マナビング情報セキュリティマネジメント

電子計算機損壊等業務妨害罪とほかの法律の違いを整理する

情報セキュリティマネジメント試験 令和8年度 問7 / 法務 › セキュリティ関連法規

過去問にチャレンジ

令和8年度 問7

刑法の電子計算機損壊等業務妨害に該当する行為はどれか。

  1. ア

    自社のWebサイトで海賊版のソフトウェアを故意に販売した。

  2. イ

    存在しない商品をインターネットのオークションサイトに故意に出品し,落札者に現金を振り込ませてだまし取った。

  3. ウ

    他人の著作物を著作者に許可なく,引用元の記載もせずに,営業目的の自社のWebサイトに故意に掲載した。

  4. エ

    プロバイダのサーバに侵入し,サーバに保管されていたある企業が業務に使用しているWebページの内容を故意に消去したり,書き換えたりした。

会話形式の解説

講師講師
今回は刑法の電子計算機損壊等業務妨害罪がテーマです。選択肢はどれもインターネットやWebサイトが関係していますが、それぞれの行為で「何が害されているか」に注目すると区別できます。
受験者受験者
どの選択肢もネットを使った悪いことなので、全部当てはまりそうに見えて迷いました。そもそもこの罪はどんな行為が対象なのですか。
講師講師
刑法234条の2に定められていて、業務に使われるコンピュータや電磁的記録、つまりデータを壊したり不正な指令を与えたりして業務を妨害する行為が対象です。中心にあるのは、コンピュータやデータそのものへの加害です。
受験者受験者
そうすると、海賊版ソフトウェアを販売する行為は違いますね。無断で複製した物を売っているので、著作権法の問題だと思います。
講師講師
その通りです。他人の著作物を許可なく、引用元も書かずに自社のWebサイトに掲載する行為も同じく著作権侵害です。載せているだけで、業務用のデータを壊したり改ざんしたりはしていません。
受験者受験者
存在しない商品をオークションに出品して代金を振り込ませる行為は、ネット上の犯罪なので業務妨害に入るのではと一瞬考えました。
講師講師
そこが引っかけやすいところです。この行為の本質は、人をだまして財物を交付させることなので詐欺罪に当たります。手段がインターネットでも、コンピュータやデータに害を加えているわけではありません。
受験者受験者
残るのは、プロバイダのサーバに侵入して企業のWebページを消去したり書き換えたりする行為ですね。ただ、サーバはプロバイダのものなのに、企業の業務妨害になるのですか。
講師講師
良い疑問です。サーバを管理しているのがプロバイダでも、消されたり書き換えられたりしたのは企業が業務に使っているWebページのデータです。業務用の電磁的記録を損壊して業務を妨害しているので、この行為が電子計算機損壊等業務妨害罪に当たります。
受験者受験者
なるほど。権利の侵害なら著作権法、だまして取るなら詐欺罪、業務用のデータを壊したり書き換えたりするなら業務妨害、と分ければよいのですね。
講師講師
はい、その整理で大丈夫です。補足すると、一つの行為が複数の法律に触れることもあります。今回の正解の行為も、サーバに侵入する段階では不正アクセス禁止法違反にも問われ得ます。Webサイトの改ざんやデータの消去、サービスを止める攻撃はこの罪の代表例として覚えておきましょう。「Webサイト」という言葉だけで決めつけず、コンピュータやデータそのものに害を加えているかで判断するのがコツです。

まとめ

刑法の電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2)は、業務に使われるコンピュータやデータを損壊したり不正な指令を与えたりして業務を妨害する行為が対象です。企業が業務に使っているWebページを消去・改ざんする行為はこれに当たり、サーバをプロバイダが管理していても被害を受けるのは企業の業務です。海賊版の販売や著作物の無断掲載は著作権法、架空出品で代金をだまし取る行為は詐欺罪として整理します。サーバへの侵入は不正アクセス禁止法違反にも問われ得るなど、一つの行為が複数の法律に触れることもあります。

解答・解説

正解はエです

この問題のテーマ

刑法の電子計算機損壊等業務妨害罪に当たる行為を、ほかの法律(著作権法・詐欺罪など)に当たる行為と区別できるかを問う問題です。

解き方の考え方

まず、この罪の中心を押さえます。業務に使われるコンピュータや電磁的記録(データ)を壊したり不正な指令を与えたりして、業務を妨害する行為が対象です。次に、各選択肢で「何が害されているか」を見ます。権利の侵害なのか、だまして財物を取る行為なのか、業務用のデータへの加害なのかを分ければ、データを消去・書換えしているものが一つだけ残ります。

選択肢ごとの解説

  1. ×ア  自社のWebサイトで海賊版のソフトウェアを故意に販売した。
    海賊版ソフトウェアの販売は、無断で複製した物を売る行為なので著作権法違反に当たります。コンピュータやデータを壊して業務を妨害する行為ではないため、電子計算機損壊等業務妨害罪の典型例ではありません。
  2. ×イ  存在しない商品をインターネットのオークションサイトに故意に出品し,落札者に現金を振り込ませてだまし取った。
    存在しない商品を出品して代金を振り込ませる行為は、人をだまして財物を交付させるものなので詐欺罪に当たります。インターネットを使っていても、行為の本質は人を欺くことです。
  3. ×ウ  他人の著作物を著作者に許可なく,引用元の記載もせずに,営業目的の自社のWebサイトに故意に掲載した。
    他人の著作物を許可なく、引用元の記載もせずにWebサイトに載せる行為は、著作権侵害に当たります。掲載するだけでは業務用のデータを壊したり改ざんしたりしていないので、業務妨害の罪には当たりません。
  4. ○エ  プロバイダのサーバに侵入し,サーバに保管されていたある企業が業務に使用しているWebページの内容を故意に消去したり,書き換えたりした。
    企業が業務に使っているWebページの内容を消去したり書き換えたりする行為は、業務用の電磁的記録を損壊して業務を妨害するものなので、電子計算機損壊等業務妨害罪に当たります。サーバをプロバイダが管理していても、被害を受けるのは企業の業務です。なお、サーバへの侵入は不正アクセス禁止法違反にも問われ得ます。

補足

一つの行為が複数の法律に触れることがあります。エのように、サーバに侵入する段階では不正アクセス禁止法違反、データを書き換える段階では業務妨害の罪、というように重なることもあります。選択肢に「インターネット」や「Webサイト」とあるだけで業務妨害だと決めつけず、コンピュータやデータそのものに害を加えているかで判断しましょう。

POINT

  • 電子計算機損壊等業務妨害罪は刑法234条の2に定められており、業務用のコンピュータやデータを損壊したり不正な指令を与えたりして業務を妨害する行為が対象です。
  • Webサイトの改ざんやデータの消去、サービスを止める攻撃は、この罪に当たり得る代表例です。
  • 海賊版の販売や著作物の無断掲載は、著作権法の問題として整理します。
  • ネット上の架空出品で代金をだまし取る行為は、手段がネットでも詐欺罪です。

※出典:令和8年度 情報セキュリティマネジメント試験 科目A 問7