マナビング情報セキュリティマネジメント

アプリのバージョンを一括で確認できるツールはどれか

情報セキュリティマネジメント試験 平成31年度春期 午後 問27 / セキュリティ › 情報セキュリティ対策

過去問にチャレンジ

平成31年度春期 午後 問27

問問3の共通の文

情報セキュリティの自己点検に関する次の記述を読んで,設問1~6に答えよ。 マンション管理会社Q社は,マンションの管理組合から委託を受けて管理業務を行っており,契約している管理組合数は3,000組合である。東京の本社には,経営企画部,営業統括部,人事総務部,経理部,情報システム部,監査部などの管理部門があり,東日本を中心に30の支店がある。従業員数は,マンションの管理人(以下,管理員という)3,300名を含めて3,800名である。管理業務の内容は,管理組合の収支予算書及び決算書の素案の作成,収支報告,出納,マンション修繕計画の企画及び実施の調整,理事会及び総会の支援,清掃,建物設備管理,緊急対応,管理員による各種受付・点検・立会い・報告連絡などである。 Q社は3年前に全社でISMS認証を取得しており,最高情報セキュリティ責任者(CISO)を委員長とする情報セキュリティ委員会を設置し,JIS Q 27001に沿った情報セキュリティポリシー及び情報セキュリティ関連規程を整備している。CISOは情報システム担当常務が務め,情報セキュリティ委員会の事務局は情報システム部が担当している。また,本社各部の部長及び各支店長は,情報セキュリティ委員会の委員,及び自部署における情報セキュリティ責任者を務め,自部署の情報セキュリティを確保し,維持,改善する役割を担っている。各情報セキュリティ責任者は,自部署の情報セキュリティに関わる実務を担当する情報セキュリティリーダーを選任している。 U支店には,支店長,主任2名,管理組合との窓口を務めるフロント担当者10名が勤務している。U支店の情報セキュリティ責任者はB支店長,情報セキュリティリーダーは第1グループのA主任である。U支店に勤務する従業員には,一人1台のノートPC(以下,NPCという)が貸与されている。NPCにはディジタル証明書をインストールし,Q社のネットワークに接続する際に端末認証を行っている。U支店では,Q社の文書管理規程に従い,顧客情報などの重要な情報が含まれる電子データは,U支店の共有ファイルサーバの所定のフォルダに保管する運用を行っている。U支店の共有ファイルサーバは,1日1回テープにバックアップを取得し,1週間分のテープを世代管理している。 U支店が契約している管理組合数は80組合であり,フロント担当者1名当たり5~10の管理組合を担当している。U支店が担当する管理組合のマンションはそれぞれ,管理事務室が1か所設置されており,管理員が1~2名勤務している。管理事務室には,管理員以外に,Q社従業員,マンション居住者が立入ることがある。多くのマンションでは,管理事務室の入室にマンションごとの暗証番号が必要である。暗証番号はおおむね2年ごとに変更される。管理事務室には,管理組合の許可を受けた上で,管理員とU支店の連絡用に,LTE通信機能付きNPCを1台設置し,インターネットVPN経由でQ社のネットワークと接続している。①管理事務室に複数の管理員が勤務する場合には,管理員間でNPC,利用者ID,パスワード,メールアドレスを共用している。 〔自己点検の規程及びチェック項目〕 Q社では,自己点検規程及び内部監査規程を,表1のとおり定めている。

表1 自己点検規程及び内部監査規程、空欄a1〜a3・出典注1

また,U支店では,チェック項目を図1のとおり設定している。

図1 U支店のチェック項目1〜9

〔アプリの更新漏れ〕 A主任は情報処理推進機構(IPA)の情報セキュリティサイトを見た際に,PDF閲覧ソフトにおいて任意のコードが実行されるという深刻な脆弱性に対する注意喚起が,2週間前から掲載されていることに気付いた。そこで,A主任が第1グループメンバーのNPCについて,PDF閲覧ソフトのバージョンが最新かを確認したところ,最新ではないNPCが2台あった。1週間前に実施した自己点検では,チェック項目4に全員が"はい"と回答していた。A主任が2台のNPCの利用者に確認したところ,他のアプリの更新は確認していたが,PDF閲覧ソフトの確認が漏れていたことが判明した。 A主任が,IPAの情報セキュリティサイトの参考情報から,脆弱性対策情報データベースを確認したところ,図2のとおり記載されていた。

図2 CVSS v3の脆弱性評価結果、空欄b〜d3・注1/2

次は,図2についての情報システム部のR課長とA主任の会話である。 R課長: CVSSv3の[b]評価基準は,脆弱性そのものの特性を評価する基準であり,評価には,攻撃の容易性及び情報システムに求められる三つのセキュリティ特性である,機密性,完全性,可用性に対する影響といった基準を用います。[b]評価基準は,時間の経過や利用環境の差異によって変化せず,脆弱性そのものを評価する基準です。図2を見ると,このPDF閲覧ソフトの脆弱性の深刻度は[c]であり,"攻撃条件の複雑さ","攻撃に必要な特権レベル","利用者の関与"の全てにおいて,攻撃が成功するおそれが最も高い値を示しています。したがって,PDF閲覧ソフトは早急に更新が必要です。 A主任: アプリのバージョンが最新かを,簡単にチェックする方法はありませんか。 R課長: 方法は二つあります。一つ目は,"MyJVNバージョンチェッカ"というIPAから無償提供されているソフトウェアを使う方法です。各利用者がNPCにインストールされているアプリのバージョンが最新かを簡単にチェックすることができます。二つ目は[e]を導入する方法です。情報システム部で,各NPCのアプリのバージョンが最新かを管理し,一括してチェックすることが可能ですが,導入には費用が掛かります。実は,"MyJVNバージョンチェッカ"を全社で利用する準備のために,試用部署を探していました。しかるべき手続を経て,情報セキュリティ委員会の承認を受けるので,U支店で試用してもらえませんか。 A主任は,B支店長の許可を得て"MyJVNバージョンチェッカ"の試用を開始し,"MyJVNバージョンチェッカ"がフロント担当者や管理員のITリテラシーでも問題なく使用できることを確認し,B支店長とR課長に報告した。 報告を受けたB支店長は,"MyJVNバージョンチェッカ"を全社に先駆けてU支店で継続して試用することについて,情報セキュリティ委員会の承認を受けた。 〔個人所有スマートフォンの業務利用〕 最近,フロント担当者のKさんが仕事中に度々個人所有スマートフォン(以下,スマートフォンをスマホという)を使っているので,A主任がKさんに尋ねたところ,個人所有スマホを業務に使うことがあるとのことであった。 Kさんは,②スマホの個人利用者向けチャットアプリ(以下,Mアプリという)を利用して,Kさんが担当するPマンションの管理組合(以下,P組合という)の理事からの問合せに回答したり,業務に関する情報を送信したりしているとのことであった。P組合の理事長から,次の理由で,Mアプリの使用を求められて,やむを得ず従ったとのことであった。 ・P組合では,理事同士の情報共有にMアプリを利用している。 ・問合せに対するKさんの返信がいつも遅く,おおむね3営業日以上掛かっている。Mアプリを利用すれば,Kさんがいつメッセージを読んだかが把握できる。 なお,Q社は,③従業員が個人所有スマホを業務に利用することを,会社として許可していない。 A主任は,Kさんが個人所有スマホを業務利用していること,及びスマホ用アプリの業務利用によって問題が発生することについて,B支店長に報告した。 〔チェック項目の見直し〕 これまでの報告を受けて,B支店長は,図1のチェック項目の見直しが必要であると判断し,A主任に対して見直しを指示した。④A主任が示した見直し案をB支店長が承認し,見直されたチェック項目が翌月から使用されることになった。 〔Mアプリの調査〕 Kさんは,P組合にMアプリが使用できなくなったことを連絡したが,P組合は,Mアプリの利用を強く要望するとのことであった。相談を受けたA主任が,Mアプリの機能と特徴を調べたところ,図3のとおりであった。

図3 Mアプリの機能及び特徴(抜粋)

A主任は,図3から,⑤Mアプリを業務連絡に利用することには,幾つかのリスクがあると考えた。更に調査したところ,Mアプリに業務用の機能を追加したアプリ(以下,BMアプリという)が存在することが分かった。BMアプリで追加された機能は,図4のとおりである。

図4 BMアプリで追加された機能(抜粋)

A主任は,図4から,BMアプリには適切なセキュリティ機能が備わっていると考え,情報システム部に,個人所有スマホ及びBMアプリの業務利用について検討を依頼した。 情報システム部は,個人所有スマホの業務利用に対する情報セキュリティリスクアセスメント及び⑥BMアプリの利用に対する情報セキュリティリスクアセスメントを実施した。さらに,その結果を情報セキュリティ委員会に報告し,許可を受けた上でBMアプリを試験導入し,問題がないことを確認した。 P組合から強い要望を受けてから半年後,情報セキュリティ委員会は,必要な情報セキュリティ関連規程を整備し,チェック項目を再度見直した上で,全社的に個人所有スマホの業務利用をBMアプリなど会社が認めたスマホ用アプリに限定して許可した。これによって,Q社はP組合の要望に応えることができた。また,BMアプリの利用を広げたことによって,Q社と顧客との間の連携が強化された。

設問3〔アプリの更新漏れ〕について,(1)~(4)に答えよ。 (4) 本文中の[e]に入れる字句はどれか。解答群のうち,最も適切なものを選べ。

  1. ア

    BIツール

  2. イ

    CASB(Cloud Access Security Broker)

  3. ウ

    IT資産管理ツール

  4. エ

    UEBA(User and Entity Behavior Analytics)

  5. オ

    ソフトウェア構成管理ツール

  6. カ

    特権ID管理ツール

  7. キ

    ポートスキャナ

会話形式の解説

講師講師
今回は、PDF閲覧ソフトの更新漏れが見つかった場面です。R課長が挙げた「アプリが最新版かを確かめる方法」の2つ目にあたる空欄eに、どの道具が入るかを選びます。
受験者受験者
1つ目はMyJVNバージョンチェッカでした。2つ目も同じような道具だと思うのですが、どこから絞り込めばよいですか。
講師講師
R課長の説明から条件を拾います。「情報システム部で各NPCのアプリの版を管理し、一括してチェックできる」と「導入には費用が掛かる」の2点です。NPCは社員に貸与したノートPCのことです。
受験者受験者
MyJVNバージョンチェッカは各利用者が自分のNPCで確認する道具で、無償でした。空欄eは管理部門がまとめて見る、費用の掛かる道具ということですね。
講師講師
そのとおりです。では選択肢のうち、端末ごとに入っているソフトウェアとその版を集めて管理できる道具はどれでしょう。
受験者受験者
名前だけ見ると、ソフトウェア構成管理ツールが版を管理していそうで迷います。
講師講師
そこが紛らわしい点です。ソフトウェア構成管理ツールも版を扱いますが、主に開発する成果物の部品の版や変更を管理する道具です。社員の端末に入っているアプリを資産として管理する道具とは用途が違います。
受験者受験者
開発側の版管理なのですね。そうすると、組織内の機器やソフトウェアを資産として管理するIT資産管理ツールが合いそうです。
講師講師
正解です。IT資産管理ツールは、機器ごとの使用者や、入っているソフトウェアとその版などを自動で集めます。そのため、情報システム部が全NPCのアプリの版を一括で確認できます。
受験者受験者
CASBとUEBAは、私はよく混同します。この2つが外れる理由を確認させてください。
講師講師
CASBは利用者とクラウドサービスの間に置き、クラウドの使われ方を見える化して制御する仕組みです。UEBAは利用者や機器のふるまいを統計や機械学習で分析し、不審な活動を見つける技術です。どちらも版の管理には使いません。
受験者受験者
残りのBIツールはためたデータの分析、特権ID管理ツールは管理者IDのような強い権限のIDの管理、ポートスキャナは外から通信ポートの応答を調べる道具なので、どれも条件に合いませんね。
講師講師
はい、その整理で大丈夫です。アプリの版を確かめる手段は、利用者が自分で見るMyJVNバージョンチェッカと、管理部門がまとめて見るIT資産管理ツールの2通り、と対で覚えておくと区別しやすくなります。

まとめ

この問題は、各NPC(社員に貸与したノートPC)のアプリが最新版かを、情報システム部が一括して管理・確認できる有償の道具を選ぶものです。条件に合うのは、機器ごとのソフトウェアと版を自動で集めて一元管理するIT資産管理ツールで、正解はウです。ソフトウェア構成管理ツールも版を扱いますが、開発する成果物の版や変更を管理する道具なので用途が異なります。CASBはクラウド利用の見える化と制御、UEBAは不審なふるまいの検知に使う技術で、版の管理には使いません。利用者が自分で確認するMyJVNバージョンチェッカとは、管理する主体と費用の点で区別できます。

解答・解説

正解はウです

この問題のテーマ

各NPC(社員に貸与したノートPC)に入っているアプリの版(バージョン)を、情報システム部がまとめて管理・確認するための道具を選ぶ問題です。

解き方の考え方

まず、R課長が空欄eをどう説明しているかを確かめます。説明は「情報システム部で各NPCのアプリの版を管理し、一括してチェックできる」「導入には費用が掛かる」の2点です。次に、各選択肢の道具が何を管理・分析するものかを、その定義から確かめます。最後に、空欄eの説明と照らし、端末ごとのソフトウェアと版を集めて管理できる道具を選びます。

選択肢ごとの解説

  1. ×ア  BIツール
    BIツール(ビジネスインテリジェンスツール)は、ためた大量のデータを加工・分析するソフトウェアです。分析の結果は、経営や業務の判断に使います。一方、各NPCのアプリの版を集めて管理する機能は持ちません。そのため、空欄eには当てはまりません。
  2. ×イ  CASB(Cloud Access Security Broker)
    CASBは、利用者とクラウドサービスの間に置く制御の仕組みです。クラウドの使われ方を見える化し、制御します。シャドーIT(会社が認めていないIT利用)の対策には役立ちます。しかし、端末の中にあるアプリの版を管理する仕組みではないため、誤りです。
  3. ○ウ  IT資産管理ツール
    IT資産管理ツールは、組織内のIT資産をまとめて管理する仕組みです。機器ごとの使用者や、入っているソフトウェアとその版などを自動で集めます。そのため、情報システム部が各NPCのアプリの版を一括で確認できます。空欄eの説明と合うので、ウが正解です。
  4. ×エ  UEBA(User and Entity Behavior Analytics)
    UEBAは、利用者や機器のふるまいを統計や機械学習で分析する技術です。ふだんと違う不審な活動を見つけるために使います。アプリの版を集めて管理する仕組みではないため、空欄eには当てはまりません。
  5. ×オ  ソフトウェア構成管理ツール
    ソフトウェア構成管理ツールは、ソフトウェアを構成する部品の種類や版を管理する道具です。主に開発の成果物について、版や変更を管理するために使います。社員の端末に入っているアプリを資産として管理する道具とは、用途が異なります。したがって、誤りです。
  6. ×カ  特権ID管理ツール
    特権ID管理ツールは、管理者IDのように強い権限を持つIDを扱う道具です。そのIDの付与や使用を管理します。アプリの版を確認する機能ではないため、誤りです。
  7. ×キ  ポートスキャナ
    ポートスキャナは、対象機器の通信ポートに信号を送る道具です。その応答から、どのサービスが動いているかを外部から調べます。端末に入っているアプリの版を一覧で管理することはできないため、誤りです。

補足

本文では、MyJVNバージョンチェッカをIPA(情報処理推進機構)が無償で提供するソフトウェアとして紹介しています。各利用者が自分のNPCで、入っているアプリが最新版かを確かめるための道具です。一方、空欄eの道具は導入に費用が掛かりますが、情報システム部が全NPCをまとめて管理できます。

POINT

  • IT資産管理ツールは、端末ごとの使用者、導入ソフトウェアとその版、ライセンスの状態などを自動で集めて一元管理します。
  • アプリの版を確認する手段は2通りです。MyJVNバージョンチェッカは各利用者が自分のPCで確認し、IT資産管理ツールは管理部門がまとめて確認します。
  • CASBはクラウド利用の見える化と制御、UEBAは不審なふるまいの検知に使う技術で、版の管理には使いません。
  • ソフトウェア構成管理は、開発する成果物の版や変更を管理するもので、端末の資産管理とは用途が違います。

※出典:平成31年度春期 情報セキュリティマネジメント試験 午後 問3 設問3(4)(一部改変)