マナビング情報セキュリティマネジメント

サイバー攻撃演習が年1回では足りない理由を本文から探す

情報セキュリティマネジメント試験 平成31年度春期 午後 問10 / セキュリティ › 情報セキュリティ管理

過去問にチャレンジ

平成31年度春期 午後 問10

問問1の共通の文

サイバー攻撃を想定した演習に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 W社は,自動車電装部品,ガス計測部品及びソーラシステム部品を製造する従業員数1,000名の企業である。経営企画部,人事総務部,情報システム部,調達購買部などのコストセンタ並びに自動車電装部,ガス計測部,及び昨年新規事業として立ち上げられたソーラシステム部の三つのプロフィットセンタから構成されている。ソーラシステム部は現在30名の組織であるが,事業を拡大させるために,毎月,3~4名の従業員を採用しており,組織が拡大している。 W社では,7年前に最高情報セキュリティ責任者(CISO)を委員長とする情報セキュリティ委員会を設置し,情報セキュリティポリシー及び情報セキュリティ関連規程を整備して,ISMS認証を全社で取得した。経営企画部が,情報セキュリティ委員会の事務局を担当している。また,各部の部長が,情報セキュリティ委員会の委員,及び自部における情報セキュリティ責任者を務めている。各情報セキュリティ責任者は,自部の情報セキュリティに関わる実務を担当する情報セキュリティリーダーを選任している。 W社は年に1回,人事総務部が主管となり,大規模な震災などを想定した事業継続計画の演習を実施している。サイバー攻撃を想定した演習は実施したことがないものの,サイバー攻撃などの情報セキュリティインシデント(以下,インシデントという)の対応手順はあり,これまで,事業に深刻な影響を与えるようなサイバー攻撃は受けていない。 〔ソーラシステム部の状況〕 ソーラシステム部では,省エネルギーを推進しており,部で使用する全てのPCには,消費電力の少ないノートPC(以下,NPCという)を選定している。省エネルギー対策の一つとして,全てのNPCは,カバーを閉じると自動的にスリープモードに切り替わるように設定されている。また,情報セキュリティ対策の一つとして,全てのNPCでは,USBストレージなどの外部記憶媒体を使用できないように技術的対策を講じている。 ソーラシステム部の情報セキュリティ責任者はE部長で,情報セキュリティリーダーはFさんである。Fさんは,最近,競合他社がサイバー攻撃を受け,その対応に手間取って大きな被害が発生したとのニュースを聞いた。そこで,Fさんは,ソーラシステム部内でサイバー攻撃を想定した演習を行うことを提案した。E部長は提案を承認し,Fさんに演習を計画するように指示した。 〔演習の計画〕 サイバー攻撃を想定した演習は,年1回行うことにした。演習は,一般的に表1に示すような机上演習と機能演習の2種類に大別される。機能演習の具体的な形式には,実際のサイバー攻撃に近い形で疑似的なサイバー攻撃を行う[a]が含まれる。

表1 サイバー攻撃を想定した演習の種類と注記

Fさんは,机上演習と機能演習を比較検討した結果,今回は,参加者に気付きを与えられる机上演習として,ワークショップを実施することにした。演習終了後には,参加者からの意見を集めて次回の演習に反映することにした。 Fさんは,机上演習のシナリオを検討するに当たり,サイバーキルチェーンを参考にすることにした。サイバーキルチェーンとは,サイバー攻撃の段階を説明した代表的なモデルの一つである。サイバー攻撃を7段階に区分して,攻撃者の考え方や行動を理解することを目的としている。サイバーキルチェーンのいずれかの段階でチェーンを断ち切ることができれば,被害の発生を防ぐことができる。サイバー攻撃のシナリオをサイバーキルチェーンに基づいて整理した例を表2に示す。

表2 サイバーキルチェーンに基づいて整理した例、下線①・注記・注1/2

Fさんは,次の二つの演習のシナリオを取り上げることにした。 シナリオ1 標的型メール攻撃のシナリオである。W社の取引先をかたった者から,W社の公開Webサイトが停止しておりアクセスできない旨の報告をメールで受信した。メールの本文には,W社の公開Webサイトを模した偽サイトのURLが記載されている。この場合の対応を行う。 シナリオ2 標的型メール攻撃を受けた結果,マルウェア感染したというシナリオである。従業員のNPCのマルウェア対策ソフトからアラートが画面に表示された。アラートは,マルウェア感染らしき異常が認められたというものである。この場合の対応を行う。 シナリオ1は,表2の"[b1]"の段階での対応であり,シナリオ2は,表2の"[b2]"の段階での対応である。 〔演習の実施〕 演習にはソーラシステム部の全メンバーが参加した。Fさんは,メンバーを会議室に招集し,参加者を三つのグループに分けて,ワークショップを実施した。ワークショップでは,Fさんは,ファシリテータとして,参加者に対して二つのシナリオを提示した。参加者はグループごとに,W社のインシデント対応手順に従って取るべきアクションを議論し,発表した。W社のインシデント対応手順は,図1のとおりである。

図1 インシデント対応手順(抜粋)、下線②・注1

各グループのワークショップの発表結果は,表3のとおりである。

表3 ワークショップの発表結果

Fさんは,シナリオ1及びシナリオ2について,適切な対応方法を参加者に解説した。その中で,参加者から,なぜ,通常のOS終了処理ではいけないのかと質問を受けたので,③その理由について説明した。また,演習後に,参加者にアンケートを実施した。 こうして,Fさんは,無事にワークショップを終えた。 〔演習結果の振り返り〕 Fさんが演習中に参加者から受けた質問とFさんの回答は表4のとおりであった。

表4 参加者からの質問及びFさんの回答(抜粋)、空欄c1・c2・d1・d2

〔演習結果の報告〕 Fさんは,演習結果,参加者からの質問及び意見,インシデント対応手順の改善案並びに次回の演習に向けての改善案をまとめ,E部長に報告した。また,Fさんは,④ソーラシステム部の組織の状況などを考慮すると,年1回の演習だけでは十分とはいえないと考えて,演習の頻度を上げることをE部長に提案した。E部長は,Fさんからの提案を受け,演習結果とあわせて提案内容を情報セキュリティ委員会に提出した。 情報セキュリティ委員会は,E部長からの提案を受けて,全社としても,サイバー攻撃を想定した演習を実施することにした。 その後,ソーラシステム部は,大きなインシデントの被害もなく順調に事業を拡大し,W社全体としても,更なる情報セキュリティの強化を図ることができた。

設問4本文中の下線④について,Fさんが考えた理由はどれか。解答群のうち,最も適切なものを選べ。

  1. ア

    ISMS認証を取得しているから

  2. イ

    オフィスの省エネルギーを推進しているから

  3. ウ

    事業に深刻な影響を与えるようなサイバー攻撃を過去に受けたことがあるから

  4. エ

    プロフィットセンタであるから

  5. オ

    毎月,3~4名の従業員を採用しているから

会話形式の解説

講師講師
今回は、ソーラシステム部の情報セキュリティリーダーのFさんが、サイバー攻撃を想定した演習を年1回では足りないと考えた理由を選ぶ問題です。下線部に「ソーラシステム部の組織の状況などを考慮すると」とあるので、まずそこに注目しましょう。
受験者受験者
組織の状況というと、部の人数や体制のことでしょうか。選択肢には本文に出てきた言葉が並んでいて、どれも当てはまりそうに見えます。
講師講師
見るべきはそこです。本文の冒頭に、ソーラシステム部は現在30名で、毎月3~4名を採用して組織が拡大していると書かれています。この部だけの、人に関する状況です。
受験者受験者
毎月人が増えるなら、年1回の演習の後に入った人は、次の演習まで一度も演習を受けないことになりますね。
講師講師
そのとおりです。演習の後に入った人は、最長で約1年、演習を経験しないまま働くことになります。だから回数を増やす必要がある、という筋道になります。正解は「毎月3~4名の従業員を採用しているから」です。
受験者受験者
ISMS認証を取得しているから、という選択肢も、セキュリティの話なので関係がありそうに思えました。
講師講師
ISMS認証は、情報セキュリティの管理体制が規格に沿っていることを第三者が認める仕組みです。ただ、本文では7年前に全社で取得したもので、ソーラシステム部だけの状況ではありません。認証があることは、演習の回数を増やす理由にもなりません。
受験者受験者
プロフィットセンタであるから、も同じように考えればよいですか。
講師講師
はい。プロフィットセンタは利益を生む部門のことで、本文では自動車電装部やガス計測部もそうです。この部だけの事情ではなく、それ自体が年1回で足りない理由を説明してもいません。
受験者受験者
省エネルギーの推進は、ノートPCを選んだりスリープモードを設定したりする話でしたね。演習の回数とは関係がなさそうです。
講師講師
そうです。演習に参加する人や演習の不足とはつながりません。残る「深刻なサイバー攻撃を過去に受けたことがあるから」は、本文に「これまで受けていない」とあるので、事実と逆の内容です。
受験者受験者
本文と逆の選択肢はすぐ外せて、残りは、その部だけの事情か、演習の回数に結び付くかで判断すればよいのですね。
講師講師
そのとおりです。「組織の状況」と問われたら、部門の規模や人の増え方を本文で探してください。全社に共通する事情は、特定の部門の理由にはなりにくいと覚えておくと迷いにくくなります。

まとめ

この問題は、ソーラシステム部でサイバー攻撃を想定した演習を年1回より増やすべきだとFさんが考えた理由を問うものです。本文には、ソーラシステム部が毎月3~4名を採用して組織が拡大していると書かれています。年1回の演習では、演習の後に入った人が最長で約1年、演習を経験しないまま働くことになるため、正解は「毎月3~4名の従業員を採用しているから」です。ISMS認証やプロフィットセンタは全社に共通する事情で、演習の回数を増やす理由にもならず、過去に深刻な攻撃を受けたという選択肢は本文と逆の内容です。

解答・解説

正解はオです

この問題のテーマ

ソーラシステム部の組織の状況から、Fさんが「年1回の演習では足りない」と考えた理由を本文から読み取る問題です。

解き方の考え方

まず、下線④の「ソーラシステム部の組織の状況」を本文の〔ソーラシステム部の状況〕や冒頭の説明で確かめます。冒頭には、ソーラシステム部が現在30名で、毎月3~4名を採用して組織が拡大していると書かれています。次に、各選択肢の内容が「演習の回数を増やす必要」に結び付くかを照らします。人が毎月入れ替わる・増える状況なら、年1回の演習では参加できない人が出ます。そのため、この状況を挙げている選択肢を選びます。

選択肢ごとの解説

  1. ×ア  ISMS認証を取得しているから
    アは、ISMS認証(情報セキュリティの管理体制が規格に沿っていることの第三者認証)の取得を理由にしています。本文では、ISMS認証は7年前に全社で取得したものです。そのため、ソーラシステム部に固有の組織状況ではありません。また、認証を取得していることは、演習の回数を増やす理由になりません。
  2. ×イ  オフィスの省エネルギーを推進しているから
    イは、省エネルギーの推進を理由にしています。本文で省エネルギーは、ノートPCの選定やスリープモードの設定の話として出てきます。一方、演習に参加する人数や演習の不足とは関係がありません。したがって、年1回では足りない理由にはなりません。
  3. ×ウ  事業に深刻な影響を与えるようなサイバー攻撃を過去に受けたことがあるから
    ウは、深刻なサイバー攻撃を過去に受けたことを理由にしています。しかし本文には、事業に深刻な影響を与えるサイバー攻撃はこれまで受けていないと書かれています。肢の内容は本文の事実と逆なので、誤りです。
  4. ×エ  プロフィットセンタであるから
    エは、プロフィットセンタ(利益を生む部門)であることを理由にしています。本文では、自動車電装部やガス計測部もプロフィットセンタです。そのため、ソーラシステム部だけの事情ではありません。また、プロフィットセンタであること自体は、演習が年1回で足りない理由を説明しません。
  5. ○オ  毎月,3~4名の従業員を採用しているから
    オは、毎月3~4名を採用していることを理由にしています。本文冒頭のとおり、ソーラシステム部は毎月採用を続け、組織が拡大しています。演習が年1回だと、演習の後に入った人は次の演習まで最長で約1年、演習を経験しないまま働くことになります。したがって、オが正解です。

POINT

  • 「組織の状況などを考慮すると」と問われたら、本文に書かれた部門の規模や人の増減を探します。
  • 毎月人が加わる組織では、年1回の訓練だと未経験のまま働く期間が長い人が出ます。
  • 全社に共通する事情(ISMS認証、プロフィットセンタという区分)は、特定の部門だけの理由になりにくいです。
  • 選択肢が本文の記述と逆の内容(深刻な攻撃を受けたことがある)なら、その時点で除外できます。

※出典:平成31年度春期 情報セキュリティマネジメント試験 午後 問1 設問4(一部改変)