内部統制の活動内容はどれか、4つの記述から見分ける
ITパスポート試験 令和8年度 問40 / システム監査 › 内部統制
過去問にチャレンジ
企業の活動に関する記述のうち,内部統制の活動内容として,最も適切なものはどれか。
- ア
決算発表の内容に重大な誤りがあった場合は,速やかに外部に公表する。
- イ
支払伝票を起票した際は,起票者が責任をもって確認し最終承認を行う。
- ウ
定期的にリスクを評価し、洗い出されたリスクの全てを“回避”で対応する。
- エ
内部通報は必ず直属の上司を通じて行うことを,ルールとして徹底する。
会話形式の解説
講師今回は内部統制の問題です。内部統制とは、組織が健全で効果的に運営されるための仕組みのことです。目的は、業務の有効性・効率性、財務報告の信頼性、法令遵守、資産の保全の4つです。各選択肢がこの目的に役立つのか、それとも不正や誤りを見逃す原因になるのかを見ていきましょう。
受験者私は、支払伝票を起票した人が責任をもって最終承認するという選択肢が正しそうに見えました。自分で作ったものを自分で確認するのは、きちんとしているように思えます。
講師そこが引っかけです。起票から最終承認までを一人で行うと、職務が一人に集中してしまいます。これは職務分掌、つまり仕事の役割を分けて担当させる考え方に反します。
受験者一人で完結していると、不正や間違いがあっても誰も気づけない、ということですか。
講師そのとおりです。起票する人と承認する人を分けて、互いにチェックし合う相互牽制が働く体制にする必要があります。
受験者リスクを定期的に評価して、全てを回避で対応するという選択肢はどうでしょうか。リスクを避けるのは安全そうに思えます。
講師定期的にリスクを評価すること自体は適切です。ただ、リスクへの対応には回避・低減・移転・受容があって、リスクの重要度や費用対効果に応じて個別に選びます。全てを回避すると、事業の機会まで失ってしまいます。
受験者内部通報は必ず直属の上司を通じて行う、というルールも、組織の筋道を守っているように見えますが。
講師窓口を直属の上司に限ると、上司自身が関わる不正は通報できません。上司が通報を握りつぶして、上層部に情報が届かないおそれもあります。上司を通さない独立した窓口や外部の第三者窓口など、複数の経路を用意しておくべきです。
受験者そうすると、決算発表に重大な誤りがあったときに速やかに外部へ公表する、という選択肢が正解ですね。財務報告の信頼性に関わるからでしょうか。
講師はい。誤りを隠したり対応を遅らせたりすると、投資家などの利害関係者が誤った判断をしてしまい、企業への信頼も損なわれます。内部統制では、必要な情報を組織の外部にも適時・適切に伝えることが求められます。
受験者内部統制は社内の話だけかと思っていましたが、外部への情報の伝え方も含まれるのですね。
講師補足すると、COSOという枠組みでは、内部統制を統制環境、リスク評価、統制活動、情報と伝達、監視の5つの要素で整理しています。職務分掌は統制活動に、外部への公表は情報と伝達にあたります。また、「起票者が最終承認も行う」「全て」「必ず」のような表現は、相互チェックや状況に応じた判断を否定していることが多いので、誤りを見分けるヒントになります。ただし、これはあくまで目安で、最後は内容で判断してください。
まとめ
内部統制は、業務の有効性・効率性、財務報告の信頼性、法令遵守、資産の保全を目的とする仕組みです。決算発表の重大な誤りを速やかに公表することは、財務報告の信頼性を保ち、情報を外部へ適切に伝える活動にあたるので適切です。起票者が最終承認まで行うのは職務分掌に反し、相互牽制が働きません。リスクの全てを回避するのは誤りで、回避・低減・移転・受容から個別に選びます。内部通報の経路を直属の上司に限るのも不適切で、独立した窓口を含めて複数の経路を用意する必要があります。
解答・解説
正解はアです
この問題のテーマ
内部統制とは、組織が健全で効果的に運営されるための仕組みです。この問題では、その考え方に合った具体的な活動を選びます。情報の伝達、職務の分担、リスクへの対応、内部通報の4つの観点が問われています。
解き方の考え方
まず、内部統制の目的を思い出します。業務の有効性・効率性、財務報告の信頼性、法令遵守、資産の保全の4つです。次に、各選択肢がこの目的に役立つか、それとも不正や誤りを見逃す原因になるかを確かめます。「起票者が最終承認」「全てを回避」「必ず直属の上司を通じて」のように、一人に任せきりにしたり一つの方法に限ったりする表現は、内部統制の考え方に反していないか特に注意して読みます。
選択肢ごとの解説
- ○ア 決算発表の内容に重大な誤りがあった場合は,速やかに外部に公表する。決算発表に重大な誤りがあったときに速やかに公表することは、財務報告の信頼性を保つことにつながります。誤りを隠したり対応を遅らせたりすると、投資家などの利害関係者が誤った判断をし、企業への信頼も損なわれます。内部統制では、必要な情報を組織の外部にも適時・適切に伝えることが求められます。
- ×イ 支払伝票を起票した際は,起票者が責任をもって確認し最終承認を行う。支払伝票を起票した人がそのまま最終承認まで行うと、一人に職務が集中します。これは職務分掌の考え方に反します。この状態では、不正や誤りがあっても発見しにくくなります。起票者と承認者を分けて、互いにチェックし合う相互牽制が働く体制にする必要があります。
- ×ウ 定期的にリスクを評価し、洗い出されたリスクの全てを“回避”で対応する。定期的にリスクを評価すること自体は適切です。しかし、洗い出したリスクの全てを「回避」で対応するのは誤りです。リスクへの対応には回避・低減・移転・受容があり、リスクの重要度や費用対効果に応じて個別に選びます。全てを回避すると、事業の機会まで失うことになります。
- ×エ 内部通報は必ず直属の上司を通じて行うことを,ルールとして徹底する。内部通報の窓口を直属の上司に限ると、上司自身が関わる不正は通報できません。また、上司が通報を握りつぶし、上層部に情報が届かないおそれもあります。上司を通さない独立した窓口や外部の第三者窓口など、複数の通報経路を用意しておくべきです。
補足
COSOのフレームワークでは、内部統制を統制環境、リスク評価、統制活動、情報と伝達、監視の5つの要素で整理しています。このうち職務分掌は統制活動に、情報の外部への公表は情報と伝達にあたります。「必ず」「全て」「責任をもって一人で」といった言い切りの表現は、相互チェックや状況に応じた判断を否定していることが多いため、誤りの選択肢を見分ける手がかりになります。
POINT
- 内部統制の目的は、業務の有効性・効率性、財務報告の信頼性、法令遵守、資産の保全の4つです。
- 起票と承認のような職務は同じ人に集中させず、分けておくことで相互牽制を働かせます(職務分掌)。
- リスク対応には回避・低減・移転・受容があり、リスクごとに重要度や費用対効果を考えて選びます。
- 内部通報の経路は、上司を通さない独立した窓口を含めて複数用意しておくことが大切です。
