた別の手法です。
受験者名前の「Breakdown」を手がかりにすれば、迷わずに選べそうです。
講師補足すると、作業を細かく分けておくと、作業ごとに見積りや担当の割当てがしやすくなります。内容や目標も決めやすくなり、作業の漏れや抜けにも気づきやすくなります。
まとめ
WBS(Work Breakdown Structure)は、プロジェクトの作業や成果物を階層的に分解し、管理できる大きさに細分化するためのものです。作業の順序関係やクリティカルパスを扱うのはアローダイアグラム(PERT図)などのネットワーク図で、日程を横棒で表して進捗を示すのはガントチャートです。期間と費用のトレードオフから総費用を最適化するのも、WBSではなく別の手法の目的です。WBSで作業を細かく分けておくと、見積りや担当の割当てがしやすくなり、作業の漏れにも気づきやすくなります。
解答・解説
正解はエです
この問題のテーマ
プロジェクト管理の代表的な手法のうち、WBS(Work Breakdown Structure)を作る目的を、ほかの日程・費用管理の手法と区別できるかを問う問題です。
解き方の考え方
WBS は「Breakdown(分解)」という名前のとおり、プロジェクトの作業や成果物を上位から下位へ段階的に分けていく構造図です。そこで各選択肢が「分解」を説明しているのか、「順序」「日程」「費用」を説明しているのかを見分けます。順序はアローダイアグラム、日程の見える化はガントチャートの役割です。分解を説明しているのはエだけなので、エが正解です。
選択肢ごとの解説
- ×ア 開発の期間と費用とがトレードオフの関係にある場合に,総費用の最適化を図る。期間と費用のトレードオフの中で総費用を最適にする、という説明は、日程短縮とコストの関係を分析する手法の目的です。WBS は作業を分けて洗い出すもので、費用と期間の最適な組合せを求める仕組みは持っていません。そのため WBS の目的には当たりません。
- ×イ 作業の順序関係を明確にして,重点管理すべきクリティカルパスを把握する。作業の順序関係を明らかにしてクリティカルパスを把握する、という説明は、アローダイアグラム(PERT 図)などのネットワーク工程表の目的です。WBS は作業を階層で分けるもので、作業どうしの前後関係を表すものではありません。WBS で洗い出した作業を材料にして、順序はネットワーク図で整理します。
- ×ウ 作業の日程を横棒(バー)で表して,作業の開始時点や終了時点,現時点の進捗を明確にする。作業の日程を横棒で表し、開始・終了の時点や今の進み具合を示す、という説明はガントチャートのものです。WBS は作業を細かく分ける構造図で、横棒で日程を表すものではありません。
- ○エ 作業を,階層的に詳細化して,管理可能な大きさに細分化する。作業を階層的に詳しくしていき、管理できる大きさにまで分けるという説明は、WBS の目的そのものです。作業を細かく分けることで、作業ごとに見積りや担当の割当てができるようになります。
補足
WBS で作業を細かく分けると、それぞれの作業の内容・日程・目標を決めやすくなります。また、作業の漏れや抜けにも気づきやすくなります。
POINT
- WBS は、プロジェクトの作業や成果物を階層的に分解して、管理できる単位に細分化したものです。
- 作業の順序関係とクリティカルパスを扱うのは、アローダイアグラム(PERT 図)などのネットワーク図です。
- 作業日程を横棒で表して進捗を示すのはガントチャートです。
- WBS で作業を細かく分けておくと、その後の見積り・担当の割当て・日程計画の土台になります。
