マナビング情報セキュリティマネジメント

SNS公式アカウントが本物だと示す手段を見分ける

情報セキュリティマネジメント試験 平成31年度春期 午後 問15 / セキュリティ › 情報セキュリティ対策

過去問にチャレンジ

平成31年度春期 午後 問15

問問2の共通の文

企業における情報セキュリティ管理に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 X社は,機械製品及び産業用資材の輸入及び国内販売業務を行う従業員数1,000名の商社であり,機械営業部,資材営業部,総務部,情報システム部などがある。 X社は,数年前に同業他社で発生した情報セキュリティ事故を機に,情報セキュリティ管理に力を入れるようになり,JIS Q 27001に基づく情報セキュリティマネジメントシステム(以下,X社ISMSという)を構築し,ISMS認証を取得している。 X社ISMSでは,副社長である最高情報セキュリティ責任者(CISO)を委員長とする情報セキュリティ委員会を設置し,各部の部長が情報セキュリティ委員会の委員を務めている。また,各部の部長は自部の情報セキュリティリーダーを指名する。情報セキュリティ委員会はX社ISMSの年間活動計画を決定する。 X社ISMSの活動の実務は,各部の情報セキュリティリーダーから構成されるISMSワーキンググループ(以下,ISMS-WGという)が行っている。ISMS-WGのリーダーは,情報システム部のS課長である。ISMS-WGは,年間活動計画に基づき活動するほか,X社ISMS規程などの文書(以下,X社ISMS文書という)の改定案の検討を行う。 〔X社ISMSの年間活動計画〕 4月のある日,今年度初めてのISMS-WG会合が開催され,その席上で,表1に示すX社ISMSの年間活動計画が提示された。また,6月に実施される情報資産目録の見直しについてS課長から説明があった。X社ISMSでは各部において情報資産の名称,管理責任者,重要度,保管場所,保管期間を記した情報資産目録を作成し,毎年見直すことになっている。しかし,毎年見直し後に幾つかの記載の過不足が見つかっていることから,見直し後の記載に過不足がないことをよく確認するよう,改めてS課長がISMS-WGのメンバーに対して注意を促した。

表1 X社ISMSの年間活動計画(抜粋)、下線①・注1

〔販路拡大のための施策〕 最近になって,主な取引先である海外のY社が,新製品として個人向けの3Dプリンタ(以下,3DPという)を開発した。これまでX社は個人向けには製品を販売していなかったが,機械営業部では3DPの個人向け販売を販路拡大の機会と捉え,そのための施策を検討した。その結果を表2に示す。

表2 販路拡大のための施策

機械営業部の情報セキュリティリーダーであるT課長は,これらの施策に係る情報セキュリティリスクアセスメントの実施とリスク対応が必要と考え,S課長に相談したところ,表3のようなアドバイスを受けた。

表3 S課長のアドバイス(抜粋)、下線②・空欄a

S課長のアドバイスを受け,T課長は個人向け通信販売については,案2を採用し,外部のオンラインショッピングサイトを利用するのがよいと考えた。利用するシステムの詳細が固まった後に改めて情報セキュリティリスクアセスメントを行い,ISMS-WGに確認してもらうことにした。 次に,S課長とT課長はSNSを利用した情報提供に起因するリスクについて検討することにした。S課長は,T課長に次のリスクを説明した。 リスク1 X社の従業員が,X社公式アカウントを用いてX社の信用及び評判を低下させるような投稿を行う。 リスク2 第三者がX社公式アカウントを装い,X社の信用及び評判を低下させるような投稿を行う。 リスク3 第三者がX社公式アカウントを乗っ取り,X社の信用及び評判を低下させるような投稿を行う。 S課長の説明を聞いたT課長は,機械営業部だけでこれらのリスクに対応することは困難と判断した。そこで,SNSを利用した情報提供に起因するリスクについては,全社的な対策を立案するようS課長に依頼した。 また,S課長は,業務外でのSNSの個人利用についても,次のようなリスクがあることをT課長に説明した。 リスク4 X社の従業員が,X社の信用及び評判を損なうような不用意な投稿を行う。 リスク5 X社の従業員が,その投稿から③X社及び従業員の情報を攻撃者に推測され,X社に対する標的型攻撃の手掛かりにされるような不用意な投稿を行う。 これらのリスクを踏まえ,T課長は,業務外でのSNSの個人利用についても,従業員向けに何らかの指針を示すのがよいのではないかとS課長に提言した。S課長は,SNSの利用に関するルールを立案し,ISMS-WGで検討することにした。 〔SNSの利用に関する情報セキュリティ対策〕 数日後,S課長はX社公式アカウントの運用に関する情報セキュリティ対策の案を作成した。その内容を表4に示す。

表4 公式アカウントの情報セキュリティ対策、空欄b1〜c3

また,S課長は,SNSの個人利用に関する指針を策定し,12月に実施する従業員向け情報セキュリティ教育の内容に含めることにした。SNSの個人利用を一律に禁止することは適切でないので,この指針では,法令及び雇用契約上の要求事項の観点から従業員が順守すべき事項と,SNSの利用に当たって従業員が実施することが推奨される事項に分けて記載することにした。その概要を表5に示す。

表5 個人アカウントの利用指針、空欄d1〜e3

X社公式アカウントの運用に関する情報セキュリティ対策及びSNSの個人利用に関する指針は,ISMS-WGでの検討を経て情報セキュリティ委員会において承認された。 〔オンラインショッピングサイトの利用〕 機械営業部は,大手通信販売業者であるZ社のオンラインショッピングサイト(以下,Zショップという)を利用して個人向けに3DP及びオプション品を販売することにした。Zショップでは,消費者向けサイト以外にも各出品者用にポータルサイトを提供している。 X社には,Z社からX社専用のポータルサイト(以下,X社ポータルという)へのアクセス権が付与され,X社ポータルを利用する業務担当者用アカウントを追加又は削除可能な管理者用アカウントが一つ設定された。この管理者用アカウントでは,X社ポータルの他の機能を利用する個々の業務担当者用アカウントの管理だけを行うことにした。X社ポータルで業務担当者用アカウントを追加すると,その業務担当者のメールアドレスに対して電子メールが送信され,初期パスワードの変更が促される。X社ポータルで利用可能な機能とその内容を表6に示す。

表6 ポータルサイトの機能と内容

機械営業部では,X社ポータルで表7に示すロールを新たに登録することにした。

表7 ロールと作業内容

アカウントにロールを設定された業務担当者は,自分の業務用PCでX社ポータルにアクセスし,利用権限を付与された機能を利用して作業を行う。 機械営業部では,表6及び表7を基に,各ロールに付与する利用権限を検討することにした。その案を表8に示す。

表8 ロールの利用権限、◎・○・×の注記・注1

X社ISMSでは,今回のように業務を大きく変更する場合は,情報セキュリティリスクアセスメントを実施し,リスク対応を行うことになっている。そこで,この案について,T課長がS課長に相談したところ,次の指摘を受けた。 指摘1 発送担当者ロールを割り当てられた業務担当者は業務で購入者情報を扱うので,その業務担当者の業務用PCに購入者情報が蓄積されるおそれがあり,対策が必要である。 指摘2 X社ポータル管理者ロールの利用権限が過大であり,不正が起こるおそれがある。X社ポータル管理者ロールの利用権限を分割すべきである。 これらの指摘を受け,T課長は,指摘1については,発送担当者ロールを割り当てられた業務担当者に対して業務用PCに蓄積された購入者情報の利用後の削除を徹底させるとともに,購入者情報が蓄積されていないことを上長に定期的に点検させることにした。また,指摘2については,表8を見直してX社ポータル管理者ロールの利用はやめるとともに,アカウント管理を含むX社ポータルの各機能の利用状況のモニタリングを行うために,新たなロールを追加することにした。追加する新たなロールとそのロールに付与する利用権限の案を,表9に示す。

表9 新ロールの利用権限、空欄f1・f2・g1・g2

これらの案はISMS-WGで検討され,情報セキュリティ委員会の承認を得て,Zショップで3DPの販売が開始されることになった。 その後,Zショップからの新製品の販売は順調に進んでいる。

設問3〔SNSの利用に関する情報セキュリティ対策〕について,(1)~(4)に答えよ。 (1) 表4中の[b1]~[b3]に入れる,次の(ⅰ)~(ⅴ)の組合せはどれか。bに関する解答群のうち,最も適切なものを選べ。 (ⅰ) SNSアカウントのプロフィールにおいて,X社のアカウントであることを明示する。 (ⅱ) SNS担当者の個人アカウントとX社公式アカウントとの相互フォローを行う。 (ⅲ) SNSの提供業者に審査を申請し,認証済みアカウントであることを表示してもらう。 (ⅳ) X社Webサイトに,X社公式アカウントのページへのリンク及びX社公式アカウントの運用方針を明示する。 (ⅴ) X社のメールサーバで,SPF(Sender Policy Framework)を用いた送信ドメイン認証を行う。

  1. ア

    b1:(ⅰ)、b2:(ⅱ)、b3:(ⅲ)

  2. イ

    b1:(ⅰ)、b2:(ⅱ)、b3:(ⅳ)

  3. ウ

    b1:(ⅰ)、b2:(ⅱ)、b3:(ⅴ)

  4. エ

    b1:(ⅰ)、b2:(ⅲ)、b3:(ⅳ)

  5. オ

    b1:(ⅰ)、b2:(ⅲ)、b3:(ⅴ)

  6. カ

    b1:(ⅰ)、b2:(ⅳ)、b3:(ⅴ)

  7. キ

    b1:(ⅱ)、b2:(ⅲ)、b3:(ⅳ)

  8. ク

    b1:(ⅱ)、b2:(ⅲ)、b3:(ⅴ)

  9. ケ

    b1:(ⅱ)、b2:(ⅳ)、b3:(ⅴ)

  10. コ

    b1:(ⅲ)、b2:(ⅳ)、b3:(ⅴ)

会話形式の解説

講師講師
この問題は、SNSの企業公式アカウントの運用対策を扱っています。表4の空欄b1〜b3に入る施策を、五つの候補から三つ選びます。まず、空欄がある項目名を確認しましょう。
受験者受験者
項目名は「X社からの公式な情報発信であることの明示」です。乗っ取り防止の項目は、その下に別にあります。
講師講師
そうです。SNSでは、本人でなくても同じ名前のアカウントを作れます。なので、閲覧者が「このアカウントは本物のX社のものだ」と確かめる手掛かりになるかどうか、で判断します。
受験者受験者
プロフィールでX社のアカウントだと明示する施策は、そのまま当てはまりそうです。
講師講師
はい、プロフィールでの明示は、X社が自ら公式だと名乗る基本の施策です。では、SNSの提供業者に審査してもらい、認証済みアカウントと表示してもらう施策はどうでしょう。
受験者受験者
提供業者という第三者が確認した印になるので、偽アカウントとの区別に役立つと思います。
講師講師
そのとおりです。もう一つ、X社のWebサイトに公式アカウントへのリンクと運用方針を載せる施策があります。閲覧者は自社サイトからリンクをたどって、本物のアカウントを確かめられます。
受験者受験者
SNS担当者の個人アカウントと公式アカウントが相互フォローする施策も、関係者だと示せるので有効に見えて迷います。
講師講師
迷いやすい点です。ただ、個人アカウントとのつながりは、X社公式アカウントが本物であることの裏付けになりません。公式性を示す手段ではないので、外します。
受験者受験者
残りのSPFは、なりすまし対策という言葉で聞いたことがあります。
講師講師
SPFは、電子メールの送信元ドメインが正しいかを確かめる仕組みで、送信ドメイン認証と呼ばれます。メールの技術なので、SNSアカウントが公式かどうかとは関係がありません。
受験者受験者
なりすまし対策という言葉だけで選ぶと間違えるのですね。そうすると、残るのはプロフィールでの明示、認証済み表示、自社サイトからのリンクの三つです。
講師講師
はい。選択肢は記号の小さい順に並んでいるので、b1が(ⅰ)、b2が(ⅲ)、b3が(ⅳ)の組合せ、つまりエが正解です。相互フォローかSPFを含む組合せは、どれも誤りになります。
受験者受験者
閲覧者が本物かどうかを確かめられるか、という一つの軸で全部判断できました。

まとめ

表4の「X社からの公式な情報発信であることの明示」に入る施策を選ぶ問題で、正解はエ((ⅰ)(ⅲ)(ⅳ))です。プロフィールでの明示、SNS提供業者による認証済み表示、自社Webサイトからのリンクと運用方針の掲示は、閲覧者が公式アカウントを本物だと確かめる手掛かりになります。担当者の個人アカウントとの相互フォローは、公式アカウントが本物であることの裏付けになりません。SPFは電子メールの送信ドメイン認証の仕組みで、SNSのなりすまし対策にはなりません。

解答・解説

正解はエです

この問題のテーマ

SNSの企業公式アカウントについて、表4の「X社からの公式な情報発信であることの明示」に当てはまる施策を3つ選ぶ問題です。偽のアカウントとX社公式アカウントを、閲覧者が見分けられるようにする手段かどうかが判断の軸になります。

解き方の考え方

最初に、表4の空欄b1〜b3がある項目名を確かめます。項目名は「公式な情報発信であることの明示」です。次に、(ⅰ)〜(ⅴ)を1つずつ見て、閲覧者が「このアカウントは本物のX社のものだ」と確かめる手掛かりになるかを判断します。手掛かりになるのは(ⅰ)(ⅲ)(ⅳ)の3つで、(ⅱ)と(ⅴ)はなりません。選択肢は記号の小さい順に並んでいるので、3つの組合せが(ⅰ)(ⅲ)(ⅳ)と一致する選択肢を探します。

選択肢ごとの解説

  1. ×ア  b1:(ⅰ)、b2:(ⅱ)、b3:(ⅲ)
    アは(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)の組合せです。(ⅱ)は、SNS担当者の個人アカウントと公式アカウントが互いにフォローし合う施策です。しかし、他の利用者は個人アカウントの持ち主が本人かどうかを確かめられません。そのため、(ⅱ)は公式性の証明にならず、アは誤りです。
  2. ×イ  b1:(ⅰ)、b2:(ⅱ)、b3:(ⅳ)
    イは(ⅰ)(ⅱ)(ⅳ)の組合せです。相互フォローの(ⅱ)だけでは、アカウントが信頼できることの裏付けになりません。また、提供業者による認証済み表示の(ⅲ)が入っていません。したがって、イは誤りです。
  3. ×ウ  b1:(ⅰ)、b2:(ⅱ)、b3:(ⅴ)
    ウは(ⅰ)(ⅱ)(ⅴ)の組合せです。(ⅴ)のSPF(送信元ドメインが正しいかを確かめる電子メールの仕組み)は、迷惑メール対策の技術です。SNSアカウントが公式かどうかとは関係がありません。不適切な(ⅱ)も含むため、ウは誤りです。
  4. ○エ  b1:(ⅰ)、b2:(ⅲ)、b3:(ⅳ)
    エは(ⅰ)(ⅲ)(ⅳ)の組合せです。(ⅰ)は、プロフィールでX社のアカウントだと名乗る施策です。(ⅲ)は、提供業者の審査を通った認証済みの表示で、第三者による確認になります。(ⅳ)では、閲覧者がX社Webサイトのリンクをたどって本物のアカウントを確かめられます。3つとも公式性を示す施策で過不足がないので、エが正解です。
  5. ×オ  b1:(ⅰ)、b2:(ⅲ)、b3:(ⅴ)
    オは(ⅰ)(ⅲ)(ⅴ)の組合せです。メールの仕組みであるSPFの(ⅴ)は、SNSアカウントが公式であることを示しません。また、自社Webサイトにリンクを載せる(ⅳ)が入っていないので、オは誤りです。
  6. ×カ  b1:(ⅰ)、b2:(ⅳ)、b3:(ⅴ)
    カは(ⅰ)(ⅳ)(ⅴ)の組合せです。SNSと関係のないSPFの(ⅴ)を含みます。また、認証済み表示の(ⅲ)が入っていないので、カは誤りです。
  7. ×キ  b1:(ⅱ)、b2:(ⅲ)、b3:(ⅳ)
    キは(ⅱ)(ⅲ)(ⅳ)の組合せです。公式性の証明にならない相互フォローの(ⅱ)を含みます。また、プロフィールで公式だと示す(ⅰ)が入っていないので、キは誤りです。
  8. ×ク  b1:(ⅱ)、b2:(ⅲ)、b3:(ⅴ)
    クは(ⅱ)(ⅲ)(ⅴ)の組合せです。不適切な(ⅱ)と(ⅴ)の両方を含みます。さらに(ⅰ)と(ⅳ)が入っていないので、クは誤りです。
  9. ×ケ  b1:(ⅱ)、b2:(ⅳ)、b3:(ⅴ)
    ケは(ⅱ)(ⅳ)(ⅴ)の組合せです。不適切な(ⅱ)と(ⅴ)の両方を含みます。さらに(ⅰ)と(ⅲ)が入っていないので、ケは誤りです。
  10. ×コ  b1:(ⅲ)、b2:(ⅳ)、b3:(ⅴ)
    コは(ⅲ)(ⅳ)(ⅴ)の組合せです。SNSと関係のないSPFの(ⅴ)を含みます。また、プロフィールで公式だと示す(ⅰ)が入っていないので、コは誤りです。

POINT

  • SNSでは本人でなくても同じ名前のアカウントを作れるため、公式アカウントは本物であることを示す手段が必要です。
  • プロフィールでの明示、提供業者による認証済み表示、自社Webサイトからのリンクは、どれも公式性を示す手段です。
  • 担当者の個人アカウントと相互フォローしても、外部の人は個人アカウントの持ち主を確かめられないため、公式性の証明になりません。
  • SPFは電子メールの送信ドメインを認証する仕組みで、SNSのなりすまし対策にはなりません。

※出典:平成31年度春期 情報セキュリティマネジメント試験 午後 問2 設問3(1)(一部改変)