マナビング情報セキュリティマネジメント

CVSS v3の3項目で最も攻撃しやすい値を見分ける

情報セキュリティマネジメント試験 平成31年度春期 午後 問26 / セキュリティ › 情報セキュリティ対策

過去問にチャレンジ

平成31年度春期 午後 問26

問問3の共通の文

情報セキュリティの自己点検に関する次の記述を読んで,設問1~6に答えよ。 マンション管理会社Q社は,マンションの管理組合から委託を受けて管理業務を行っており,契約している管理組合数は3,000組合である。東京の本社には,経営企画部,営業統括部,人事総務部,経理部,情報システム部,監査部などの管理部門があり,東日本を中心に30の支店がある。従業員数は,マンションの管理人(以下,管理員という)3,300名を含めて3,800名である。管理業務の内容は,管理組合の収支予算書及び決算書の素案の作成,収支報告,出納,マンション修繕計画の企画及び実施の調整,理事会及び総会の支援,清掃,建物設備管理,緊急対応,管理員による各種受付・点検・立会い・報告連絡などである。 Q社は3年前に全社でISMS認証を取得しており,最高情報セキュリティ責任者(CISO)を委員長とする情報セキュリティ委員会を設置し,JIS Q 27001に沿った情報セキュリティポリシー及び情報セキュリティ関連規程を整備している。CISOは情報システム担当常務が務め,情報セキュリティ委員会の事務局は情報システム部が担当している。また,本社各部の部長及び各支店長は,情報セキュリティ委員会の委員,及び自部署における情報セキュリティ責任者を務め,自部署の情報セキュリティを確保し,維持,改善する役割を担っている。各情報セキュリティ責任者は,自部署の情報セキュリティに関わる実務を担当する情報セキュリティリーダーを選任している。 U支店には,支店長,主任2名,管理組合との窓口を務めるフロント担当者10名が勤務している。U支店の情報セキュリティ責任者はB支店長,情報セキュリティリーダーは第1グループのA主任である。U支店に勤務する従業員には,一人1台のノートPC(以下,NPCという)が貸与されている。NPCにはディジタル証明書をインストールし,Q社のネットワークに接続する際に端末認証を行っている。U支店では,Q社の文書管理規程に従い,顧客情報などの重要な情報が含まれる電子データは,U支店の共有ファイルサーバの所定のフォルダに保管する運用を行っている。U支店の共有ファイルサーバは,1日1回テープにバックアップを取得し,1週間分のテープを世代管理している。 U支店が契約している管理組合数は80組合であり,フロント担当者1名当たり5~10の管理組合を担当している。U支店が担当する管理組合のマンションはそれぞれ,管理事務室が1か所設置されており,管理員が1~2名勤務している。管理事務室には,管理員以外に,Q社従業員,マンション居住者が立入ることがある。多くのマンションでは,管理事務室の入室にマンションごとの暗証番号が必要である。暗証番号はおおむね2年ごとに変更される。管理事務室には,管理組合の許可を受けた上で,管理員とU支店の連絡用に,LTE通信機能付きNPCを1台設置し,インターネットVPN経由でQ社のネットワークと接続している。①管理事務室に複数の管理員が勤務する場合には,管理員間でNPC,利用者ID,パスワード,メールアドレスを共用している。 〔自己点検の規程及びチェック項目〕 Q社では,自己点検規程及び内部監査規程を,表1のとおり定めている。

表1 自己点検規程及び内部監査規程、空欄a1〜a3・出典注1

また,U支店では,チェック項目を図1のとおり設定している。

図1 U支店のチェック項目1〜9

〔アプリの更新漏れ〕 A主任は情報処理推進機構(IPA)の情報セキュリティサイトを見た際に,PDF閲覧ソフトにおいて任意のコードが実行されるという深刻な脆弱性に対する注意喚起が,2週間前から掲載されていることに気付いた。そこで,A主任が第1グループメンバーのNPCについて,PDF閲覧ソフトのバージョンが最新かを確認したところ,最新ではないNPCが2台あった。1週間前に実施した自己点検では,チェック項目4に全員が"はい"と回答していた。A主任が2台のNPCの利用者に確認したところ,他のアプリの更新は確認していたが,PDF閲覧ソフトの確認が漏れていたことが判明した。 A主任が,IPAの情報セキュリティサイトの参考情報から,脆弱性対策情報データベースを確認したところ,図2のとおり記載されていた。

図2 CVSS v3の脆弱性評価結果、空欄b〜d3・注1/2

次は,図2についての情報システム部のR課長とA主任の会話である。 R課長: CVSSv3の[b]評価基準は,脆弱性そのものの特性を評価する基準であり,評価には,攻撃の容易性及び情報システムに求められる三つのセキュリティ特性である,機密性,完全性,可用性に対する影響といった基準を用います。[b]評価基準は,時間の経過や利用環境の差異によって変化せず,脆弱性そのものを評価する基準です。図2を見ると,このPDF閲覧ソフトの脆弱性の深刻度は[c]であり,"攻撃条件の複雑さ","攻撃に必要な特権レベル","利用者の関与"の全てにおいて,攻撃が成功するおそれが最も高い値を示しています。したがって,PDF閲覧ソフトは早急に更新が必要です。 A主任: アプリのバージョンが最新かを,簡単にチェックする方法はありませんか。 R課長: 方法は二つあります。一つ目は,"MyJVNバージョンチェッカ"というIPAから無償提供されているソフトウェアを使う方法です。各利用者がNPCにインストールされているアプリのバージョンが最新かを簡単にチェックすることができます。二つ目は[e]を導入する方法です。情報システム部で,各NPCのアプリのバージョンが最新かを管理し,一括してチェックすることが可能ですが,導入には費用が掛かります。実は,"MyJVNバージョンチェッカ"を全社で利用する準備のために,試用部署を探していました。しかるべき手続を経て,情報セキュリティ委員会の承認を受けるので,U支店で試用してもらえませんか。 A主任は,B支店長の許可を得て"MyJVNバージョンチェッカ"の試用を開始し,"MyJVNバージョンチェッカ"がフロント担当者や管理員のITリテラシーでも問題なく使用できることを確認し,B支店長とR課長に報告した。 報告を受けたB支店長は,"MyJVNバージョンチェッカ"を全社に先駆けてU支店で継続して試用することについて,情報セキュリティ委員会の承認を受けた。 〔個人所有スマートフォンの業務利用〕 最近,フロント担当者のKさんが仕事中に度々個人所有スマートフォン(以下,スマートフォンをスマホという)を使っているので,A主任がKさんに尋ねたところ,個人所有スマホを業務に使うことがあるとのことであった。 Kさんは,②スマホの個人利用者向けチャットアプリ(以下,Mアプリという)を利用して,Kさんが担当するPマンションの管理組合(以下,P組合という)の理事からの問合せに回答したり,業務に関する情報を送信したりしているとのことであった。P組合の理事長から,次の理由で,Mアプリの使用を求められて,やむを得ず従ったとのことであった。 ・P組合では,理事同士の情報共有にMアプリを利用している。 ・問合せに対するKさんの返信がいつも遅く,おおむね3営業日以上掛かっている。Mアプリを利用すれば,Kさんがいつメッセージを読んだかが把握できる。 なお,Q社は,③従業員が個人所有スマホを業務に利用することを,会社として許可していない。 A主任は,Kさんが個人所有スマホを業務利用していること,及びスマホ用アプリの業務利用によって問題が発生することについて,B支店長に報告した。 〔チェック項目の見直し〕 これまでの報告を受けて,B支店長は,図1のチェック項目の見直しが必要であると判断し,A主任に対して見直しを指示した。④A主任が示した見直し案をB支店長が承認し,見直されたチェック項目が翌月から使用されることになった。 〔Mアプリの調査〕 Kさんは,P組合にMアプリが使用できなくなったことを連絡したが,P組合は,Mアプリの利用を強く要望するとのことであった。相談を受けたA主任が,Mアプリの機能と特徴を調べたところ,図3のとおりであった。

図3 Mアプリの機能及び特徴(抜粋)

A主任は,図3から,⑤Mアプリを業務連絡に利用することには,幾つかのリスクがあると考えた。更に調査したところ,Mアプリに業務用の機能を追加したアプリ(以下,BMアプリという)が存在することが分かった。BMアプリで追加された機能は,図4のとおりである。

図4 BMアプリで追加された機能(抜粋)

A主任は,図4から,BMアプリには適切なセキュリティ機能が備わっていると考え,情報システム部に,個人所有スマホ及びBMアプリの業務利用について検討を依頼した。 情報システム部は,個人所有スマホの業務利用に対する情報セキュリティリスクアセスメント及び⑥BMアプリの利用に対する情報セキュリティリスクアセスメントを実施した。さらに,その結果を情報セキュリティ委員会に報告し,許可を受けた上でBMアプリを試験導入し,問題がないことを確認した。 P組合から強い要望を受けてから半年後,情報セキュリティ委員会は,必要な情報セキュリティ関連規程を整備し,チェック項目を再度見直した上で,全社的に個人所有スマホの業務利用をBMアプリなど会社が認めたスマホ用アプリに限定して許可した。これによって,Q社はP組合の要望に応えることができた。また,BMアプリの利用を広げたことによって,Q社と顧客との間の連携が強化された。

設問3〔アプリの更新漏れ〕について,(1)~(4)に答えよ。 (3) 図2中の[d1]~[d3]に入れる字句の適切な組合せを,dに関する解答群の中から選べ。

  1. ア

    d1:高、d2:低、d3:不要

  2. イ

    d1:高、d2:低、d3:要

  3. ウ

    d1:高、d2:不要、d3:不要

  4. エ

    d1:高、d2:不要、d3:要

  5. オ

    d1:低、d2:高、d3:不要

  6. カ

    d1:低、d2:高、d3:要

  7. キ

    d1:低、d2:低、d3:不要

  8. ク

    d1:低、d2:低、d3:要

  9. ケ

    d1:低、d2:不要、d3:不要

  10. コ

    d1:低、d2:不要、d3:要

会話形式の解説

講師講師
PDF閲覧ソフトの脆弱性評価結果である図2で、空欄d1~d3に入る値を選ぶ問題です。CVSS v3は、脆弱性の深刻度を数値で表す仕組みです。まず、本文にあるR課長の発言に手がかりがあります。
受験者受験者
課長は、3つの項目が全部「攻撃が成功するおそれが最も高い値」だと言っていました。深刻度も9.8と高いので、全部「高」を選びたくなります。
講師講師
そこが落とし穴です。「高」が危険側とは限りません。それぞれの項目で、攻撃者にとって一番都合のよい値は何かを考えます。まず攻撃条件の複雑さからです。
受験者受験者
複雑さが高いと、攻撃者は込み入った条件をそろえる必要があります。ということは、攻撃しやすいのは複雑さが「低」のほうですか。
講師講師
そのとおりです。条件が少ないほど攻撃は成立しやすいので、d1は「低」です。これで、複雑さを「高」とするア・イ・ウ・エは外れます。
受験者受験者
次は攻撃に必要な特権レベルです。権限が低くても攻撃できるなら危険なので、「低」でしょうか。
講師講師
ここが一番紛らわしいところです。特権レベルは「不要・低・高」の3段階です。「低」は、一般利用者程度の権限が必要という意味です。
受験者受験者
権限が何もなくても攻撃できる「不要」のほうが、もっと攻撃しやすいということですね。
講師講師
はい。d2は「不要」です。特権を「低」とするキ・クは、ここで誤りになります。特権を「高」とするオ・カは、管理者のような強い権限が必要なので、なおさら当てはまりません。
受験者受験者
最後の利用者の関与は「不要・要」の2段階です。利用者が何もしなくても攻撃が成立する「不要」が答えだと思います。
講師講師
正解です。関与が「要」だと、利用者がファイルを開くなどの操作をしないと攻撃は成立しません。そのため、複雑さと特権は正しくても、関与を「要」とするコは誤りです。
受験者受験者
まとめると、複雑さが低、特権が不要、関与が不要なので、ケになります。
講師講師
そうです。図2では攻撃元区分がネットワークで、機密性・完全性・可用性への影響もすべて高です。これに3項目の最も攻撃しやすい値が加わって、9.8という高い深刻度になっています。
受験者受験者
空欄bの基本評価基準は、時間の経過で変わるものでしたか。
講師講師
変わりません。基本評価基準は脆弱性そのものの特性を評価するので、時間の経過や利用環境の違いでは変化しません。課長の発言にもそう書かれています。

まとめ

CVSS v3の基本評価基準では、攻撃条件の複雑さは「低」、攻撃に必要な特権レベルは「不要」、利用者の関与は「不要」が、攻撃が最も成功しやすい値です。「高」が危険側とは限らず、特権レベルは不要・低・高の3段階で、「低」は一般利用者程度の権限が必要という意味になります。R課長の「全てにおいて攻撃が成功するおそれが最も高い値」という発言から、組合せは低・不要・不要のケが正解です。基本評価基準は脆弱性そのものの特性を評価するため、時間の経過や利用環境では変わりません。

解答・解説

正解はケです

この問題のテーマ

CVSS v3(共通脆弱性評価システム。脆弱性の深刻度を数値で表す仕組み)の基本評価基準のうち、攻撃条件の複雑さ・攻撃に必要な特権レベル・利用者の関与の値を問う問題です。

解き方の考え方

最初に、本文のR課長の発言を確かめます。課長は、三項目のすべてが「攻撃が成功するおそれが最も高い値」だと述べています。次に、各項目で攻撃が最も成立しやすい値を考えます。複雑さは条件が少ないほど、特権は要らないほど、利用者の操作は要らないほど攻撃しやすくなります。その3つの値の組合せを選択肢から探します。

選択肢ごとの解説

  1. ×ア  d1:高、d2:低、d3:不要
    アは複雑さを高、特権を低、関与を不要としています。複雑さが高だと、攻撃の成立には込み入った条件が要ります。そのため、最も攻撃しやすい値とはいえず誤りです。
  2. ×イ  d1:高、d2:低、d3:要
    イは複雑さが高、特権が低、関与が要です。三項目のどれも、最も攻撃しやすい値になっていません。したがって誤りです。
  3. ×ウ  d1:高、d2:不要、d3:不要
    ウは特権と関与を不要としていますが、複雑さが高です。複雑さが高では攻撃が成立しにくくなります。そのため誤りです。
  4. ×エ  d1:高、d2:不要、d3:要
    エは複雑さが高で、関与が要です。どちらも攻撃が成立しにくい側の値です。したがって誤りです。
  5. ×オ  d1:低、d2:高、d3:不要
    オは複雑さが低ですが、特権レベルが高です。特権が高だと、管理者のような強い権限がないと攻撃できません。そのため誤りです。
  6. ×カ  d1:低、d2:高、d3:要
    カは特権が高、関与が要です。2つの項目が攻撃しにくい側の値になっています。したがって誤りです。
  7. ×キ  d1:低、d2:低、d3:不要
    キは複雑さと関与は正しいものの、特権が低です。特権が低だと、一般利用者程度の権限は必要です。特権が不要な場合の方が攻撃しやすいので、誤りです。
  8. ×ク  d1:低、d2:低、d3:要
    クは特権が低、関与が要です。権限も利用者の操作も必要なため、最も攻撃しやすい値ではありません。したがって誤りです。
  9. ○ケ  d1:低、d2:不要、d3:不要
    ケは複雑さが低、特権が不要、関与が不要です。条件が少なく、権限がなくても、利用者が何もしなくても攻撃が成立します。三項目すべてが最も攻撃しやすい値なので、ケが正解です。
  10. ×コ  d1:低、d2:不要、d3:要
    コは複雑さと特権は正しいものの、関与が要です。関与が要だと、利用者がファイルを開くなどの操作をしないと攻撃が成立しません。不要の方が攻撃しやすいので、誤りです。

補足

図2では、攻撃元区分がネットワークで、機密性・完全性・可用性への影響がすべて高です。これに三項目の最も攻撃しやすい値が加わり、深刻度が9.8という高い値になっています。

POINT

  • 攻撃条件の複雑さは、低のほうが攻撃しやすい値です。
  • 攻撃に必要な特権レベルは、不要・低・高の3段階で、不要が最も攻撃しやすい値です。
  • 利用者の関与は、不要・要の2段階で、不要が最も攻撃しやすい値です。
  • 基本評価基準は脆弱性そのものの特性を評価するため、時間の経過や利用環境では変わりません。

※出典:平成31年度春期 情報セキュリティマネジメント試験 午後 問3 設問3(3)(一部改変)