マナビング情報セキュリティマネジメント

Webブラウザからの通信を守る暗号化プロトコルはどれか

情報セキュリティマネジメント試験 令和元年度秋期 午後 問24 / ネットワーク › 通信プロトコル

過去問にチャレンジ

令和元年度秋期 午後 問24

問問3の共通の文

業務委託先への情報セキュリティ要求事項に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 X社は,携帯通信事業者から通信回線設備を借り受け,データ通信サービス及び通話サービス(以下,両サービスを併せてXサービスという)を提供している従業員数70名の企業である。X社には,法務部,サービスマーケティング部,情報システム部,利用者サポート部(以下,利用者サポート部をUS部という)などがある。X社では,最高情報セキュリティ責任者(CISO)を委員長とした情報セキュリティ委員会(以下,X社委員会という)を設置している。X社委員会では,情報セキュリティ管理規程の整備,情報セキュリティ対策の強化などが審議される。X社委員会の事務局長はUS部のS部長である。各部の部長は,X社委員会の委員及び自部における情報セキュリティ責任者を務め,自部の情報セキュリティに関わる実務を担当する情報セキュリティリーダーを選任している。US部の情報セキュリティリーダーはG課長である。 US部には,25名の従業員が所属している。主な業務は,Xサービスを利用している顧客,及びXサービスへの新規の申込みを検討している潜在顧客(以下,Xサービスを利用している顧客及び潜在顧客を併せてX顧客という)からの問合せへの対応業務(以下,X業務という)である。 〔US部が利用しているコールセンタ用サービスの概要〕 US部では,X業務を遂行するためにクラウドサービスプロバイダN社のSaaSのコールセンタ用サービス(以下,Nサービスという)を利用している。NサービスはISMS認証及びISMSクラウドセキュリティ認証を取得している。Nサービスには,会社から貸与されたPCのWebブラウザから,暗号化された通信プロトコルである[a]を使ってアクセスする。Nサービスは,図1の基本機能及びセキュリティ機能を提供している。

図1 Nサービスの基本機能及びセキュリティ機能

Nサービスのデータベース(以下,NDBという)に,氏名,年齢,住所,利用中のサービスプラン,問合せ対応記録その他のX顧客に関する情報(以下,X情報という)は暗号化されて,また,検索用キーは平文で保存されている。①X情報は,US部の従業員に貸与しているPCにだけ格納した暗号鍵を用いて,US部の従業員が復号できる仕組みになっている。PCへのログインには利用者IDとパスワードが必要である。 X社では,Nサービスのセキュリティ機能のうち手動実行機能は,管理者アカウントをもつUS部の特定の従業員だけが実行できる。X社利用分の監査ログは,X社の情報システム部が常時監視している。 US部では,業務効率化の一環として,2019年10月にX業務の3割を外部に委託し,残りの業務は継続してNサービスを利用しながらUS部内で遂行することにした。その委託先の第一候補がY社である。Y社を選んだ理由は,次の2点である。 他の候補と比較してサービス内容に遜色がなく,しかも低価格であること秘密保持契約を締結した上で,業務委託に関わる範囲を対象とした,情報セキュリティ対策の評価に協力してくれること 〔Y社の概要〕 Y社は,次のコールセンタサービス(以下,Yサービスという)を提供する従業員数200名の企業である。 委託元に代わって顧客からの製品やサービスに関する様々な問合せや苦情などを受け付ける。委託元の製品やサービスの評判を新聞,雑誌などのメディア,インターネット上のSNS,掲示板などを基に調査し,委託元に報告する。著作物を複製する場合は,著作権者の許諾を得て行う。 Y社はコールセンタシステム(以下,Yシステムという)を構築し,通常はそれを利用してYサービスを提供している。 Y社の組織の主な業務及び体制を表1に示す。

表1 Y社の組織の主な業務及び体制(抜粋)、注記・注1

Y社は,従業員を対象に,原則4月及び10月の1日に社内の定期人事異動がある。また,これらの時期以外でも組織再編,業務の見直しなどの理由で人事異動がある。Y-CS部のパートタイマは,1年間で約2割が退職する。人事総務部は,欠員補充のために,ほぼ同数を新規に採用している。 〔Y社の情報セキュリティ対策〕 Y社は,東京都内の7階建てビルの3~5階に入居しており,他の階には別の企業が入居している。ビルの出入りは誰でも可能であり,階段やエレベータを使用して,各階に移動できる。Y社の入退管理を図2に示す。

図2 Y社の入退管理

3階はY-CS部の,また,4階及び5階は他部の業務エリアである。 Y-CS部の管理職及び一般従業員は,5階の会議室で営業部の従業員と会議をすることが多いので,3階及び5階への入室権限が与えられている。 3~5階には,複合機が2台ずつ設置されており,コピー,プリント,スキャンの機能が使用できる。Y-CS部はスキャンの機能を使用して,新聞,雑誌などに紹介された委託元の製品やサービスに関する記事をPDF化し,委託元に報告している。スキャンしたPDFファイルは電子メール(以下,電子メールをメールという)にパスワードなしで添付されて,スキャンを実行した本人だけに送信される。PDFファイルの容量が大きい場合は,PDFファイルを添付する代わりにプリントサーバ内の共有フォルダに自動的に保存され,保存先のURLがメールの本文に記載されて送信される。その際,メールの送信者名,件名,本文及び添付ファイル名の命名規則などは,複合機の初期設定のまま使用している。そのため,誰がスキャンを実行しても,メールの送信者名などは同じになる。複合機のマニュアルはインターネットに掲載されている。 管理職にはデスクトップPC及びノートPCが,その他の従業員にはデスクトップPCが貸与されている。ノートPCは,社内会議での資料のプロジェクタによる投影,在宅での資料作成などに利用する。Y社が貸与しているPC(以下,Y-PCという)の仕様及び利用状況を表2に示す。

表2 Y-PCの仕様及び利用状況(抜粋)

プロキシサーバには次の機能があるが,現在は使用していない。 指定されたURLへのアクセスを許可又は禁止する機能(以下,プロキシ制御機能という)利用者ID及びパスワードによる認証機能(以下,利用者認証機能という) プロキシサーバのログ(以下,プロキシログという)はログサーバに転送され,3か月間保存される。プロキシログは,ネットワーク障害,不審な通信などの原因を調査する場合に利用する。プロキシログには,アクセス日時及びアクセス先IPアドレスが記録されるが,利用者認証機能を使用すると,Webサイトにアクセスした従業員の利用者IDも記録される。 VPNサーバにはパケットフィルタリングの機能及びあらかじめ設定したドメインへの通信を禁止する機能(以下,両機能を併せてVPN制御機能という)があるが,現在は使用していない。 〔Y社からの提案〕 Y社がX業務に利用するシステム又はサービスは表3に示す2案がある。X社から特段の要求がなければ,Y社は案1を採用する。

表3 Y社がX業務に利用するシステム又はサービス

〔X社委員会における案1及び案2の検討〕 X社委員会は,案2では,案1のもつ[b]できるので,案2の採否について議論した。X社委員会では,業務委託後の残留リスクを受容できると判断できた場合は,Y社に委託することにした。そこで,CISOは,業務委託に関わる範囲を対象としてY社の情報セキュリティ対策を確認し,X社委員会に報告するようS部長に指示した。 S部長は,G課長にY社の情報セキュリティ対策を確認して報告するよう指示した。S部長は,情報システム部に技術面での協力を依頼し,同部のH主任がG課長に協力することになった。 〔X社の情報セキュリティ要求事項と評価〕 G課長とH主任は,自社の情報セキュリティ管理規程を基に,X業務の外部への委託における情報セキュリティ要求事項(以下,X要求事項という)を取りまとめた。 X社とY社間で秘密保持契約を締結した後,G課長は,Y社を訪問した。G課長はY社の承諾を得た上で,X要求事項を基に,Y-CS部従業員へのヒアリング及び設備状況の目視による確認などを行った。その際,T部長及びF課長に同行を依頼した。その後,表4のとおり評価結果と評価根拠をまとめてY社に事実確認を依頼したところ,"事実だ"との回答があった。評価結果は次のルールに従って記入した。 要求事項を満たす場合:"OK"要求事項を満たさない場合:"NG"

表4 X要求事項に対するY社の対策の評価結果と評価根拠(抜粋)、空欄c・d・e・下線②

〔評価結果に対する対応案の検討〕 後日,G課長はT部長とF課長に,Y社と業務委託契約をしたいと伝え,その前提として,評価結果が"NG"の要求事項への対応を依頼した。Y社はG課長に③対応案を伝えた。G課長はH主任と相談の上,対応案をS部長に報告した。 S部長が表4及び対応案をX社委員会に報告したところ,Y社にX業務を委託することが承認され,無事に業務が開始された。X社はY社への業務委託によって業務の効率化を進めることができた。

設問1〔US部が利用しているコールセンタ用サービスの概要〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) 本文中の[a]に入れる字句はどれか。解答群のうち,最も適切なものを選べ。

  1. ア

    DKIM

  2. イ

    DomainKeys

  3. ウ

    HTTP over TLS

  4. エ

    IMAP over TLS

  5. オ

    POP3 over TLS

  6. カ

    SMTP over TLS

会話形式の解説

講師講師
この空欄では、クラウドのコールセンタ用サービスにアクセスするときに使う暗号化プロトコルが問われています。空欄の直前にある「どこからアクセスするか」という語句に注目してください。
受験者受験者
「会社から貸与されたPCのWebブラウザから」と書かれています。選択肢に「over TLS」が四つも並んでいて、どれも暗号化なので迷いました。
講師講師
そこがこの問題のポイントです。TLSは通信を暗号化する仕組みで、「○○ over TLS」は「○○というプロトコルの通信をTLSで守る」という意味です。ですから、○○の部分が何に使われるプロトコルなのかで見分けます。
受験者受験者
Webブラウザとサーバの間でやり取りするのはHTTPなので、HTTP over TLS、つまりHTTPSが当てはまるということですね。
講師講師
そのとおりです。ほかの「over TLS」はどれもメールに使うプロトコルです。IMAPはメールサーバ上のメールボックスを参照・同期するとき、POP3はメールを受信するとき、SMTPはメールの送信やサーバ間の転送に使います。
受験者受験者
SMTP over TLSも暗号化されているので正しそうに見えましたが、守っているのはメールの送信なので、Webブラウザからのアクセスとは合わないのですね。
講師講師
はい。残りのDKIMとDomainKeysも確認しておきましょう。どちらも、送信側がメールに電子署名を付け、受信側がその署名で送信ドメインが正しいかを確かめる「送信ドメイン認証」の技術です。
受験者受験者
つまり、メールの送信元が本物かを確かめる技術で、通信を暗号化するものではないということですか。
講師講師
そうです。ですから、Web通信を暗号化するという空欄の条件には当てはまりません。用途で分けると、Web通信が一つ、メールの受信や送信が三つ、メールの送信ドメイン認証が二つという分類になります。
受験者受験者
「TLS」が付いているかどうかだけで判断せず、TLSで何の通信を守っているかまで見ることが大事なのですね。
講師講師
それが一番の引っかけ対策です。午後問題の穴埋めでは、今回の「Webブラウザから」のように空欄の近くの語句が決め手になることがよくあります。まず本文から通信の種類を特定してから選択肢を見ると、メール関連の選択肢が多く並んでいても迷わずに済みます。

まとめ

この問題は、SaaSにWebブラウザからアクセスするときに通信を暗号化するプロトコルを選ぶものです。WebブラウザとWebサーバの間ではHTTPを使うので、それをTLSで暗号化したHTTP over TLS(HTTPS)が当てはまります。IMAP・POP3・SMTP over TLSはメールの参照・受信・送信の通信を守る方式で、DKIMとDomainKeysは電子署名を使う送信ドメイン認証の技術です。「TLS」が付いているかだけで判断せず、何の通信を守っているかを本文の「Webブラウザから」という語句と照らし合わせて見分けるのがポイントです。

解答・解説

正解はウです

この問題のテーマ

クラウドサービス(SaaS)にWebブラウザからアクセスするとき、通信を暗号化するプロトコルは何かを問う問題です。似た名前のメール関連技術と区別できるかが試されています。

解き方の考え方

まず空欄の前の文脈を確認します。本文には「PCのWebブラウザから」Nサービスへアクセスすると書かれています。Webブラウザとサーバの間で使う通信プロトコルはHTTPなので、これを暗号化したものを選べばよいと分かります。ほかの選択肢はどれもメールに関する技術なので、用途の違いから外せます。

選択肢ごとの解説

  1. ×ア  DKIM
    DKIMは、送信側がメールに電子署名を付け、受信側がその署名で送信ドメインが正しいかを確かめる仕組みです。送信ドメイン認証の技術であり、Webブラウザとサービスの間の通信を暗号化するものではありません。
  2. ×イ  DomainKeys
    DomainKeysも、署名を使ってメールの送信ドメインを認証する方式です。DKIMと同じくメールの真正性を確かめる技術であり、Webアクセスの通信を保護する用途には当てはまりません。
  3. ○ウ  HTTP over TLS
    HTTP over TLSは、WebブラウザとWebサーバの間でやり取りするHTTPの通信をTLSで暗号化する方式で、一般にHTTPSと呼ばれます。NサービスにはWebブラウザからアクセスするので、空欄aに入る暗号化プロトコルとしてこれが最も適切です。
  4. ×エ  IMAP over TLS
    IMAP over TLSは、メールサーバ上のメールボックスを参照したり同期したりする通信をTLSで保護する方式です。メールを読むための通信なので、Webブラウザでサービスを使う場面には合いません。
  5. ×オ  POP3 over TLS
    POP3 over TLSは、メールサーバからメールを受信する通信をTLSで保護する方式です。メール受信用のプロトコルであり、WebブラウザからNサービスへアクセスする通信ではありません。
  6. ×カ  SMTP over TLS
    SMTP over TLSは、メールの送信やサーバ間の転送の通信をTLSで保護する方式です。暗号化の技術ではありますが、Web通信ではなくメール送信に使うものなので不適切です。

補足

午後問題の穴埋めでは、空欄の近くにある「Webブラウザから」のような語句が決め手になることがよくあります。メール関連の選択肢がたくさん並んでいても、まず通信の種類を本文から特定すれば迷わずに済みます。「TLS」という語が入っているだけで正解と決めつけず、TLSで何の通信を守っているのかまで確かめましょう。

POINT

  • Webブラウザを使ったアクセスを暗号化するのはHTTP over TLS(HTTPS)です。
  • 「○○ over TLS」の選択肢は、○○の部分のプロトコルが何に使われるか(Web、メール受信、メール送信など)で見分けます。
  • IMAPとPOP3はメールの受信・参照に、SMTPはメールの送信・転送に使うプロトコルです。
  • DKIMとDomainKeysは送信ドメイン認証の技術で、通信を暗号化するものではありません。

※出典:令和元年度秋期 情報セキュリティマネジメント試験 午後 問3 設問1(1)(一部改変)