マナビング情報セキュリティマネジメント

SNSの個人利用指針、推奨される行動の見分け方

情報セキュリティマネジメント試験 平成31年度春期 午後 問18 / セキュリティ › 情報セキュリティ対策

過去問にチャレンジ

平成31年度春期 午後 問18

問問2の共通の文

企業における情報セキュリティ管理に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 X社は,機械製品及び産業用資材の輸入及び国内販売業務を行う従業員数1,000名の商社であり,機械営業部,資材営業部,総務部,情報システム部などがある。 X社は,数年前に同業他社で発生した情報セキュリティ事故を機に,情報セキュリティ管理に力を入れるようになり,JIS Q 27001に基づく情報セキュリティマネジメントシステム(以下,X社ISMSという)を構築し,ISMS認証を取得している。 X社ISMSでは,副社長である最高情報セキュリティ責任者(CISO)を委員長とする情報セキュリティ委員会を設置し,各部の部長が情報セキュリティ委員会の委員を務めている。また,各部の部長は自部の情報セキュリティリーダーを指名する。情報セキュリティ委員会はX社ISMSの年間活動計画を決定する。 X社ISMSの活動の実務は,各部の情報セキュリティリーダーから構成されるISMSワーキンググループ(以下,ISMS-WGという)が行っている。ISMS-WGのリーダーは,情報システム部のS課長である。ISMS-WGは,年間活動計画に基づき活動するほか,X社ISMS規程などの文書(以下,X社ISMS文書という)の改定案の検討を行う。 〔X社ISMSの年間活動計画〕 4月のある日,今年度初めてのISMS-WG会合が開催され,その席上で,表1に示すX社ISMSの年間活動計画が提示された。また,6月に実施される情報資産目録の見直しについてS課長から説明があった。X社ISMSでは各部において情報資産の名称,管理責任者,重要度,保管場所,保管期間を記した情報資産目録を作成し,毎年見直すことになっている。しかし,毎年見直し後に幾つかの記載の過不足が見つかっていることから,見直し後の記載に過不足がないことをよく確認するよう,改めてS課長がISMS-WGのメンバーに対して注意を促した。

表1 X社ISMSの年間活動計画(抜粋)、下線①・注1

〔販路拡大のための施策〕 最近になって,主な取引先である海外のY社が,新製品として個人向けの3Dプリンタ(以下,3DPという)を開発した。これまでX社は個人向けには製品を販売していなかったが,機械営業部では3DPの個人向け販売を販路拡大の機会と捉え,そのための施策を検討した。その結果を表2に示す。

表2 販路拡大のための施策

機械営業部の情報セキュリティリーダーであるT課長は,これらの施策に係る情報セキュリティリスクアセスメントの実施とリスク対応が必要と考え,S課長に相談したところ,表3のようなアドバイスを受けた。

表3 S課長のアドバイス(抜粋)、下線②・空欄a

S課長のアドバイスを受け,T課長は個人向け通信販売については,案2を採用し,外部のオンラインショッピングサイトを利用するのがよいと考えた。利用するシステムの詳細が固まった後に改めて情報セキュリティリスクアセスメントを行い,ISMS-WGに確認してもらうことにした。 次に,S課長とT課長はSNSを利用した情報提供に起因するリスクについて検討することにした。S課長は,T課長に次のリスクを説明した。 リスク1 X社の従業員が,X社公式アカウントを用いてX社の信用及び評判を低下させるような投稿を行う。 リスク2 第三者がX社公式アカウントを装い,X社の信用及び評判を低下させるような投稿を行う。 リスク3 第三者がX社公式アカウントを乗っ取り,X社の信用及び評判を低下させるような投稿を行う。 S課長の説明を聞いたT課長は,機械営業部だけでこれらのリスクに対応することは困難と判断した。そこで,SNSを利用した情報提供に起因するリスクについては,全社的な対策を立案するようS課長に依頼した。 また,S課長は,業務外でのSNSの個人利用についても,次のようなリスクがあることをT課長に説明した。 リスク4 X社の従業員が,X社の信用及び評判を損なうような不用意な投稿を行う。 リスク5 X社の従業員が,その投稿から③X社及び従業員の情報を攻撃者に推測され,X社に対する標的型攻撃の手掛かりにされるような不用意な投稿を行う。 これらのリスクを踏まえ,T課長は,業務外でのSNSの個人利用についても,従業員向けに何らかの指針を示すのがよいのではないかとS課長に提言した。S課長は,SNSの利用に関するルールを立案し,ISMS-WGで検討することにした。 〔SNSの利用に関する情報セキュリティ対策〕 数日後,S課長はX社公式アカウントの運用に関する情報セキュリティ対策の案を作成した。その内容を表4に示す。

表4 公式アカウントの情報セキュリティ対策、空欄b1〜c3

また,S課長は,SNSの個人利用に関する指針を策定し,12月に実施する従業員向け情報セキュリティ教育の内容に含めることにした。SNSの個人利用を一律に禁止することは適切でないので,この指針では,法令及び雇用契約上の要求事項の観点から従業員が順守すべき事項と,SNSの利用に当たって従業員が実施することが推奨される事項に分けて記載することにした。その概要を表5に示す。

表5 個人アカウントの利用指針、空欄d1〜e3

X社公式アカウントの運用に関する情報セキュリティ対策及びSNSの個人利用に関する指針は,ISMS-WGでの検討を経て情報セキュリティ委員会において承認された。 〔オンラインショッピングサイトの利用〕 機械営業部は,大手通信販売業者であるZ社のオンラインショッピングサイト(以下,Zショップという)を利用して個人向けに3DP及びオプション品を販売することにした。Zショップでは,消費者向けサイト以外にも各出品者用にポータルサイトを提供している。 X社には,Z社からX社専用のポータルサイト(以下,X社ポータルという)へのアクセス権が付与され,X社ポータルを利用する業務担当者用アカウントを追加又は削除可能な管理者用アカウントが一つ設定された。この管理者用アカウントでは,X社ポータルの他の機能を利用する個々の業務担当者用アカウントの管理だけを行うことにした。X社ポータルで業務担当者用アカウントを追加すると,その業務担当者のメールアドレスに対して電子メールが送信され,初期パスワードの変更が促される。X社ポータルで利用可能な機能とその内容を表6に示す。

表6 ポータルサイトの機能と内容

機械営業部では,X社ポータルで表7に示すロールを新たに登録することにした。

表7 ロールと作業内容

アカウントにロールを設定された業務担当者は,自分の業務用PCでX社ポータルにアクセスし,利用権限を付与された機能を利用して作業を行う。 機械営業部では,表6及び表7を基に,各ロールに付与する利用権限を検討することにした。その案を表8に示す。

表8 ロールの利用権限、◎・○・×の注記・注1

X社ISMSでは,今回のように業務を大きく変更する場合は,情報セキュリティリスクアセスメントを実施し,リスク対応を行うことになっている。そこで,この案について,T課長がS課長に相談したところ,次の指摘を受けた。 指摘1 発送担当者ロールを割り当てられた業務担当者は業務で購入者情報を扱うので,その業務担当者の業務用PCに購入者情報が蓄積されるおそれがあり,対策が必要である。 指摘2 X社ポータル管理者ロールの利用権限が過大であり,不正が起こるおそれがある。X社ポータル管理者ロールの利用権限を分割すべきである。 これらの指摘を受け,T課長は,指摘1については,発送担当者ロールを割り当てられた業務担当者に対して業務用PCに蓄積された購入者情報の利用後の削除を徹底させるとともに,購入者情報が蓄積されていないことを上長に定期的に点検させることにした。また,指摘2については,表8を見直してX社ポータル管理者ロールの利用はやめるとともに,アカウント管理を含むX社ポータルの各機能の利用状況のモニタリングを行うために,新たなロールを追加することにした。追加する新たなロールとそのロールに付与する利用権限の案を,表9に示す。

表9 新ロールの利用権限、空欄f1・f2・g1・g2

これらの案はISMS-WGで検討され,情報セキュリティ委員会の承認を得て,Zショップで3DPの販売が開始されることになった。 その後,Zショップからの新製品の販売は順調に進んでいる。

設問3〔SNSの利用に関する情報セキュリティ対策〕について,(1)~(4)に答えよ。 (4) 表5中の[e1]~[e3]に入れる,次の(ⅰ)~(ⅴ)の組合せはどれか。eに関する解答群のうち,最も適切なものを選べ。 (ⅰ) SNS上で投稿を削除しても,その投稿が拡散されてしまう可能性があることに留意して投稿する。 (ⅱ) SNSを利用する個人所有の端末について,適切な物理的及び技術的対策を実施する。 (ⅲ) 投稿にURLを含めるときは,URL短縮サービスを利用する。 (ⅳ) 面識のなかった人からSNSを通じて"友達"関係の形成など交流の申出を受けた場合には,積極的に受諾し,人間関係の拡大に努める。 (ⅴ) 利用するSNSごとに,発信する情報の公開範囲を適切に設定する。

  1. ア

    e1:(ⅰ)、e2:(ⅱ)、e3:(ⅲ)

  2. イ

    e1:(ⅰ)、e2:(ⅱ)、e3:(ⅳ)

  3. ウ

    e1:(ⅰ)、e2:(ⅱ)、e3:(ⅴ)

  4. エ

    e1:(ⅰ)、e2:(ⅲ)、e3:(ⅳ)

  5. オ

    e1:(ⅰ)、e2:(ⅲ)、e3:(ⅴ)

  6. カ

    e1:(ⅰ)、e2:(ⅳ)、e3:(ⅴ)

  7. キ

    e1:(ⅱ)、e2:(ⅲ)、e3:(ⅳ)

  8. ク

    e1:(ⅱ)、e2:(ⅲ)、e3:(ⅴ)

  9. ケ

    e1:(ⅱ)、e2:(ⅳ)、e3:(ⅴ)

  10. コ

    e1:(ⅲ)、e2:(ⅳ)、e3:(ⅴ)

会話形式の解説

講師講師
この問題では、X社の「SNSの個人利用に関する指針」を扱います。表5の欄のうち、従業員に推奨される事項の3つの空欄に入る項目を、5つの候補から選びます。
受験者受験者
表5には「順守すべき事項」と「推奨される事項」の2つの欄がありますね。空欄のe1〜e3は、推奨される事項のほうに入っています。
講師講師
そのとおりです。ですから、それぞれの候補が情報漏えいやアカウントの乗っ取りを防ぐ行動になっているかどうかで判断します。まず、投稿を削除しても拡散し得ると留意する、という候補はどう見ますか。
受験者受験者
消せば終わりではない、という注意ですよね。不用意な投稿を防ぐことにつながるので、推奨事項に入りそうです。
講師講師
はい。SNSの投稿は削除しても、ほかの人の保存や転載によって残り、広がる場合があります。それを意識して投稿するのは、リスクを下げる行動です。
受験者受験者
個人所有の端末に物理的・技術的な対策をする、という候補はどうでしょう。私物の端末なので、会社の指針で触れるのは少し意外でした。
講師講師
個人の端末でSNSを使っていても、端末が乗っ取られれば、アカウントの乗っ取りやなりすましにつながります。ですから、私物の端末でも物理的・技術的な対策が必要で、これも推奨事項にふさわしい内容です。
受験者受験者
URL短縮サービスを使う、という候補で迷いました。長いURLが短くなれば、見やすくて親切に思えます。
講師講師
短縮URLは、長いURLを短い文字列に置き換えたものです。リンクの本当の行き先が一見して分からないので、フィッシングなどに悪用されやすい面があります。情報を守るための推奨事項にはなりません。
受験者受験者
知らない人からの友達申請を積極的に受けて、人間関係を広げる、という候補も危なそうですね。
講師講師
はい。申出を確かめずに受けると、自分の投稿や個人情報を見られる相手が広がります。交流の申出は、相手が信頼できると確かめてから受けるべきです。
受験者受験者
残りは、SNSごとに公開範囲を適切に設定する、という候補です。これは安全側の行動だと思います。
講師講師
そのとおりです。公開範囲はSNSごとに設定するもので、設定に不備があると、情報が意図せず公開されてしまいます。
受験者受験者
そうすると、適切なのは「削除しても拡散に留意」「個人端末の対策」「公開範囲の設定」の3つですね。選択肢はどれも番号の小さい順に並んでいるので、この3つだけでできた組合せはウです。
講師講師
正解です。ほかの選択肢は、短縮URLか友達申請の受諾を含んでいて、その分、必要な項目が欠けています。たとえば個人端末の対策が抜けると、乗っ取りへの備えがなくなります。
受験者受験者
「便利そう」「交流が広がる」という見た目ではなく、リスクを下げる行動かどうかで見分ければよいと分かりました。

まとめ

X社の「SNSの個人利用に関する指針」で、「推奨される事項」の空欄3つに入る項目を選ぶ問題です。投稿は削除しても保存や転載によって拡散し得ることに留意すること、個人所有の端末にも乗っ取り対策として物理的・技術的対策を行うこと、SNSごとに公開範囲を適切に設定することの3つが、リスクを下げる行動として当てはまります。URL短縮サービスの利用はリンクの行き先を分かりにくくし、面識のない人からの交流の申出を積極的に受けると情報を見られる相手が広がるため、どちらも不適切です。正解は、この3項目の組合せであるウです。

解答・解説

正解はウです

この問題のテーマ

X社の「SNSの個人利用に関する指針」(表5)のうち、「推奨される事項」の欄e1〜e3に入る3項目を、(ⅰ)〜(ⅴ)から選ぶ問題です。

解き方の考え方

まず表5を見て、e1〜e3が「実施することが推奨される事項」の欄であることを確かめます。次に、(ⅰ)〜(ⅴ)の一つ一つについて、情報漏えいやアカウント乗っ取りを防ぐ行動になっているかを判断します。(ⅰ)の削除後も拡散し得ることへの留意、(ⅱ)の個人端末の対策、(ⅴ)の公開範囲の設定は、いずれもリスクを下げる行動です。一方、(ⅲ)と(ⅳ)はかえってリスクを高めます。どの選択肢も番号の小さい順に並んでいるため、(ⅰ)(ⅱ)(ⅴ)の3つだけでできた組合せを探せば答えが決まります。

選択肢ごとの解説

  1. ×ア  e1:(ⅰ)、e2:(ⅱ)、e3:(ⅲ)
    アは、e3にURL短縮サービスの利用(ⅲ)を入れています。短縮URL(長いURLを短く置き換えたもの)は、リンクの本当の行き先が一見して分かりません。そのため、情報漏えいや不正アクセスを防ぐ推奨事項にはならず、アは誤りです。
  2. ×イ  e1:(ⅰ)、e2:(ⅱ)、e3:(ⅳ)
    イは、e3に面識のない人からの交流の申出を積極的に受ける(ⅳ)を入れています。申出を確かめずに受けると、自分の投稿や個人情報を見られる相手が広がります。したがって、(ⅳ)は推奨事項として不適切で、イは誤りです。
  3. ○ウ  e1:(ⅰ)、e2:(ⅱ)、e3:(ⅴ)
    ウは(ⅰ)(ⅱ)(ⅴ)の組合せです。投稿は削除しても、保存や転載によって残って広がる場合があります。また、個人の端末でも、乗っ取りやなりすましに備えた物理的・技術的対策が必要です。さらに、公開範囲の設定に不備があると、情報が意図せず公開されてしまいます。したがって、3項目とも推奨事項にふさわしく、ウが正解です。
  4. ×エ  e1:(ⅰ)、e2:(ⅲ)、e3:(ⅳ)
    エは、不適切な(ⅲ)と(ⅳ)の両方を含んでいます。その一方で、必要な(ⅱ)と(ⅴ)が欠けています。したがって、エは誤りです。
  5. ×オ  e1:(ⅰ)、e2:(ⅲ)、e3:(ⅴ)
    オは、行き先が分かりにくくなるURL短縮(ⅲ)を含んでいます。その代わりに、個人端末の対策(ⅱ)が抜けています。したがって、オは誤りです。
  6. ×カ  e1:(ⅰ)、e2:(ⅳ)、e3:(ⅴ)
    カは、未知の相手の申出を積極的に受ける(ⅳ)を含んでいます。交流の申出は、相手のアカウントが信頼できると確かめてから受けるべきです。また、カには(ⅱ)も欠けているため、誤りです。
  7. ×キ  e1:(ⅱ)、e2:(ⅲ)、e3:(ⅳ)
    キは、不適切な(ⅲ)と(ⅳ)を含んでいます。さらに、(ⅰ)と(ⅴ)が欠けています。したがって、キは誤りです。
  8. ×ク  e1:(ⅱ)、e2:(ⅲ)、e3:(ⅴ)
    クはURL短縮(ⅲ)を含んでいます。また、投稿が削除後も広がり得ることへの留意(ⅰ)が抜けています。したがって、クは誤りです。
  9. ×ケ  e1:(ⅱ)、e2:(ⅳ)、e3:(ⅴ)
    ケは、未知の相手の申出を積極的に受ける(ⅳ)を含んでいます。また、(ⅰ)が欠けています。したがって、ケは誤りです。
  10. ×コ  e1:(ⅲ)、e2:(ⅳ)、e3:(ⅴ)
    コは、不適切な(ⅲ)と(ⅳ)を含んでいます。さらに、(ⅰ)と(ⅱ)が欠けています。したがって、コは誤りです。

POINT

  • SNSの投稿は削除しても、保存や転載によって残り、広がる場合があります。
  • 個人所有の端末でSNSを使う場合も、乗っ取りやなりすましに備えた物理的・技術的対策が必要です。
  • 公開範囲はSNSごとに設定します。設定に不備があると、情報が意図せず公開されます。
  • 短縮URLはリンクの行き先が分かりにくいため、安全のための推奨事項にはなりません。
  • 面識のない相手からの交流の申出は、相手が信頼できると確かめてから受けます。

※出典:平成31年度春期 情報セキュリティマネジメント試験 午後 問2 設問3(4)(一部改変)