マナビング情報セキュリティマネジメント

SNSの個人利用に関する指針で順守事項と推奨事項はどう分けるか

情報セキュリティマネジメント試験 平成31年度春期 午後 問17 / セキュリティ › 情報セキュリティ対策

過去問にチャレンジ

平成31年度春期 午後 問17

問問2の共通の文

企業における情報セキュリティ管理に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 X社は,機械製品及び産業用資材の輸入及び国内販売業務を行う従業員数1,000名の商社であり,機械営業部,資材営業部,総務部,情報システム部などがある。 X社は,数年前に同業他社で発生した情報セキュリティ事故を機に,情報セキュリティ管理に力を入れるようになり,JIS Q 27001に基づく情報セキュリティマネジメントシステム(以下,X社ISMSという)を構築し,ISMS認証を取得している。 X社ISMSでは,副社長である最高情報セキュリティ責任者(CISO)を委員長とする情報セキュリティ委員会を設置し,各部の部長が情報セキュリティ委員会の委員を務めている。また,各部の部長は自部の情報セキュリティリーダーを指名する。情報セキュリティ委員会はX社ISMSの年間活動計画を決定する。 X社ISMSの活動の実務は,各部の情報セキュリティリーダーから構成されるISMSワーキンググループ(以下,ISMS-WGという)が行っている。ISMS-WGのリーダーは,情報システム部のS課長である。ISMS-WGは,年間活動計画に基づき活動するほか,X社ISMS規程などの文書(以下,X社ISMS文書という)の改定案の検討を行う。 〔X社ISMSの年間活動計画〕 4月のある日,今年度初めてのISMS-WG会合が開催され,その席上で,表1に示すX社ISMSの年間活動計画が提示された。また,6月に実施される情報資産目録の見直しについてS課長から説明があった。X社ISMSでは各部において情報資産の名称,管理責任者,重要度,保管場所,保管期間を記した情報資産目録を作成し,毎年見直すことになっている。しかし,毎年見直し後に幾つかの記載の過不足が見つかっていることから,見直し後の記載に過不足がないことをよく確認するよう,改めてS課長がISMS-WGのメンバーに対して注意を促した。

表1 X社ISMSの年間活動計画(抜粋)、下線①・注1

〔販路拡大のための施策〕 最近になって,主な取引先である海外のY社が,新製品として個人向けの3Dプリンタ(以下,3DPという)を開発した。これまでX社は個人向けには製品を販売していなかったが,機械営業部では3DPの個人向け販売を販路拡大の機会と捉え,そのための施策を検討した。その結果を表2に示す。

表2 販路拡大のための施策

機械営業部の情報セキュリティリーダーであるT課長は,これらの施策に係る情報セキュリティリスクアセスメントの実施とリスク対応が必要と考え,S課長に相談したところ,表3のようなアドバイスを受けた。

表3 S課長のアドバイス(抜粋)、下線②・空欄a

S課長のアドバイスを受け,T課長は個人向け通信販売については,案2を採用し,外部のオンラインショッピングサイトを利用するのがよいと考えた。利用するシステムの詳細が固まった後に改めて情報セキュリティリスクアセスメントを行い,ISMS-WGに確認してもらうことにした。 次に,S課長とT課長はSNSを利用した情報提供に起因するリスクについて検討することにした。S課長は,T課長に次のリスクを説明した。 リスク1 X社の従業員が,X社公式アカウントを用いてX社の信用及び評判を低下させるような投稿を行う。 リスク2 第三者がX社公式アカウントを装い,X社の信用及び評判を低下させるような投稿を行う。 リスク3 第三者がX社公式アカウントを乗っ取り,X社の信用及び評判を低下させるような投稿を行う。 S課長の説明を聞いたT課長は,機械営業部だけでこれらのリスクに対応することは困難と判断した。そこで,SNSを利用した情報提供に起因するリスクについては,全社的な対策を立案するようS課長に依頼した。 また,S課長は,業務外でのSNSの個人利用についても,次のようなリスクがあることをT課長に説明した。 リスク4 X社の従業員が,X社の信用及び評判を損なうような不用意な投稿を行う。 リスク5 X社の従業員が,その投稿から③X社及び従業員の情報を攻撃者に推測され,X社に対する標的型攻撃の手掛かりにされるような不用意な投稿を行う。 これらのリスクを踏まえ,T課長は,業務外でのSNSの個人利用についても,従業員向けに何らかの指針を示すのがよいのではないかとS課長に提言した。S課長は,SNSの利用に関するルールを立案し,ISMS-WGで検討することにした。 〔SNSの利用に関する情報セキュリティ対策〕 数日後,S課長はX社公式アカウントの運用に関する情報セキュリティ対策の案を作成した。その内容を表4に示す。

表4 公式アカウントの情報セキュリティ対策、空欄b1〜c3

また,S課長は,SNSの個人利用に関する指針を策定し,12月に実施する従業員向け情報セキュリティ教育の内容に含めることにした。SNSの個人利用を一律に禁止することは適切でないので,この指針では,法令及び雇用契約上の要求事項の観点から従業員が順守すべき事項と,SNSの利用に当たって従業員が実施することが推奨される事項に分けて記載することにした。その概要を表5に示す。

表5 個人アカウントの利用指針、空欄d1〜e3

X社公式アカウントの運用に関する情報セキュリティ対策及びSNSの個人利用に関する指針は,ISMS-WGでの検討を経て情報セキュリティ委員会において承認された。 〔オンラインショッピングサイトの利用〕 機械営業部は,大手通信販売業者であるZ社のオンラインショッピングサイト(以下,Zショップという)を利用して個人向けに3DP及びオプション品を販売することにした。Zショップでは,消費者向けサイト以外にも各出品者用にポータルサイトを提供している。 X社には,Z社からX社専用のポータルサイト(以下,X社ポータルという)へのアクセス権が付与され,X社ポータルを利用する業務担当者用アカウントを追加又は削除可能な管理者用アカウントが一つ設定された。この管理者用アカウントでは,X社ポータルの他の機能を利用する個々の業務担当者用アカウントの管理だけを行うことにした。X社ポータルで業務担当者用アカウントを追加すると,その業務担当者のメールアドレスに対して電子メールが送信され,初期パスワードの変更が促される。X社ポータルで利用可能な機能とその内容を表6に示す。

表6 ポータルサイトの機能と内容

機械営業部では,X社ポータルで表7に示すロールを新たに登録することにした。

表7 ロールと作業内容

アカウントにロールを設定された業務担当者は,自分の業務用PCでX社ポータルにアクセスし,利用権限を付与された機能を利用して作業を行う。 機械営業部では,表6及び表7を基に,各ロールに付与する利用権限を検討することにした。その案を表8に示す。

表8 ロールの利用権限、◎・○・×の注記・注1

X社ISMSでは,今回のように業務を大きく変更する場合は,情報セキュリティリスクアセスメントを実施し,リスク対応を行うことになっている。そこで,この案について,T課長がS課長に相談したところ,次の指摘を受けた。 指摘1 発送担当者ロールを割り当てられた業務担当者は業務で購入者情報を扱うので,その業務担当者の業務用PCに購入者情報が蓄積されるおそれがあり,対策が必要である。 指摘2 X社ポータル管理者ロールの利用権限が過大であり,不正が起こるおそれがある。X社ポータル管理者ロールの利用権限を分割すべきである。 これらの指摘を受け,T課長は,指摘1については,発送担当者ロールを割り当てられた業務担当者に対して業務用PCに蓄積された購入者情報の利用後の削除を徹底させるとともに,購入者情報が蓄積されていないことを上長に定期的に点検させることにした。また,指摘2については,表8を見直してX社ポータル管理者ロールの利用はやめるとともに,アカウント管理を含むX社ポータルの各機能の利用状況のモニタリングを行うために,新たなロールを追加することにした。追加する新たなロールとそのロールに付与する利用権限の案を,表9に示す。

表9 新ロールの利用権限、空欄f1・f2・g1・g2

これらの案はISMS-WGで検討され,情報セキュリティ委員会の承認を得て,Zショップで3DPの販売が開始されることになった。 その後,Zショップからの新製品の販売は順調に進んでいる。

設問3〔SNSの利用に関する情報セキュリティ対策〕について,(1)~(4)に答えよ。 (3) 表5中の[d1]~[d3]に入れる,次の(ⅰ)~(ⅴ)の組合せはどれか。dに関する解答群のうち,最も適切なものを選べ。 (ⅰ) 業務上の守秘義務に反する投稿を行わない。 (ⅱ) 業務用PCではSNSの個人利用を行わない。 (ⅲ) 自分の投稿はX社の公式見解である旨をSNSのプロフィールに明示する。 (ⅳ) 投稿に当たっては,著作権,肖像権などの他人の権利の侵害に注意する。 (ⅴ) 取引先の従業員とはSNS上での私的な交流は行わない。

  1. ア

    d1:(ⅰ)、d2:(ⅱ)、d3:(ⅲ)

  2. イ

    d1:(ⅰ)、d2:(ⅱ)、d3:(ⅳ)

  3. ウ

    d1:(ⅰ)、d2:(ⅱ)、d3:(ⅴ)

  4. エ

    d1:(ⅰ)、d2:(ⅲ)、d3:(ⅳ)

  5. オ

    d1:(ⅰ)、d2:(ⅲ)、d3:(ⅴ)

  6. カ

    d1:(ⅰ)、d2:(ⅳ)、d3:(ⅴ)

  7. キ

    d1:(ⅱ)、d2:(ⅲ)、d3:(ⅳ)

  8. ク

    d1:(ⅱ)、d2:(ⅲ)、d3:(ⅴ)

  9. ケ

    d1:(ⅱ)、d2:(ⅳ)、d3:(ⅴ)

  10. コ

    d1:(ⅲ)、d2:(ⅳ)、d3:(ⅴ)

会話形式の解説

講師講師
今回は、X社がSNSの個人利用について作った指針の問題です。表5の「順守すべき事項」の空欄3つに入る項目を、5つの候補から選びます。まず、順守事項が何を根拠に決まるかを問題文で確かめましょう。
受験者受験者
問題文には、順守事項は「法令及び雇用契約上の要求事項の観点から」決めると書いてあります。一方で、推奨される事項は別の欄に分けるのですね。
講師講師
そのとおりです。つまり判断の基準は「会社が従業員に守らせる根拠があるか」です。根拠がなければ、望ましい行動でも推奨事項の側に回ります。この基準で候補を1つずつ見ていきます。
受験者受験者
(ⅰ)の「業務上の守秘義務に反する投稿を行わない」は、仕事で知った秘密を漏らさないということなので、雇用契約上の義務になりそうです。
講師講師
はい。守秘義務とは、業務で知った秘密を外部に漏らさない義務のことで、雇用契約上従業員に求められます。なので(ⅰ)は順守事項です。(ⅰ)を含まない組合せは、それだけで誤りになります。
受験者受験者
(ⅱ)の「業務用PCではSNSの個人利用を行わない」はどうでしょうか。私的な使い方まで会社が決めてよいのか、少し迷います。
講師講師
表3のS課長のアドバイスを見てください。「X社ISMSにおいては、業務用PCでのSNSの利用が禁止されている」とあります。業務用PCは会社の資産で、社内規程で既に禁止されているので、私的な利用もしないよう守らせる順守事項です。
受験者受験者
(ⅳ)の「著作権、肖像権などの他人の権利の侵害に注意する」は、法律に関係するので順守事項でしょうか。
講師講師
そう判断できます。著作権や肖像権を侵害する投稿は法令違反になり得ます。法令が根拠になるので、(ⅳ)は順守事項に入ります。
受験者受験者
(ⅲ)の「自分の投稿はX社の公式見解である旨をプロフィールに明示する」は、立場をはっきりさせる点では良さそうに見えます。
講師講師
内容をよく読むと逆向きです。個人の投稿を会社の公式見解だと表示すると、個人の意見が会社の見解と誤認されてしまいます。そもそも指針に載せるのが不適切なので、順守事項にも推奨事項にも入りません。
受験者受験者
(ⅴ)の「取引先の従業員とはSNS上での私的な交流は行わない」は、トラブル防止になりそうですが、根拠はありますか。
講師講師
私的な交流を禁じる法令や雇用契約上の根拠はありません。そのため、禁止する順守事項にはできません。社会人として良識の範囲で交流するよう、推奨事項として示すことはできます。
受験者受験者
整理すると、順守事項は守秘義務の(ⅰ)、社内規程で禁止されている業務用PCでの利用の(ⅱ)、法令が根拠の(ⅳ)の3つです。なので(ⅰ)(ⅱ)(ⅳ)の組合せのイが正解ですね。
講師講師
正解です。ほかの選択肢は、不適切な(ⅲ)か根拠のない(ⅴ)を含み、さらに必要な(ⅰ)(ⅱ)(ⅳ)のどれかを欠いています。各項目について「守らせる根拠は何か」を確かめれば、迷わずに絞り込めます。

まとめ

SNSの個人利用に関する指針のうち、従業員が「順守すべき事項」に入る3項目を選ぶ問題です。問題文によると、順守事項は法令と雇用契約上の要求事項から決まるので、会社が守らせる根拠があるかで判断します。守秘義務の(ⅰ)、社内規程で業務用PCでのSNS利用が禁止されている(ⅱ)、著作権・肖像権などの法令が根拠の(ⅳ)が順守事項で、正解はイです。個人の投稿を公式見解と表示する(ⅲ)は誤認を招くので不適切です。取引先従業員との私的交流を禁じる(ⅴ)は根拠がなく、示すとしても推奨事項になります。

解答・解説

正解はイです

この問題のテーマ

SNSの個人利用に関する指針(表5)のうち、従業員が「順守すべき事項」d1〜d3に入る3つを選ぶ問題です。

解き方の考え方

まず問題文で、順守事項は「法令及び雇用契約上の要求事項」から決まることを確かめます。次に(ⅰ)〜(ⅴ)を1つずつ、会社が守らせる根拠があるかで判定します。(ⅰ)は守秘義務、(ⅱ)は表3にある「業務用PCでのSNS利用禁止」、(ⅳ)は著作権などの法令が根拠になるので、順守事項です。一方、(ⅲ)は個人の投稿を会社の公式見解と誤認させるので不適切です。(ⅴ)は私的な交流を禁じる法的根拠がありません。したがって、(ⅰ)(ⅱ)(ⅳ)の組合せを探します。

選択肢ごとの解説

  1. ×ア  d1:(ⅰ)、d2:(ⅱ)、d3:(ⅲ)
    アは(ⅲ)の「投稿は公式見解と明示」を含みます。(ⅲ)は個人の意見を会社の見解と誤認させるので誤りです。
  2. ○イ  d1:(ⅰ)、d2:(ⅱ)、d3:(ⅳ)
    イは守秘義務の(ⅰ)、業務用PCでの私的利用禁止の(ⅱ)、他人の権利侵害に注意する(ⅳ)の組合せです。どれも雇用契約や法令で守らせる根拠があります。したがって、イが正解です。
  3. ×ウ  d1:(ⅰ)、d2:(ⅱ)、d3:(ⅴ)
    ウは(ⅴ)の「取引先従業員との私的交流禁止」を含みます。私的交流を禁じる法的根拠はないので誤りです。
  4. ×エ  d1:(ⅰ)、d2:(ⅲ)、d3:(ⅳ)
    エは不適切な(ⅲ)を含み、社内規程で禁止されている(ⅱ)を欠くので誤りです。
  5. ×オ  d1:(ⅰ)、d2:(ⅲ)、d3:(ⅴ)
    オは(ⅲ)と(ⅴ)を含み、(ⅱ)と(ⅳ)を欠くので誤りです。
  6. ×カ  d1:(ⅰ)、d2:(ⅳ)、d3:(ⅴ)
    カは根拠のない(ⅴ)を含み、(ⅱ)を欠くので誤りです。
  7. ×キ  d1:(ⅱ)、d2:(ⅲ)、d3:(ⅳ)
    キは(ⅲ)を含み、守秘義務の(ⅰ)を欠くので誤りです。
  8. ×ク  d1:(ⅱ)、d2:(ⅲ)、d3:(ⅴ)
    クは(ⅲ)と(ⅴ)を含み、(ⅰ)と(ⅳ)を欠くので誤りです。
  9. ×ケ  d1:(ⅱ)、d2:(ⅳ)、d3:(ⅴ)
    ケは(ⅴ)を含み、(ⅰ)を欠くので誤りです。
  10. ×コ  d1:(ⅲ)、d2:(ⅳ)、d3:(ⅴ)
    コは(ⅲ)と(ⅴ)を含み、(ⅰ)と(ⅱ)を欠くので誤りです。

補足

取引先従業員との交流は禁止できません。そのため、社会人として良識の範囲で行うよう推奨事項として示すことはできます。

POINT

  • 順守事項には、法令や雇用契約・社内規程を根拠に従業員へ求められる事項が入ります。
  • 業務上の秘密を投稿しないことは、守秘義務として従業員に求められます。
  • X社ISMSでは業務用PCでのSNS利用が禁止されており、私的利用もしないよう守らせます。
  • 著作権や肖像権を侵害する投稿は法令違反になり得るので、順守事項になります。
  • 個人の投稿を会社の公式見解と表示すると、個人の意見が会社の見解と誤認されます。

※出典:平成31年度春期 情報セキュリティマネジメント試験 午後 問2 設問3(3)(一部改変)