マナビング情報セキュリティマネジメント

楕円曲線暗号の特徴をRSA暗号との比較で整理する

情報セキュリティマネジメント試験 平成31年度春期 午前 問27 / セキュリティ › 情報セキュリティ

過去問にチャレンジ

平成31年度春期 午前 問27

楕円曲線暗号の特徴はどれか。

  1. ア

    RSA暗号と比べて,短い鍵長で同レベルの安全性が実現できる。

  2. イ

    共通鍵暗号方式であり,暗号化や復号の処理を高速に行うことができる。

  3. ウ

    総当たりによる解読が不可能なことが,数学的に証明されている。

  4. エ

    データを秘匿する目的で用いる場合,復号鍵を秘密にしておく必要がない。

会話形式の解説

講師講師
今回は楕円曲線暗号の特徴を問う問題です。まず、この暗号が共通鍵暗号と公開鍵暗号のどちらに分類されるかを押さえるのがポイントです。
受験者受験者
名前は聞いたことがありますが、どちらに分類されるのかがあいまいです。暗号化や復号が速いという説明もあったので、共通鍵暗号なのかと思いました。
講師講師
楕円曲線暗号は公開鍵暗号方式です。ですから、共通鍵暗号方式だとする説明は誤りです。処理が高速という特徴も、AESなどの共通鍵暗号に当てはまるものです。公開鍵暗号は、一般に共通鍵暗号より処理が遅くなります。
受験者受験者
公開鍵暗号なら、鍵を公開できるわけですよね。そうすると、復号鍵を秘密にしなくてよいという説明も合っているように見えます。
講師講師
そこが引っかけです。データを秘匿する用途では、公開鍵で暗号化して、秘密鍵で復号します。公開してよいのは暗号化に使う公開鍵だけです。復号に使う秘密鍵は、秘密に管理しなければなりません。その説明は、二つの鍵の役割を取り違えています。
受験者受験者
なるほど、復号鍵が知られたら誰でも読めてしまいますね。総当たりでの解読が不可能だと数学的に証明されている、という説明はどうでしょうか。強そうな暗号なので、ありえる気もします。
講師講師
総当たりで解読できないことは、数学的に証明されていません。楕円曲線暗号に限らず、現代暗号の安全性は「現実的な時間では解読が難しい」という計算量上の困難さにもとづいています。「証明されている」と言い切った選択肢には注意が必要です。
受験者受験者
そうすると、RSA暗号より短い鍵長で同じレベルの安全性を実現できる、という説明が残ります。同じ公開鍵暗号なのに、なぜ鍵の長さが違うのですか。
講師講師
安全性の土台になっている数学の問題が違うからです。RSA暗号は素因数分解の難しさに、楕円曲線暗号は楕円曲線上の離散対数問題の難しさにもとづいています。楕円曲線暗号は、RSA暗号と同程度の安全性をより短い鍵長で実現できます。これが代表的な特徴で、正解はこの説明です。
受験者受験者
まとめると、楕円曲線暗号は公開鍵暗号なので秘密鍵は秘密に管理する、安全性は計算量上の困難さによる、そしてRSA暗号より鍵を短くできる、ということですね。
講師講師
そのとおりです。補足すると、目安として楕円曲線暗号の256ビット鍵は、RSA暗号の3072ビット鍵と同等の強度とされています。鍵が短いと、計算量・通信量・メモリの負担が減ります。そのため、携帯機器や組込み機器で有利です。
受験者受験者
数字で比べると、差の大きさがよく分かります。楕円曲線暗号を使った具体的な方式も覚えておいたほうがよいでしょうか。
講師講師
はい。署名用のECDSAと、鍵共有用のECDHを覚えておくと、関連する問題にも対応しやすくなります。

まとめ

楕円曲線暗号は公開鍵暗号方式のひとつで、安全性は楕円曲線上の離散対数問題の難しさにもとづいています。RSA暗号と同程度の安全性をより短い鍵長で実現できる点が、代表的な特徴です。秘匿の用途では公開鍵で暗号化し、秘密鍵で復号するので、復号鍵は秘密に管理する必要があります。また、暗号の安全性は計算量上の困難さによるもので、総当たりで解読できないことが数学的に証明されているわけではありません。256ビットの楕円曲線暗号鍵は3072ビットのRSA鍵と同等の強度とされ、携帯機器や組込み機器で有利です。

解答・解説

正解はアです

この問題のテーマ

楕円曲線暗号(ECC)が公開鍵暗号のひとつであることと、その代表的な特徴である「鍵長が短くて済む」点を理解しているかを問う問題です。

解き方の考え方

最初に、楕円曲線暗号が公開鍵暗号方式に分類されることを確認します。これで、共通鍵暗号だとするイと、復号鍵を秘密にしなくてよいとするエは外せます。残りの2つのうち、「数学的に証明されている」というウの言い切りは、現代暗号の安全性の考え方に合いません。そのため、RSAと鍵長を比べたアが残ります。

選択肢ごとの解説

  1. ○ア  RSA暗号と比べて,短い鍵長で同レベルの安全性が実現できる。
    RSA暗号より短い鍵長で同レベルの安全性が得られるという説明は、楕円曲線暗号の代表的な特徴そのものです。RSAの安全性は素因数分解の難しさに、楕円曲線暗号の安全性は楕円曲線上の離散対数問題の難しさにもとづいています。後者のほうが効率よく強度を確保できるため、鍵を短くできます。
  2. ×イ  共通鍵暗号方式であり,暗号化や復号の処理を高速に行うことができる。
    楕円曲線暗号は公開鍵暗号方式なので、「共通鍵暗号方式」という説明が誤りです。処理が高速という特徴も、AESなどの共通鍵暗号に当てはまるものです。公開鍵暗号は、一般に共通鍵暗号より処理が遅くなります。
  3. ×ウ  総当たりによる解読が不可能なことが,数学的に証明されている。
    総当たりで解読できないことは、数学的に証明されていません。楕円曲線暗号に限らず、現代暗号の安全性は「現実的な時間では解読が難しい」という計算量上の困難さにもとづいています。
  4. ×エ  データを秘匿する目的で用いる場合,復号鍵を秘密にしておく必要がない。
    データを秘匿する用途では、暗号化に使う公開鍵は公開してかまいません。しかし、復号に使う秘密鍵は秘密に管理しなければなりません。「復号鍵を秘密にしておく必要がない」という説明は、公開鍵と秘密鍵の役割を取り違えています。

補足

鍵長の目安として、楕円曲線暗号の256ビット鍵はRSAの3072ビット鍵と同等の強度とされています。鍵が短いと計算量・通信量・メモリの負担が減るため、携帯機器や組込み機器でよく使われます。代表的な方式として、署名用のECDSAと鍵共有用のECDHを覚えておくと、関連する問題にも対応しやすくなります。

POINT

  • 楕円曲線暗号は公開鍵暗号方式に分類されます。
  • 楕円曲線暗号の安全性は、楕円曲線上の離散対数問題の計算困難性にもとづいています。
  • 楕円曲線暗号は、RSAより短い鍵長で同等の安全性を実現できます。
  • 秘匿の用途では公開鍵で暗号化し、秘密鍵で復号するので、復号鍵は秘密に管理します。
  • 暗号の安全性は計算量上の困難さによるもので、解読不可能が数学的に証明されているわけではありません。

※出典:平成31年度春期 情報セキュリティマネジメント試験 午前 問27