マナビング情報セキュリティマネジメント

自己点検チェック項目はどう見直す?MyJVNの確認範囲に注目

情報セキュリティマネジメント試験 平成31年度春期 午後 問29 / セキュリティ › 情報セキュリティ管理

過去問にチャレンジ

平成31年度春期 午後 問29

問問3の共通の文

情報セキュリティの自己点検に関する次の記述を読んで,設問1~6に答えよ。 マンション管理会社Q社は,マンションの管理組合から委託を受けて管理業務を行っており,契約している管理組合数は3,000組合である。東京の本社には,経営企画部,営業統括部,人事総務部,経理部,情報システム部,監査部などの管理部門があり,東日本を中心に30の支店がある。従業員数は,マンションの管理人(以下,管理員という)3,300名を含めて3,800名である。管理業務の内容は,管理組合の収支予算書及び決算書の素案の作成,収支報告,出納,マンション修繕計画の企画及び実施の調整,理事会及び総会の支援,清掃,建物設備管理,緊急対応,管理員による各種受付・点検・立会い・報告連絡などである。 Q社は3年前に全社でISMS認証を取得しており,最高情報セキュリティ責任者(CISO)を委員長とする情報セキュリティ委員会を設置し,JIS Q 27001に沿った情報セキュリティポリシー及び情報セキュリティ関連規程を整備している。CISOは情報システム担当常務が務め,情報セキュリティ委員会の事務局は情報システム部が担当している。また,本社各部の部長及び各支店長は,情報セキュリティ委員会の委員,及び自部署における情報セキュリティ責任者を務め,自部署の情報セキュリティを確保し,維持,改善する役割を担っている。各情報セキュリティ責任者は,自部署の情報セキュリティに関わる実務を担当する情報セキュリティリーダーを選任している。 U支店には,支店長,主任2名,管理組合との窓口を務めるフロント担当者10名が勤務している。U支店の情報セキュリティ責任者はB支店長,情報セキュリティリーダーは第1グループのA主任である。U支店に勤務する従業員には,一人1台のノートPC(以下,NPCという)が貸与されている。NPCにはディジタル証明書をインストールし,Q社のネットワークに接続する際に端末認証を行っている。U支店では,Q社の文書管理規程に従い,顧客情報などの重要な情報が含まれる電子データは,U支店の共有ファイルサーバの所定のフォルダに保管する運用を行っている。U支店の共有ファイルサーバは,1日1回テープにバックアップを取得し,1週間分のテープを世代管理している。 U支店が契約している管理組合数は80組合であり,フロント担当者1名当たり5~10の管理組合を担当している。U支店が担当する管理組合のマンションはそれぞれ,管理事務室が1か所設置されており,管理員が1~2名勤務している。管理事務室には,管理員以外に,Q社従業員,マンション居住者が立入ることがある。多くのマンションでは,管理事務室の入室にマンションごとの暗証番号が必要である。暗証番号はおおむね2年ごとに変更される。管理事務室には,管理組合の許可を受けた上で,管理員とU支店の連絡用に,LTE通信機能付きNPCを1台設置し,インターネットVPN経由でQ社のネットワークと接続している。①管理事務室に複数の管理員が勤務する場合には,管理員間でNPC,利用者ID,パスワード,メールアドレスを共用している。 〔自己点検の規程及びチェック項目〕 Q社では,自己点検規程及び内部監査規程を,表1のとおり定めている。

表1 自己点検規程及び内部監査規程、空欄a1〜a3・出典注1

また,U支店では,チェック項目を図1のとおり設定している。

図1 U支店のチェック項目1〜9

〔アプリの更新漏れ〕 A主任は情報処理推進機構(IPA)の情報セキュリティサイトを見た際に,PDF閲覧ソフトにおいて任意のコードが実行されるという深刻な脆弱性に対する注意喚起が,2週間前から掲載されていることに気付いた。そこで,A主任が第1グループメンバーのNPCについて,PDF閲覧ソフトのバージョンが最新かを確認したところ,最新ではないNPCが2台あった。1週間前に実施した自己点検では,チェック項目4に全員が"はい"と回答していた。A主任が2台のNPCの利用者に確認したところ,他のアプリの更新は確認していたが,PDF閲覧ソフトの確認が漏れていたことが判明した。 A主任が,IPAの情報セキュリティサイトの参考情報から,脆弱性対策情報データベースを確認したところ,図2のとおり記載されていた。

図2 CVSS v3の脆弱性評価結果、空欄b〜d3・注1/2

次は,図2についての情報システム部のR課長とA主任の会話である。 R課長: CVSSv3の[b]評価基準は,脆弱性そのものの特性を評価する基準であり,評価には,攻撃の容易性及び情報システムに求められる三つのセキュリティ特性である,機密性,完全性,可用性に対する影響といった基準を用います。[b]評価基準は,時間の経過や利用環境の差異によって変化せず,脆弱性そのものを評価する基準です。図2を見ると,このPDF閲覧ソフトの脆弱性の深刻度は[c]であり,"攻撃条件の複雑さ","攻撃に必要な特権レベル","利用者の関与"の全てにおいて,攻撃が成功するおそれが最も高い値を示しています。したがって,PDF閲覧ソフトは早急に更新が必要です。 A主任: アプリのバージョンが最新かを,簡単にチェックする方法はありませんか。 R課長: 方法は二つあります。一つ目は,"MyJVNバージョンチェッカ"というIPAから無償提供されているソフトウェアを使う方法です。各利用者がNPCにインストールされているアプリのバージョンが最新かを簡単にチェックすることができます。二つ目は[e]を導入する方法です。情報システム部で,各NPCのアプリのバージョンが最新かを管理し,一括してチェックすることが可能ですが,導入には費用が掛かります。実は,"MyJVNバージョンチェッカ"を全社で利用する準備のために,試用部署を探していました。しかるべき手続を経て,情報セキュリティ委員会の承認を受けるので,U支店で試用してもらえませんか。 A主任は,B支店長の許可を得て"MyJVNバージョンチェッカ"の試用を開始し,"MyJVNバージョンチェッカ"がフロント担当者や管理員のITリテラシーでも問題なく使用できることを確認し,B支店長とR課長に報告した。 報告を受けたB支店長は,"MyJVNバージョンチェッカ"を全社に先駆けてU支店で継続して試用することについて,情報セキュリティ委員会の承認を受けた。 〔個人所有スマートフォンの業務利用〕 最近,フロント担当者のKさんが仕事中に度々個人所有スマートフォン(以下,スマートフォンをスマホという)を使っているので,A主任がKさんに尋ねたところ,個人所有スマホを業務に使うことがあるとのことであった。 Kさんは,②スマホの個人利用者向けチャットアプリ(以下,Mアプリという)を利用して,Kさんが担当するPマンションの管理組合(以下,P組合という)の理事からの問合せに回答したり,業務に関する情報を送信したりしているとのことであった。P組合の理事長から,次の理由で,Mアプリの使用を求められて,やむを得ず従ったとのことであった。 ・P組合では,理事同士の情報共有にMアプリを利用している。 ・問合せに対するKさんの返信がいつも遅く,おおむね3営業日以上掛かっている。Mアプリを利用すれば,Kさんがいつメッセージを読んだかが把握できる。 なお,Q社は,③従業員が個人所有スマホを業務に利用することを,会社として許可していない。 A主任は,Kさんが個人所有スマホを業務利用していること,及びスマホ用アプリの業務利用によって問題が発生することについて,B支店長に報告した。 〔チェック項目の見直し〕 これまでの報告を受けて,B支店長は,図1のチェック項目の見直しが必要であると判断し,A主任に対して見直しを指示した。④A主任が示した見直し案をB支店長が承認し,見直されたチェック項目が翌月から使用されることになった。 〔Mアプリの調査〕 Kさんは,P組合にMアプリが使用できなくなったことを連絡したが,P組合は,Mアプリの利用を強く要望するとのことであった。相談を受けたA主任が,Mアプリの機能と特徴を調べたところ,図3のとおりであった。

図3 Mアプリの機能及び特徴(抜粋)

A主任は,図3から,⑤Mアプリを業務連絡に利用することには,幾つかのリスクがあると考えた。更に調査したところ,Mアプリに業務用の機能を追加したアプリ(以下,BMアプリという)が存在することが分かった。BMアプリで追加された機能は,図4のとおりである。

図4 BMアプリで追加された機能(抜粋)

A主任は,図4から,BMアプリには適切なセキュリティ機能が備わっていると考え,情報システム部に,個人所有スマホ及びBMアプリの業務利用について検討を依頼した。 情報システム部は,個人所有スマホの業務利用に対する情報セキュリティリスクアセスメント及び⑥BMアプリの利用に対する情報セキュリティリスクアセスメントを実施した。さらに,その結果を情報セキュリティ委員会に報告し,許可を受けた上でBMアプリを試験導入し,問題がないことを確認した。 P組合から強い要望を受けてから半年後,情報セキュリティ委員会は,必要な情報セキュリティ関連規程を整備し,チェック項目を再度見直した上で,全社的に個人所有スマホの業務利用をBMアプリなど会社が認めたスマホ用アプリに限定して許可した。これによって,Q社はP組合の要望に応えることができた。また,BMアプリの利用を広げたことによって,Q社と顧客との間の連携が強化された。

設問5本文中の下線④について,次の(ⅰ)~(ⅲ)のうち,A主任が見直しを行った図1のチェック項目と見直しの内容だけを全て挙げた組合せを,解答群の中から選べ。 (ⅰ) 3と4を"MyJVNバージョンチェッカによって,NPCのアプリのバージョンが最新かを確認し,最新でなければ更新している。"に統合する。 (ⅱ) 4を"NPCのアプリのバージョンが最新かをMyJVNバージョンチェッカで確認し,最新でないアプリは,MyJVNバージョンチェッカの指示に従って更新する。"に修正する。 (ⅲ) 9を"PCやスマホなどの個人所有端末を業務で利用していない。"に修正する。

  1. ア

    (ⅰ)

  2. イ

    (ⅰ),(ⅲ)

  3. ウ

    (ⅱ)

  4. エ

    (ⅱ),(ⅲ)

  5. オ

    (ⅲ)

  6. カ

    当てはまるものはない

会話形式の解説

講師講師
U支店で起きた出来事を受けて、図1の自己点検チェック項目をどう直すのが適切かを選ぶ問題です。まず、本文で起きた問題を2つ挙げてみましょう。
受験者受験者
1つはPDF閲覧ソフトの更新漏れです。もう1つは、Kさんが個人所有スマホを業務に使っていたことだと思います。
講師講師
そのとおりです。見直し案は、この2つの問題を防げるかで判断します。更新漏れについては、図1の項目4が関係します。項目4では、アプリが最新かをどうやって確認していましたか。
受験者受験者
ヘルプメニューで確認する、と書いてあります。全員が「はい」と答えたのに、最新でないNPC(貸与されたノートPC)が2台ありました。
講師講師
ヘルプメニューで1つずつ見る方法だと、利用者がPDF閲覧ソフトのように確認を見落としやすいのです。(ⅱ)は、この確認方法をMyJVNバージョンチェッカに替える案です。
受験者受験者
MyJVNバージョンチェッカは、IPAが無償で出している、アプリが最新かを確かめるツールですね。それなら(ⅱ)で確認漏れを防げそうです。
講師講師
はい、(ⅱ)は適切です。では(ⅰ)を見ましょう。(ⅰ)は項目3と項目4を、チェッカで確認する1つの項目に統合する案です。
受験者受験者
1つにまとめれば点検が楽になりそうなので、私は(ⅰ)も良い案だと思いました。
講師講師
そこが落とし穴です。項目3は、NPCのOSの更新履歴で、自動更新が正常に終わったかを確かめる項目です。一方、MyJVNバージョンチェッカは確認できるソフトウェアが決まっていて、OSは対象外です。
受験者受験者
つまり、チェッカだけの項目に統合すると、OSの更新を確かめる項目がなくなってしまうのですね。
講師講師
そうです。確認手段が対象としない項目を統合すると、点検すべき内容が抜け落ちます。だから(ⅰ)は不適切です。次はスマホの問題です。図1の項目9は何と書いてありますか。
受験者受験者
「個人所有PCを業務で使用していない」です。Kさんが使っていたのはスマホなので、この項目では「はい」と答えられてしまいます。
講師講師
そのとおりです。「PC」と書くと、スマホは対象外と読めてしまいます。(ⅲ)は対象を、スマホなどを含む個人所有端末に広げる修正です。
受験者受験者
Q社は個人所有スマホの業務利用を許可していないので、点検項目で禁止を周知でき、違反も防げるということですね。
講師講師
はい。まとめると、適切なのは(ⅱ)と(ⅲ)の2つです。(ⅱ)か(ⅲ)の一方だけを挙げた組合せでは足りず、当てはまるものはないとする選択肢も誤りです。
受験者受験者
(ⅱ)と(ⅲ)を挙げた組合せ、つまりエが正解ですね。統合する案は、確認手段が何を対象にしているかまで確かめる必要があると分かりました。

まとめ

この問題は、PDF閲覧ソフトの更新漏れと個人所有スマホの無許可の業務利用を受けて、自己点検のチェック項目をどう見直すかを問うものです。項目4の確認方法をヘルプメニューからMyJVNバージョンチェッカに改める(ⅱ)は、更新の確認漏れを防ぐので適切です。項目9の対象を「個人所有PC」からスマホなどを含む個人所有端末に広げる(ⅲ)も、スマホの業務利用を点検できるようにする修正として適切です。一方、(ⅰ)のようにOSの更新確認(項目3)をチェッカの項目に統合すると、チェッカはOSを確認しないため、OSの確認が抜け落ちます。したがって正解は、(ⅱ)と(ⅲ)を挙げたエです。

解答・解説

正解はエです

この問題のテーマ

U支店の出来事を受けて、図1の自己点検チェック項目をどう見直すのが適切かを問う問題です。出来事は、PDF閲覧ソフトの更新漏れと、個人所有スマホの無許可の業務利用の2つです。

解き方の考え方

まず、本文で起きた問題を2つ確かめます。1つはアプリの更新漏れで、もう1つは個人所有スマホの業務利用です。次に、(ⅰ)〜(ⅲ)が図1のどの項目を直す案か、その案で問題が防げるかを1つずつ照らします。(ⅰ)は、OSの更新を確かめる項目3を、アプリ用のツールに統合する案なので不適切です。(ⅱ)はアプリの更新漏れに、(ⅲ)はスマホの無許可利用に、それぞれ対応するので適切です。したがって、(ⅱ)と(ⅲ)の両方を挙げた組合せを選びます。

選択肢ごとの解説

  1. ×ア  (ⅰ)
    アは(ⅰ)だけを挙げた組合せです。図1の項目3は、NPC(従業員に貸与されたノートPC)のOS更新履歴で、自動更新が正常に終わったかを確かめる項目です。一方、MyJVNバージョンチェッカ(アプリが最新かを確かめるIPAの無償ツール)は、確認できるソフトウェアが決まっており、OSは対象外です。そのため、項目3と項目4を統合するとOSの確認が抜けてしまい、(ⅰ)は不適切です。
  2. ×イ  (ⅰ),(ⅲ)
    イは(ⅰ)と(ⅲ)を挙げた組合せです。(ⅲ)の個人所有端末に広げる修正は適切です。しかし、(ⅰ)の統合ではチェッカで確かめられないOSの確認項目がなくなるため、(ⅰ)は不適切です。したがって、イの組合せは誤りです。
  3. ×ウ  (ⅱ)
    ウは(ⅱ)だけを挙げた組合せです。(ⅱ)はアプリの更新漏れへの対策として適切です。ただし、図1の項目9は個人所有PCしか対象にしておらず、Kさんのスマホ利用を点検できません。そのため(ⅲ)の修正も必要で、(ⅱ)だけでは不足です。
  4. ○エ  (ⅱ),(ⅲ)
    エは(ⅱ)と(ⅲ)を挙げた組合せです。(ⅱ)は、項目4の確認方法をヘルプメニューからチェッカに改め、PDF閲覧ソフトのような確認漏れを防ぎます。(ⅲ)は、項目9の対象をPCからスマホなどを含む個人所有端末に広げます。Q社は個人所有スマホの業務利用を許可していないので、点検項目で禁止を周知し、違反を防げます。したがって、エが正解です。
  5. ×オ  (ⅲ)
    オは(ⅲ)だけを挙げた組合せです。(ⅲ)は適切です。しかし、自己点検では全員が項目4に「はい」と答えたのに、更新漏れのNPCが2台ありました。この確認漏れに対応する(ⅱ)も必要なので、(ⅲ)だけでは不足です。
  6. ×カ  当てはまるものはない
    カは、当てはまるものがないとする選択肢です。実際には、(ⅱ)はアプリの更新漏れに、(ⅲ)は個人所有スマホの業務利用に対応する見直しとして当てはまります。したがって、カは誤りです。

POINT

  • チェック項目の見直しは、実際に起きた問題(確認漏れ・無許可利用)を防げる内容かで判断します。
  • MyJVNバージョンチェッカは決まったアプリのバージョンを確認するツールで、OSは確認対象外です。
  • 確認手段が対象としない項目を統合すると、点検すべき内容が抜け落ちます。
  • 禁止の対象を「PC」に限って書くと、スマホなど他の個人所有端末の利用を点検できません。

※出典:平成31年度春期 情報セキュリティマネジメント試験 午後 問3 設問5(一部改変)