ISMSのインシデント管理で、事象の報告と分類はどう考えるか
ITパスポート試験 令和8年度 問70 / セキュリティ › 情報セキュリティ管理
過去問にチャレンジ
ISMSにおける情報セキュリティインシデントの管理に関する記述のうち,適切なものはどれか。
- ア
情報セキュリティインシデントには臨機応変な対応が求められるので,あらかじめ対応手順を文書化しておくのではなく,実際の対応内容を記録する。
- イ
情報セキュリティインシデントから得られた知識は,模倣を防ぐために情報セキュリティの管理策の強化には用いない。
- ウ
情報セキュリティ事象は,その評価を待つことなく,報告された時点で情報セキュリティインシデントに分類される。
- エ
情報セキュリティ事象は,適切な管理者へ速やかに報告するために,あらかじめその連絡経路と仕組みを用意しておく。
会話形式の解説
講師今回はISMS、つまり情報セキュリティを組織的に管理する仕組みのなかで、インシデントをどう扱うかがテーマです。「情報セキュリティ事象」と「情報セキュリティインシデント」の違いに注目してください。
受験者その2つは同じ意味だと思っていました。カタカナ語と漢字が混ざっていて、区別があいまいなままです。
講師事象は、情報セキュリティに関係する出来事を広く指す言葉です。報告された事象をまず評価して、その結果インシデントに当たるかどうかが決まります。順序は「報告、評価、分類」です。
受験者そうなると、報告された時点でインシデントに分類されるという選択肢は、評価を飛ばしているので誤りですね。
講師そのとおりです。報告された事象がすべて、そのままインシデントになるわけではありません。
受験者臨機応変な対応が必要だから手順は文書化せず、実際の対応内容を記録するという選択肢は、現場の感覚としてはありそうに思えました。
講師もっともらしく聞こえますが、誤りです。臨機応変な判断が要る場面があっても、インシデント対応は事前に文書化した手順に沿って行うのが原則です。後から記録を残すだけでは、手順を整えたことの代わりになりません。
受験者模倣を防ぐために、インシデントから得た知識を管理策の強化に使わないという選択肢も、理由がもっともらしいので迷いました。
講師インシデントから得た知識は、再発防止や管理策の改善に生かすべきものです。教訓を改善に使わないのはISMSの考え方に反するので、これも誤りです。
受験者残るのは、事象を適切な管理者へ速やかに報告できるよう、連絡経路と仕組みをあらかじめ用意しておくという選択肢ですね。
講師はい、これが適切です。報告先や連絡経路、報告のタイミング、書式などを事前に決めておけば、いざというときに迷わず報告できます。
受験者まとめると、事前に備えて、手順に沿って対応し、得た教訓を改善に生かす、という流れに合うものを選べばよいのですね。
講師そう考えると見分けやすくなります。「臨機応変」や「模倣防止」のような理由づけで原則を否定する選択肢には注意が必要です。事象とインシデントを同じものとして扱う記述にも気をつけてください。
まとめ
ISMSのインシデント管理では、情報セキュリティ事象を適切な管理者へ速やかに報告できるよう、連絡経路と仕組みを事前に用意しておくことが適切です。事象は報告されたあとに評価を受け、その結果でインシデントかどうかが決まるため、報告した時点で自動的にインシデントになるわけではありません。インシデントへの対応は事前に文書化した手順に沿って行い、得た知識は再発防止や管理策の改善に生かします。「臨機応変」や「模倣防止」のようなもっともらしい理由で、これらの原則を否定する選択肢に注意しましょう。
解答・解説
正解はエです
この問題のテーマ
ISMSでの情報セキュリティインシデント管理について、事象の報告体制、事象からインシデントへの分類、対応手順の文書化、教訓の活用という基本の考え方を正しく理解しているかを問う問題です。
解き方の考え方
まず「情報セキュリティ事象」と「情報セキュリティインシデント」の違いを整理します。事象は報告されたあとに評価を受け、その結果でインシデントかどうかが決まります。そのうえで、ISMSの基本は「事前に備え、手順に沿って対応し、得た教訓を改善に生かす」ことだと押さえます。この考え方に反する選択肢を外していけば、残るのは報告経路を事前に整えるという記述です。
選択肢ごとの解説
- ×ア 情報セキュリティインシデントには臨機応変な対応が求められるので,あらかじめ対応手順を文書化しておくのではなく,実際の対応内容を記録する。アの「臨機応変さが必要なので、手順を文書化せずに対応内容だけを記録する」という説明は誤りです。臨機応変な判断が求められる場面があっても、インシデント対応は事前に文書化した手順に沿って行うのが原則です。対応内容を後から記録するだけでは、手順を整備したことの代わりにはなりません。
- ×イ 情報セキュリティインシデントから得られた知識は,模倣を防ぐために情報セキュリティの管理策の強化には用いない。イの「模倣を防ぐため、インシデントから得た知識を管理策の強化に使わない」という説明は誤りです。インシデントから得た知識は、再発防止や管理策の改善に生かすべきものです。模倣の防止を理由に教訓を改善へ使わないのは、ISMSの考え方に反します。
- ×ウ 情報セキュリティ事象は,その評価を待つことなく,報告された時点で情報セキュリティインシデントに分類される。ウの「事象は評価を待たず、報告された時点でインシデントに分類される」という説明は誤りです。報告された事象はまず評価され、その結果によってインシデントに当たるかどうかが決まります。報告された事象がすべて、そのままインシデントになるわけではありません。
- ○エ 情報セキュリティ事象は,適切な管理者へ速やかに報告するために,あらかじめその連絡経路と仕組みを用意しておく。エの「速やかに報告できるよう、連絡経路と仕組みをあらかじめ用意しておく」という説明は適切です。情報セキュリティ事象は、適切な管理者へ速やかに報告する必要があります。そのため、報告先や連絡経路、報告のタイミング、書式などを事前に決めておきます。
補足
この分野では、「臨機応変」「模倣防止」のようにもっともらしい理由を挙げて、ISMSの原則(事前の準備と継続的な改善)を否定する選択肢がよく出ます。また、「事象」と「インシデント」を同じものとして扱う記述も典型的な引っかけです。「報告」→「評価」→「分類」という順序を覚えておくと見分けやすくなります。
POINT
- 情報セキュリティ事象は、情報セキュリティに関係する出来事を広く指す言葉で、評価を経てインシデントに分類されます。
- 事象は適切な管理者へ速やかに報告し、そのための連絡経路と仕組みは事前に整えておきます。
- インシデントへの対応は、あらかじめ文書化した手順に沿って行います。
- インシデントから得た知識は、再発防止や管理策の改善に活用します。
