マナビング情報セキュリティマネジメント

アカウント管理ロールに付ける権限を最小権限の原則で考える

情報セキュリティマネジメント試験 平成31年度春期 午後 問19 / セキュリティ › 情報セキュリティ管理

過去問にチャレンジ

平成31年度春期 午後 問19

問問2の共通の文

企業における情報セキュリティ管理に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 X社は,機械製品及び産業用資材の輸入及び国内販売業務を行う従業員数1,000名の商社であり,機械営業部,資材営業部,総務部,情報システム部などがある。 X社は,数年前に同業他社で発生した情報セキュリティ事故を機に,情報セキュリティ管理に力を入れるようになり,JIS Q 27001に基づく情報セキュリティマネジメントシステム(以下,X社ISMSという)を構築し,ISMS認証を取得している。 X社ISMSでは,副社長である最高情報セキュリティ責任者(CISO)を委員長とする情報セキュリティ委員会を設置し,各部の部長が情報セキュリティ委員会の委員を務めている。また,各部の部長は自部の情報セキュリティリーダーを指名する。情報セキュリティ委員会はX社ISMSの年間活動計画を決定する。 X社ISMSの活動の実務は,各部の情報セキュリティリーダーから構成されるISMSワーキンググループ(以下,ISMS-WGという)が行っている。ISMS-WGのリーダーは,情報システム部のS課長である。ISMS-WGは,年間活動計画に基づき活動するほか,X社ISMS規程などの文書(以下,X社ISMS文書という)の改定案の検討を行う。 〔X社ISMSの年間活動計画〕 4月のある日,今年度初めてのISMS-WG会合が開催され,その席上で,表1に示すX社ISMSの年間活動計画が提示された。また,6月に実施される情報資産目録の見直しについてS課長から説明があった。X社ISMSでは各部において情報資産の名称,管理責任者,重要度,保管場所,保管期間を記した情報資産目録を作成し,毎年見直すことになっている。しかし,毎年見直し後に幾つかの記載の過不足が見つかっていることから,見直し後の記載に過不足がないことをよく確認するよう,改めてS課長がISMS-WGのメンバーに対して注意を促した。

表1 X社ISMSの年間活動計画(抜粋)、下線①・注1

〔販路拡大のための施策〕 最近になって,主な取引先である海外のY社が,新製品として個人向けの3Dプリンタ(以下,3DPという)を開発した。これまでX社は個人向けには製品を販売していなかったが,機械営業部では3DPの個人向け販売を販路拡大の機会と捉え,そのための施策を検討した。その結果を表2に示す。

表2 販路拡大のための施策

機械営業部の情報セキュリティリーダーであるT課長は,これらの施策に係る情報セキュリティリスクアセスメントの実施とリスク対応が必要と考え,S課長に相談したところ,表3のようなアドバイスを受けた。

表3 S課長のアドバイス(抜粋)、下線②・空欄a

S課長のアドバイスを受け,T課長は個人向け通信販売については,案2を採用し,外部のオンラインショッピングサイトを利用するのがよいと考えた。利用するシステムの詳細が固まった後に改めて情報セキュリティリスクアセスメントを行い,ISMS-WGに確認してもらうことにした。 次に,S課長とT課長はSNSを利用した情報提供に起因するリスクについて検討することにした。S課長は,T課長に次のリスクを説明した。 リスク1 X社の従業員が,X社公式アカウントを用いてX社の信用及び評判を低下させるような投稿を行う。 リスク2 第三者がX社公式アカウントを装い,X社の信用及び評判を低下させるような投稿を行う。 リスク3 第三者がX社公式アカウントを乗っ取り,X社の信用及び評判を低下させるような投稿を行う。 S課長の説明を聞いたT課長は,機械営業部だけでこれらのリスクに対応することは困難と判断した。そこで,SNSを利用した情報提供に起因するリスクについては,全社的な対策を立案するようS課長に依頼した。 また,S課長は,業務外でのSNSの個人利用についても,次のようなリスクがあることをT課長に説明した。 リスク4 X社の従業員が,X社の信用及び評判を損なうような不用意な投稿を行う。 リスク5 X社の従業員が,その投稿から③X社及び従業員の情報を攻撃者に推測され,X社に対する標的型攻撃の手掛かりにされるような不用意な投稿を行う。 これらのリスクを踏まえ,T課長は,業務外でのSNSの個人利用についても,従業員向けに何らかの指針を示すのがよいのではないかとS課長に提言した。S課長は,SNSの利用に関するルールを立案し,ISMS-WGで検討することにした。 〔SNSの利用に関する情報セキュリティ対策〕 数日後,S課長はX社公式アカウントの運用に関する情報セキュリティ対策の案を作成した。その内容を表4に示す。

表4 公式アカウントの情報セキュリティ対策、空欄b1〜c3

また,S課長は,SNSの個人利用に関する指針を策定し,12月に実施する従業員向け情報セキュリティ教育の内容に含めることにした。SNSの個人利用を一律に禁止することは適切でないので,この指針では,法令及び雇用契約上の要求事項の観点から従業員が順守すべき事項と,SNSの利用に当たって従業員が実施することが推奨される事項に分けて記載することにした。その概要を表5に示す。

表5 個人アカウントの利用指針、空欄d1〜e3

X社公式アカウントの運用に関する情報セキュリティ対策及びSNSの個人利用に関する指針は,ISMS-WGでの検討を経て情報セキュリティ委員会において承認された。 〔オンラインショッピングサイトの利用〕 機械営業部は,大手通信販売業者であるZ社のオンラインショッピングサイト(以下,Zショップという)を利用して個人向けに3DP及びオプション品を販売することにした。Zショップでは,消費者向けサイト以外にも各出品者用にポータルサイトを提供している。 X社には,Z社からX社専用のポータルサイト(以下,X社ポータルという)へのアクセス権が付与され,X社ポータルを利用する業務担当者用アカウントを追加又は削除可能な管理者用アカウントが一つ設定された。この管理者用アカウントでは,X社ポータルの他の機能を利用する個々の業務担当者用アカウントの管理だけを行うことにした。X社ポータルで業務担当者用アカウントを追加すると,その業務担当者のメールアドレスに対して電子メールが送信され,初期パスワードの変更が促される。X社ポータルで利用可能な機能とその内容を表6に示す。

表6 ポータルサイトの機能と内容

機械営業部では,X社ポータルで表7に示すロールを新たに登録することにした。

表7 ロールと作業内容

アカウントにロールを設定された業務担当者は,自分の業務用PCでX社ポータルにアクセスし,利用権限を付与された機能を利用して作業を行う。 機械営業部では,表6及び表7を基に,各ロールに付与する利用権限を検討することにした。その案を表8に示す。

表8 ロールの利用権限、◎・○・×の注記・注1

X社ISMSでは,今回のように業務を大きく変更する場合は,情報セキュリティリスクアセスメントを実施し,リスク対応を行うことになっている。そこで,この案について,T課長がS課長に相談したところ,次の指摘を受けた。 指摘1 発送担当者ロールを割り当てられた業務担当者は業務で購入者情報を扱うので,その業務担当者の業務用PCに購入者情報が蓄積されるおそれがあり,対策が必要である。 指摘2 X社ポータル管理者ロールの利用権限が過大であり,不正が起こるおそれがある。X社ポータル管理者ロールの利用権限を分割すべきである。 これらの指摘を受け,T課長は,指摘1については,発送担当者ロールを割り当てられた業務担当者に対して業務用PCに蓄積された購入者情報の利用後の削除を徹底させるとともに,購入者情報が蓄積されていないことを上長に定期的に点検させることにした。また,指摘2については,表8を見直してX社ポータル管理者ロールの利用はやめるとともに,アカウント管理を含むX社ポータルの各機能の利用状況のモニタリングを行うために,新たなロールを追加することにした。追加する新たなロールとそのロールに付与する利用権限の案を,表9に示す。

表9 新ロールの利用権限、空欄f1・f2・g1・g2

これらの案はISMS-WGで検討され,情報セキュリティ委員会の承認を得て,Zショップで3DPの販売が開始されることになった。 その後,Zショップからの新製品の販売は順調に進んでいる。

設問4〔オンラインショッピングサイトの利用〕について,(1)~(2)に答えよ。 (1) 表9中の[f1],[f2]に入れる記号の適切な組合せを,fに関する解答群の中から選べ。ここで,◎,○及び×は表8の注記と同一である。

  1. ア

    f1:◎、f2:◎

  2. イ

    f1:◎、f2:○

  3. ウ

    f1:◎、f2:×

  4. エ

    f1:○、f2:◎

  5. オ

    f1:○、f2:○

  6. カ

    f1:○、f2:×

  7. キ

    f1:×、f2:◎

  8. ク

    f1:×、f2:○

  9. ケ

    f1:×、f2:×

会話形式の解説

講師講師
今回は、通販サイトの出品者用ポータルで、権限が大きすぎる管理者ロールをやめた後の話です。新しく作るアカウント管理ロールに、売上管理とアカウント管理の権限をどう付けるかを選びます。
受験者受験者
管理者ロールは全部の機能が編集できる設定でした。それを分けるのだから、アカウント管理ロールにも売上ぐらいは見せてよい気がします。
講師講師
そこが考えどころです。最小権限の原則、つまり「その職務に必要な権限だけを与える」という考え方で判断します。まず、アカウント管理ロールの職務を表6で確かめましょう。
受験者受験者
表6のアカウント管理機能は、業務担当者用アカウントの追加、ロールの登録と削除、ロールへの権限付与、アカウントへのロール設定です。売上は出てきません。
講師講師
そのとおりです。売上情報はこのロールの職務で扱わないので、売上管理の欄は閲覧も含めて付けない、つまり×が適切です。
受験者受験者
閲覧だけの○でもだめですか。見るだけなら害は少ないように思えます。
講師講師
見るだけでも、職務に要らない権限は与えません。それに、各機能の利用状況を確かめる役目は、同じ表9で一緒に追加するモニタリングロールが担います。アカウント管理ロールが見る必要はありません。
受験者受験者
では、アカウント管理の欄は○で十分でしょうか。閲覧できれば管理しているといえそうです。
講師講師
表6の注記では、閲覧は「見られるがダウンロードと編集はできない」権限です。アカウントの追加やロール設定は情報を書き換える作業なので、編集の◎が必要です。
受験者受験者
×にすると、どうなりますか。
講師講師
表8を見ると、アカウント管理の欄が×でないのは管理者ロールだけです。その管理者ロールをやめるので、ここも×だとアカウントの追加やロール設定ができるロールがなくなってしまいます。
受験者受験者
つまり売上管理は職務外なので×、アカウント管理は追加とロール設定に編集が要るので◎ですね。f1が×、f2が◎の組合せになります。
講師講師
正解です。f1が◎や○の組合せは、f2が◎であってもf1が不要な権限なので誤りです。f1が×でもf2が○や×なら、アカウント管理の作業ができないので誤りになります。
受験者受験者
権限が集中した管理者ロールを職務ごとに分けるのは、不正を防ぐためでもあるのですね。
講師講師
はい。分けたうえで、それぞれに必要な機能の権限だけを付けることが大切です。閲覧と編集のどちらが要るかは、作業内容で判断しましょう。

まとめ

管理者ロールの権限が大きすぎるため、それを分けて新設するアカウント管理ロールの権限を考える問題です。表6によると、このロールの職務はアカウントの追加、ロールの登録と権限付与、ロール設定で、売上情報は扱いません。最小権限の原則から、売上管理は閲覧も含めて×とします。一方、アカウントの追加やロール設定は情報の編集にあたるため、アカウント管理は◎が必要です。したがって、f1が×、f2が◎の組合せ(キ)が正解です。

解答・解説

正解はキです

この問題のテーマ

X社ポータル管理者ロールの権限を分けるために新設する「アカウント管理ロール」に、売上管理(f1)とアカウント管理(f2)のどの権限を付けるかを問う問題です。

解き方の考え方

最初に、表6でアカウント管理機能の作業を確認します。作業はアカウントの追加、ロールの登録と権限付与、アカウントへのロール設定です。次に、最小権限の原則(職務に必要な権限だけを与える考え方)と照らします。この原則でf1とf2を順に決めます。

選択肢ごとの解説

  1. ×ア  f1:◎、f2:◎
    f1が◎だと、アカウント管理ロールが売上情報を編集できます。このロールの職務は売上情報を扱いません。したがって、過大な権限になり誤りです。
  2. ×イ  f1:◎、f2:○
    f1の◎は、職務にない売上情報の編集権限を与えます。そのため、f2に関係なく誤りです。
  3. ×ウ  f1:◎、f2:×
    f1の◎は不要な編集権限です。さらにf2が×だと、アカウントの追加やロール設定ができるロールがなくなります。したがって誤りです。
  4. ×エ  f1:○、f2:◎
    f1が○でも、売上情報の閲覧はアカウント管理の職務に要りません。不要な権限を与えるので誤りです。
  5. ×オ  f1:○、f2:○
    f1の○は不要な閲覧権限です。また、f2が○(閲覧のみ)では、アカウントを追加できません。したがって誤りです。
  6. ×カ  f1:○、f2:×
    f1の○は不要な権限です。そのうえ、f2が×ではアカウント管理の作業ができません。したがって誤りです。
  7. ○キ  f1:×、f2:◎
    f1を×にすれば、職務にない売上情報への権限を与えずに済みます。一方、管理者ロールをやめた後は、アカウント管理ロールがアカウントの追加やロール設定を担います。その作業には編集が必要なので、f2は◎です。したがって、キが正解です。
  8. ×ク  f1:×、f2:○
    f1の×は適切です。しかし、f2が○(閲覧のみ)では、アカウントの追加やロールの付与ができません。したがって誤りです。
  9. ×ケ  f1:×、f2:×
    f1の×は適切です。しかし、f2が×だと、アカウント管理の編集権限を持つロールがなくなります。したがって誤りです。

POINT

  • ロールには、その職務に必要な機能の権限だけを付けます(最小権限の原則)。
  • 権限が集中した管理者ロールは、職務ごとに分けると不正の防止につながります。
  • アカウントの追加やロール設定には「閲覧」ではなく「編集」の権限が必要です。

※出典:平成31年度春期 情報セキュリティマネジメント試験 午後 問2 設問4(1)(一部改変)