ハイブリッド暗号方式は何を組み合わせ何を両立するのか
情報セキュリティマネジメント試験 平成31年度春期 午前 問28 / セキュリティ › 情報セキュリティ
過去問にチャレンジ
OpenPGPやS/MIMEにおいて用いられるハイブリッド暗号方式の特徴はどれか。
- ア
暗号通信方式としてIPsecとTLSを選択可能にすることによって利用者の利便性を高める。
- イ
公開鍵暗号方式と共通鍵暗号方式を組み合わせることによって鍵管理コストと処理性能の両立を図る。
- ウ
複数の異なる共通鍵暗号方式を組み合わせることによって処理性能を高める。
- エ
複数の異なる公開鍵暗号方式を組み合わせることによって安全性を高める。
会話形式の解説
講師今回の問題は、メールの暗号化に使われるOpenPGPやS/MIMEのハイブリッド暗号方式の特徴を選ぶものです。どの種類の暗号方式を組み合わせ、何をねらっているのかに注目してください。
受験者ハイブリッドというと、何かを複数組み合わせるイメージです。ただ、共通鍵暗号を複数使うのか、公開鍵暗号を複数使うのか、そこで迷ってしまいました。
講師では、迷いを解くために、まず2つの方式の長所と短所を整理しましょう。共通鍵暗号は、暗号化と復号に同じ鍵を使う方式です。処理は速いのですが、鍵を相手に安全に渡すのが難しく、相手が増えるほど鍵の数も増えます。
受験者公開鍵暗号は、公開してよい鍵と本人だけが持つ秘密鍵のペアを使う方式でしたね。鍵を渡す問題は解決できますが、計算量が多いと習いました。
講師そのとおりです。大きなデータを公開鍵暗号で処理するのには向きません。そこで、互いの短所を補うように、種類の違うこの2つを組み合わせるのがハイブリッド暗号方式です。
受験者では、公開鍵暗号と共通鍵暗号を組み合わせて、鍵管理コストと処理性能を両立させるという選択肢が正解ですね。具体的にはどう使い分けるのですか。
講師メール本文は高速な共通鍵暗号で暗号化します。この共通鍵をセッション鍵と呼び、受信者の公開鍵で暗号化して一緒に送ります。受信者は自分の秘密鍵でセッション鍵を取り出し、それで本文を復号します。
受験者重い公開鍵暗号は小さなセッション鍵にだけ使うのですね。複数の共通鍵暗号を組み合わせて性能を上げるという選択肢は、鍵を安全に渡す問題が残るから誤り、ということでしょうか。
講師はい。共通鍵暗号だけをいくつ組み合わせても、鍵配送の課題は解決しません。複数の公開鍵暗号を組み合わせて安全性を高めるという選択肢も、本文の暗号化処理が重いという短所が残るので、ハイブリッド暗号の定義には合いません。
受験者IPsecとTLSを選べるようにするという選択肢は、暗号方式の組合せではなく、通信プロトコルを選ぶ話ですよね。
講師そうです。OpenPGPやS/MIMEはメールの暗号化と署名のための仕様で、通信方式を切り替える仕組みとは関係がありません。
受験者まとめると、本文は共通鍵暗号で速く暗号化し、その鍵だけを公開鍵暗号で守って渡すことで、鍵管理の負担軽減と処理性能を両立する方式、という理解でよいですか。
講師その理解で大丈夫です。補足すると、セッション鍵はメール1通ごとに暗号学的な乱数で新しく作ります。そのため、ある1通のセッション鍵が漏れても、ほかのメールまで読まれるわけではありません。間違えやすいのは、ハイブリッドという言葉から同じ種類の方式を複数組み合わせると考えてしまう点です。種類の違う公開鍵暗号と共通鍵暗号の組合せ、と覚えておきましょう。
まとめ
OpenPGPやS/MIMEが採るハイブリッド暗号方式は、公開鍵暗号方式と共通鍵暗号方式を組み合わせた方式です。メール本文は高速な共通鍵暗号で暗号化し、その共通鍵(セッション鍵)は受信者の公開鍵で暗号化して送ります。受信者は自分の秘密鍵でセッション鍵を取り出し、本文を復号します。これにより、鍵配送・鍵管理の負担軽減と処理性能の確保を両立できます。同じ種類の暗号方式を複数組み合わせたものではない点に注意が必要です。
解答・解説
正解はイです
この問題のテーマ
メールの暗号化に使われるOpenPGPやS/MIMEは、ハイブリッド暗号方式を採っています。この問題は、どの種類の暗号方式を組み合わせ、何をねらう方式なのかを選ぶ問題です。
解き方の考え方
最初に、共通鍵暗号と公開鍵暗号の長所と短所を整理します。共通鍵暗号は処理が速い一方、鍵を安全に渡すのが難しく、相手が増えると鍵の数も増えます。公開鍵暗号は鍵の受け渡しの問題を解決できますが、計算量が多く、大きなデータには向きません。次に、この2つの短所を互いに補う組合せを探します。したがって、「公開鍵暗号と共通鍵暗号の組合せ」を述べた選択肢が正解です。
選択肢ごとの解説
- ×ア 暗号通信方式としてIPsecとTLSを選択可能にすることによって利用者の利便性を高める。この肢は、IPsecとTLSを選べることを特徴としています。しかし、これは通信プロトコルの選択の話で、ハイブリッド暗号方式の特徴ではありません。OpenPGPやS/MIMEはメールの暗号化と署名のための仕様であり、通信方式を切り替える仕組みではありません。したがって、誤りです。
- ○イ 公開鍵暗号方式と共通鍵暗号方式を組み合わせることによって鍵管理コストと処理性能の両立を図る。この肢は、公開鍵暗号と共通鍵暗号を組み合わせると述べています。本文は高速な共通鍵暗号で暗号化し、その共通鍵(セッション鍵)は受信者の公開鍵で暗号化して送ります。受信者は自分の秘密鍵でセッション鍵を取り出し、本文を復号します。これで鍵配送・鍵管理の負担を減らしつつ、処理性能も確保できます。したがって、正しい肢です。
- ×ウ 複数の異なる共通鍵暗号方式を組み合わせることによって処理性能を高める。この肢は、複数の共通鍵暗号を組み合わせて性能を上げると述べています。しかし、共通鍵暗号だけを組み合わせても、鍵を安全に配送する課題は解決しません。ハイブリッド暗号の定義にも合わないため、誤りです。
- ×エ 複数の異なる公開鍵暗号方式を組み合わせることによって安全性を高める。この肢は、複数の公開鍵暗号を組み合わせて安全性を高めると述べています。しかし、公開鍵暗号だけでは、本文を暗号化する処理が重いという短所が残ります。ハイブリッド暗号の定義でもないため、誤りです。
補足
セッション鍵は通信のたびに暗号学的な乱数で新しく作ります。そのため、ある1通のセッション鍵が漏れても、ほかのメールまで読まれるわけではありません。なお、「ハイブリッド」という言葉から「同じ種類の方式を複数組み合わせる」と考えると誤ります。「種類の違う公開鍵暗号と共通鍵暗号の組合せ」と覚えておきましょう。
POINT
- ハイブリッド暗号方式とは、公開鍵暗号方式と共通鍵暗号方式を組み合わせた方式のことです。
- 本文などのデータは、高速な共通鍵暗号で暗号化します。
- 共通鍵(セッション鍵)は受信者の公開鍵で暗号化して送り、受信者は自分の秘密鍵で取り出します。
- この組合せによって、鍵管理の負担軽減と処理性能の確保を両立できます。
