他人受入率と本人拒否率の高低と、安全性・利便性の関係
ITパスポート試験 令和8年度 問80 / セキュリティ › 情報セキュリティ対策・実装技術
過去問にチャレンジ
バイオメトリクス認証に関する次の記述中のa,bに入れる字句の適切な組合せはどれか。 バイオメトリクス認証を利用したシステムの設計を始めるときには,システムの目的と認証の用途を明らかにし,認証精度の設定方針を策定することが必要である。他人受入率がaなるように設定した場合は,安全性を重視した認証になり,本人拒否率がbなるように設定した場合は,本人の利便性を重視した認証になるといえる。

- ア
a:高く、b:高く
- イ
a:高く、b:低く
- ウ
a:低く、b:高く
- エ
a:低く、b:低く
会話形式の解説
講師今回はバイオメトリクス認証、つまり指紋や顔などの身体的な特徴を使った本人確認の問題です。注目するのは「他人受入率」と「本人拒否率」という二つの指標です。それぞれを高くするのか低くするのかを、安全性と利便性に結びつけて考えます。
受験者名前が似ていて混乱しそうです。安全性を重視するなら、何となく「高く」を選びたくなってしまいます。
講師そこが迷いやすいところです。まず意味を確認しましょう。他人受入率は、他人を本人だと誤って受け入れてしまう割合です。本人拒否率は、本人なのに誤って拒否してしまう割合です。
受験者どちらも「誤って」なんですね。ということは、どちらも間違いの割合ということですか。
講師そのとおりです。どちらも誤判定の割合なので、基本的には低いほど望ましい値です。では、他人受入率を低くすると何が起きるでしょうか。
受験者他人が通りにくくなるので、不正に使われにくくなります。安全性重視なら、aは「低く」ですね。
講師正解です。逆にaを「高く」すると他人が通りやすくなり、安全性は下がります。ですから、aが「高く」の組合せは、bがどちらであっても当てはまりません。
受験者本人拒否率のほうは、低くすれば本人が何度もはじかれずに済むので、使いやすくなります。bも「低く」だと思います。
講師そうです。aを「低く」、bを「高く」とする組合せは、aは合っていますが、本人拒否率が高いと本人が利用しにくくなるので、利便性重視とはいえません。aもbも「高く」とする組合せは、安全性も利便性も下げてしまいます。
受験者整理すると、他人受入率を低くすれば安全性重視、本人拒否率を低くすれば利便性重視なので、aもbも「低く」の組合せが正解ですね。
講師そのとおりです。補足すると、他人受入率はFAR、本人拒否率はFRRと略されます。この二つは判定のしきい値によって、一方を下げるともう一方が上がりやすいトレードオフの関係にあります。判定を厳しくすると他人受入率は下がりますが、本人拒否率は上がりやすくなります。
受験者両方を同時に下げるのは難しいので、目的に合わせて調整するということですか。
講師はい。実際の運用では、システムの目的に合わせてしきい値を調整します。また、二つの率が等しくなる点を等誤り率、EERと呼び、この値が小さいほど認証の精度が高いとされます。率の高低と安全性・利便性の対応は言葉の印象で取り違えやすいので、「どちらも誤判定の割合」と押さえておくと迷いません。
まとめ
バイオメトリクス認証の他人受入率(FAR)は他人を誤って本人と受け入れてしまう割合、本人拒否率(FRR)は本人を誤って拒否してしまう割合で、どちらも誤判定の割合です。他人受入率を低くすると他人が通りにくくなるため安全性を重視した設定になり、本人拒否率を低くすると本人が拒否されにくくなるため利便性を重視した設定になります。したがって、空欄にはどちらも「低く」が入ります。二つの率はしきい値によるトレードオフの関係にあり、両者が等しくなる点を等誤り率(EER)と呼びます。
解答・解説
正解はエです
この問題のテーマ
バイオメトリクス認証の他人受入率と本人拒否率が、それぞれ安全性と利便性にどう関係するかを問う問題です。
解き方の考え方
まず二つの指標の意味を確認します。他人受入率は他人を本人と誤って受け入れてしまう割合、本人拒否率は本人なのに誤って拒否してしまう割合です。どちらも「誤り」の割合なので、低いほど望ましい値です。他人受入率を低くすれば他人が通りにくくなるので安全性が高まり、本人拒否率を低くすれば本人が拒否されにくくなるので使いやすくなります。したがって、aもbも「低く」が入ります。
選択肢ごとの解説
- ×ア a:高く、b:高くaもbも「高く」とする組合せです。他人受入率が高いと他人が通りやすくなり、安全性は下がります。本人拒否率が高いと本人が何度も拒否されるため、利便性も下がります。どちらの目的にも合いません。
- ×イ a:高く、b:低くaを「高く」、bを「低く」とする組合せです。本人拒否率を低くすれば利便性は上がるので、bは合っています。しかし他人受入率が高いと不正な利用を許しやすくなるため、安全性を重視した設定とはいえません。
- ×ウ a:低く、b:高くaを「低く」、bを「高く」とする組合せです。他人受入率を低くすれば安全性は上がるので、aは合っています。しかし本人拒否率が高いと本人が利用しにくくなるため、利便性を重視した設定とはいえません。
- ○エ a:低く、b:低くaもbも「低く」とする組合せです。他人受入率を低くすると他人が通りにくくなるので安全性重視になり、本人拒否率を低くすると本人が拒否されにくくなるので利便性重視になります。どちらも記述の目的に合っています。
補足
「安全性を重視するなら率を高く」と、言葉の印象だけで選ぶと間違えます。どちらも誤判定の割合だと押さえておけば、「低いほうが良い」と判断できます。また、判定を厳しくすると他人受入率は下がる一方で本人拒否率は上がりやすくなるため、実際の運用ではシステムの目的に合わせてしきい値を調整します。二つの率が等しくなる点を等誤り率(EER)と呼び、この値が小さいほど認証の精度が高いとされます。
POINT
- 他人受入率(FAR)は、他人を誤って本人と判定してしまう割合です。
- 本人拒否率(FRR)は、本人を誤って拒否してしまう割合です。
- 他人受入率を低くするほど安全性が高まり、本人拒否率を低くするほど利便性が高まります。
- 二つの率は判定のしきい値によって一方を下げるともう一方が上がりやすい、トレードオフの関係にあります。
