IT基本計画で明確にすべき事項は?運用や要件定義との区別
ITパスポート試験 令和8年度 問34 / システム戦略 › 情報システム戦略
過去問にチャレンジ
IT基本計画の策定の際、明確にすべき事項だけを全て挙げたものはどれか。 a ITシステムの利活用に関わるステークホルダ b 組織体の現在及び将来的なニーズへの対応 c 発生したインシデントに関する管理手順 d 利用者及び関係者との合意に基づいた業務要件とその優先順位
- ア
a,b
- イ
a,b,c
- ウ
a,b,d
- エ
b,c,d
会話形式の解説
講師今回はIT基本計画を作るときに何を明確にするかという問題です。IT基本計画は、組織全体のITの使い方について方針と大枠を示す上位の計画です。四つの項目が、組織全体の方針の話なのか、もっと具体的な個別の話なのかに注目してください。
受験者全部計画に必要そうに見えて迷いました。特に「利用者や関係者と合意した業務要件と優先順位」は、計画づくりに欠かせない気がします。
講師そこで迷う人は多いと思います。利用者と合意して業務要件や優先順位を決めるのは、個別システムの要件定義、つまり作るシステムに求める内容を具体的に決める段階の作業です。基本計画は大きな方針やニーズを示すところまでで、個別の要件の優先順位までは確定しません。
受験者なるほど、決める階層が一段下ということですね。では「発生したインシデントに関する管理手順」も、具体的すぎるので違うと考えてよいですか。
講師その考え方で合っています。インシデント、つまりシステムの障害やセキュリティ上の問題が起きたときの対応手順は運用管理の具体的な事項です。ITサービスマネジメントや情報セキュリティ管理、BCPなどで定めるもので、IT基本計画で決める内容ではありません。
受験者残りの「ITシステムの利活用に関わるステークホルダ」は、カタカナ語なので少し曖昧です。関係者という意味で合っていますか。
講師はい、ステークホルダは利害関係者のことです。誰がITの利活用に関わるのかは、計画全体の土台になるので、IT基本計画で明確にします。「組織体の現在及び将来的なニーズへの対応」も同じで、組織が今と将来に何を必要とするかは全体の方針そのものです。
受験者そうすると、ステークホルダとニーズの両方を含み、インシデント管理手順を含む組合せや、業務要件を含む組合せは外れますね。
講師そうです。この問題は該当するものを全て挙げた組合せを選ぶので、余分な項目が入っていても、必要な項目が欠けていても誤りです。ステークホルダが抜けていて、インシデント管理手順と業務要件が入っている組合せは、二重に誤りということになります。
受験者この問題の選択肢の中では、明確にすべきなのはステークホルダと組織のニーズへの対応で、インシデント管理手順と業務要件は含めない組合せが正解、という理解でよいでしょうか。
講師よく整理できています。なお、選択肢にはありませんが、組織のデジタル活用能力によって価値を高めることも、IT基本計画で明確にすべき事項です。
講師「合意」や「優先順位」のようなもっともらしい言葉が入った項目は、紛らわしく見えることがあります。迷ったときは、組織全体の方向性を決める話か、個別のシステムや運用の具体的な話かという階層で判断すると、似た問題にも対応しやすくなります。
まとめ
IT基本計画は、組織全体のIT利活用について方針と大枠を示す上位の計画です。この問題では、ITの利活用に関わるステークホルダと、組織の現在と将来のニーズへの対応が明確にすべき事項に当たります。インシデント管理の手順は運用管理の段階で、合意に基づく業務要件とその優先順位は要件定義の段階で扱うため、IT基本計画には含めません。選択肢にはありませんが、組織のデジタル活用能力によって価値を高めることもIT基本計画で明確にすべき事項です。迷ったときは、組織全体の方針の話か、個別の具体的な話かという階層で判断します。
解答・解説
正解はアです
この問題のテーマ
システム管理基準でいう「IT基本計画」を作るときに、何を明確にするのかを問う問題です。組織全体の方針を決める上位の計画と、その下で扱う個別の管理事項を区別できるかが問われています。
解き方の考え方
まず、IT基本計画は組織全体のITの使い方について、方針と大枠を示す上位の計画だと押さえます。そのうえでa〜dを一つずつ見て、組織全体の大きな方針に関わる事項か、それとも運用や個別システム開発の段階で決める具体的な事項かを分けます。aとbだけが前者に当たるので、その組合せを選びます。全てを挙げている選択肢を選ぶ問題なので、余分な項目を含む組合せや、必要な項目が欠けた組合せは誤りになります。
選択肢ごとの解説
- ○ア a,ba「ITシステムの利活用に関わるステークホルダ」と、b「組織体の現在及び将来的なニーズへの対応」は、どちらもIT基本計画で明確にすべき事項です。誰が関わるのか、組織が今と将来に何を必要とするのかは、計画全体の土台になります。cとdを含まず、該当する事項を過不足なく挙げているので、これが正解です。
- ×イ a,b,caとbは正しいのですが、c「インシデントに関する管理手順」が入っている点が誤りです。インシデントへの対応手順は運用管理の具体的な事項で、ITサービスマネジメントや情報セキュリティ管理、BCPなどで定めます。組織全体の方針を示すIT基本計画で決める内容ではありません。
- ×ウ a,b,daとbは正しいのですが、d「合意に基づいた業務要件とその優先順位」が入っている点が誤りです。利用者と合意して業務要件や優先順位を決めるのは、個別システムの要件定義で行う作業です。基本計画は大きな方針やニーズを示すところまでで、個別の要件の優先順位までは確定しません。
- ×エ b,c,d明確にすべき事項であるa「ステークホルダ」が抜けています。さらに、基本計画の対象外であるc「インシデント管理手順」とd「業務要件と優先順位」が入っているため、二重に誤りです。
補足
「合意」「優先順位」といったもっともらしい言葉が入った選択肢は、計画づくりに必要そうに見えるため引っかけになりやすいです。迷ったときは、組織全体の方向性を決める話か、個別のシステムや運用の具体的な話かという「階層」で判断すると、似た問題にも対応できます。
POINT
- IT基本計画は、組織全体のIT利活用について方針と大枠を示す上位の計画です。
- IT基本計画では、ITの利活用に関わるステークホルダと、組織の現在と将来のニーズへの対応を明確にします。
- 組織のデジタル活用能力によって価値を高めることも、IT基本計画で明確にすべき事項です。
- インシデント管理の手順は運用管理の段階で、業務要件とその優先順位は要件定義の段階で扱います。
