CSRの投資で便益を受けるステークホルダの見分け方
情報セキュリティマネジメント試験 2022年 サンプル問題 問46 / 企業活動 › 経営・組織論
過去問にチャレンジ
製造業の企業が社会的責任を果たす活動の一環として,雇用創出や生産設備の環境対策に投資することによって,便益を享受するステークホルダは,株主,役員,従業員に加えて,どれか。
- ア
近隣地域社会の住民
- イ
原材料の輸入元企業
- ウ
製品を購入している消費者
- エ
取引をしている下請企業
会話形式の解説
講師今回は企業の社会的責任、略してCSRの問題です。CSRは、企業が利益を追うだけでなく、社会や環境にも配慮して責任を果たすという考え方です。注目してほしいのは、投資の中身が「雇用創出」と「生産設備の環境対策」の二つだという点です。
受験者選択肢を見ると、輸入元企業も消費者も下請企業も、みんな企業と関わりがありそうです。ステークホルダ、つまり利害関係者かどうかで考えると、私はどれも当てはまる気がして迷いました。
講師そこがつまずきやすいところです。選択肢はいずれも企業と関わりのある主体なので、「関係者かどうか」では絞れません。この問題では「その投資の効果が誰に直接届くか」を考えます。まず雇用創出は、どこに働き口を生むと思いますか。
受験者工場で人を雇うなら、工場の周辺の地域に求人が出ますね。地域の経済も活気づきそうです。
講師そのとおりです。では、生産設備の環境対策はどうでしょう。
受験者工場から出る排出物などが減れば、周りの生活環境が良くなります。そうすると、二つの効果を両方とも受けるのは、工場の近くに住んでいる人たちになりますね。
講師はい、それで近隣地域社会の住民が正解です。ほかの選択肢も確認しておきましょう。原材料の輸入元企業は、取引関係のうえでのステークホルダです。地域の雇用や工場の環境投資から直接の便益を受ける立場ではありません。
受験者消費者はどうでしょうか。環境に配慮した会社の製品を買えるのは、消費者にとっても良いことのように思えます。
講師消費者は、製品の品質や価格を通じて企業と関わる立場です。地域の雇用や工場周辺の環境改善は、広く製品を買う消費者よりも、工場の近くに住む人々に直接及ぶ効果です。ですから、直接の受益者としては地域住民のほうが適しています。下請企業も大切なステークホルダですが、今回の投資は下請との取引条件を改善するものではないので、やはり当てはまりません。
受験者全員が関係者に見えても、施策の効果がまっすぐ届く相手は誰かを具体的に考えれば、答えが一つに絞れるということですね。
講師そうです。ステークホルダには株主、従業員、顧客、取引先、地域社会など幅広い主体が含まれます。受益者を問われたら、施策ごとに「誰にどんな良い影響があるか」を思い描いてください。なお、環境保護や地域貢献といったCSR活動は、結果として企業イメージや企業価値の向上にもつながるとされています。
まとめ
この問題は、製造業の企業がCSR活動として雇用創出と生産設備の環境対策に投資したとき、株主・役員・従業員以外で便益を受けるステークホルダを問うものです。雇用創出は工場周辺の地域に求人を生み、環境対策は周辺の生活環境を改善するため、両方の効果を直接受けるのは近隣地域社会の住民です。輸入元企業や下請企業は取引関係のうえでの関係者、消費者は製品を通じて関わる立場で、この投資の直接の受益者とはいえません。どの選択肢も企業と関わりがあるため、「関係者かどうか」ではなく「効果が誰に直接届くか」で判断するのがポイントです。
解答・解説
正解はアです
この問題のテーマ
企業の社会的責任(CSR)の考え方を踏まえて、雇用創出や生産設備の環境対策への投資から便益を受けるステークホルダを見分けられるかを問う問題です。
解き方の考え方
まず、設問にある二つの投資「雇用創出」と「生産設備の環境対策」が、誰にどんな良い影響を与えるかを具体的に考えます。雇用創出は工場の周辺地域に働き口を生み、環境対策は工場周辺の生活環境を良くします。この二つの効果を両方とも直接受ける立場を選択肢から探すと、工場の近くに住む人々にたどり着きます。取引先や顧客は、この投資の直接の受益者とはいえません。
選択肢ごとの解説
- ○ア 近隣地域社会の住民近隣地域社会の住民という選択肢は、二つの投資の効果を直接受ける立場です。雇用創出によって地域に求人が生まれて地域経済が活性化し、環境対策によって周辺の生活環境が改善されます。株主・役員・従業員以外で便益を受けるのは、この地域住民です。
- ×イ 原材料の輸入元企業原材料の輸入元企業は、製造業の企業と取引をする相手です。地域での雇用や工場の環境対策から直接の便益を受ける立場ではありません。設問の投資と輸入元との取引には直接の関係がありません。
- ×ウ 製品を購入している消費者製品を購入している消費者は、製品の品質や価格を通じて企業と関わる立場です。地域の雇用や工場周辺の環境改善は、広く製品を買う消費者よりも、工場の近くに住む人々に直接及ぶ効果です。そのため、この投資の直接の受益者としては地域住民のほうが適しています。
- ×エ 取引をしている下請企業取引をしている下請企業も重要なステークホルダですが、設問の投資は下請との取引条件を改善するためのものではありません。雇用創出や環境対策の便益を直接受けるのは、下請企業ではなく地域社会です。
補足
選択肢はどれもステークホルダに当たるため、「ステークホルダかどうか」で判断すると迷ってしまいます。この問題では「その投資で直接便益を受けるのは誰か」を絞り込むことが大切です。CSR活動には環境保護や地域貢献などがあり、結果として企業イメージや企業価値の向上にもつながるとされています。
POINT
- CSRは、企業が利益を追うだけでなく、社会や環境にも配慮して責任を果たすという考え方です。
- ステークホルダには株主・従業員・顧客・取引先・地域社会など、企業と利害関係をもつ幅広い主体が含まれます。
- 雇用創出は工場周辺の地域に求人を生み、地域経済の発展につながります。
- 生産設備の環境対策は、周辺の生活環境を改善し、近隣住民に恩恵を与えます。
- 受益者を問われたら、その施策の効果が誰に直接届くかを具体的に考えるのが解き方の基本です。
