マナビング情報セキュリティマネジメント

委託開発したプログラムの著作権の原始的帰属を考える

情報セキュリティマネジメント試験 令和元年度秋期 午前 問34 / 法務 › 知的財産権

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令和元年度秋期 午前 問34

A社は,B社と著作物の権利に関する特段の取決めをせず,A社の要求仕様に基づいて,販売管理システムのプログラム作成をB社に委託した。この場合のプログラム著作権の原始的帰属に関する記述のうち,適切なものはどれか。

  1. ア

    A社とB社が話し合って帰属先を決定する。

  2. イ

    A社とB 社の共有帰属となる。

  3. ウ

    A社に帰属する。

  4. エ

    B社に帰属する。

会話形式の解説

講師講師
今回は、外部に委託して作らせたプログラムの著作権が、最初に誰のものになるかという問題です。最初に権利を持つ人が決まることを「原始的帰属」といいます。権利について特段の取決めをしていない、という条件に注目してください。
受験者受験者
私は、お金を払って仕様も出したA社のものになると思いました。注文した側が権利を持つのが自然な気がします。
講師講師
そう感じる人は多いです。ただ、著作権には「実際に著作物を創作した者に最初に帰属する」という原則があります。この問題で、実際にプログラムを作成したのはどちらでしょうか。
受験者受験者
作ったのは委託を受けたB社です。A社は要求仕様を示して発注しただけですね。
講師講師
そのとおりです。仕様を示したり費用を払ったりしただけでは、発注者は著作者になりません。さらに取決めがないので、契約で権利をA社に移す話もありません。ですから、B社に帰属するという選択肢が正解です。
受験者受験者
では、A社とB社の共有になるという選択肢はどうですか。A社も仕様という形で関わっているので、半分ずつになりそうにも思えます。
講師講師
発注者と受託者という関係があるだけでは、自動的に共有にはなりません。共有になるのは、両者が共同で創作した場合などです。本問にはそうした事実がないので誤りです。
受験者受験者
話し合って帰属先を決めるという選択肢も、取決めがないなら後で決めればいい、という意味に読めて迷いました。
講師講師
原始的な帰属は、誰が創作したかという事実で決まります。後の協議で決まるものではありません。それに、問題文は取決めがない前提で、合意があることも示されていないので、これも誤りです。
受験者受験者
整理すると、取決めがなければ実際に作った受託者に著作権があり、発注者が権利を持ちたいなら、契約で譲渡を受けるか利用の許諾を得る必要がある、ということですね。
講師講師
はい、その理解で大丈夫です。補足すると、著作権は創作した時点で発生し、申請や登録はいりません。そのため実務の委託契約では、著作権を発注者に譲渡する特約や、著作者人格権を行使しない旨の条項を入れておくことが大切です。
受験者受験者
仕様を出したことで、アイデアの部分はA社のものになる、ということもないのでしょうか。
講師講師
著作権が保護するのは、アイデアではなく実際に作られた表現です。もう一つ、自社の従業員が作成した場合は、一定の要件を満たせば職務著作として法人が著作者になることがあります。社内の従業員が作る場合と外部に委託する場合とでは考え方が異なるので、誰が作ったかを確認しましょう。

まとめ

外部に委託して作ったプログラムの著作権は、特段の取決めがなければ、実際に創作した受託者に原始的に帰属します。発注者が仕様を示したり費用を払ったりしても、それだけでは著作者にはなりません。発注と受託の関係があるだけでは共有にもならず、帰属先が後の話し合いで決まるわけでもありません。発注者が権利を持ちたい場合は、契約で著作権の譲渡や著作者人格権の不行使を定めておく必要があります。なお、社内の従業員が作成した場合は職務著作として法人が著作者になることがあり、外部委託とは考え方が異なります。

解答・解説

正解はエです

この問題のテーマ

外部に委託してプログラムを作らせ、権利について何も取り決めていない場合に、著作権が最初に誰のものになるか(原始的帰属)を問う問題です。

解き方の考え方

まず「著作権は、実際に著作物を創作した者に最初に帰属する」という原則を思い出します。次に問題文から、誰が実際にプログラムを作成したかを確かめます。作成したのは受託者のB社で、A社は要求仕様を示して発注しただけです。そのうえ「特段の取決めをせず」とあるので、契約で権利を移す話もありません。したがって、著作権はB社に帰属すると判断できます。

選択肢ごとの解説

  1. ×ア  A社とB社が話し合って帰属先を決定する。
    話し合って帰属先を決めるという説明は誤りです。原始的な帰属は、誰が創作したかという事実で決まり、後の協議で決まるものではありません。また、問題文は取決めがない前提なので、合意があることも示されていません。
  2. ×イ  A社とB 社の共有帰属となる。
    共有帰属になるという説明は誤りです。発注者と受託者の関係があるだけでは、著作権は自動的に共有にはなりません。共有になるのは両者が共同で創作した場合などで、本問にはそうした事実がありません。
  3. ×ウ  A社に帰属する。
    発注者のA社に帰属するという説明は誤りです。仕様を示したり費用を払ったりしただけでは、発注者は著作者になりません。A社が権利を得るには、契約で譲渡を受けるか、利用の許諾を得る必要があります。
  4. ○エ  B社に帰属する。
    受託者のB社に帰属するという説明が正解です。特段の取決めがなければ、実際にプログラムを創作したB社に著作権が原始的に帰属します。

補足

著作権は創作した時点で発生し、申請や登録は必要ありません。そのため実務の委託契約では、著作権を発注者に譲渡する特約や、著作者人格権を行使しない旨の条項を入れておくことが大切です。参考までに、自社の従業員が作成した場合は、一定の要件を満たせば職務著作として法人が著作者になることがあります。ただし、外部に委託した本問には当てはまりません。

POINT

  • 著作権は、著作物を実際に創作した者に原始的に帰属します。
  • 委託開発でも、取決めがなければ著作権は制作した受託者のものになります。
  • 仕様の提示や費用の支払いだけでは、発注者は著作者になりません。
  • 発注者が権利を持ちたい場合は、契約で著作権の譲渡などを定めておく必要があります。
  • 著作権が保護するのはアイデアではなく、実際に作られた表現です。

※出典:令和元年度秋期 情報セキュリティマネジメント試験 午前 問34