SCMシステムは何のために作るのかを会話で確認
ITパスポート試験 令和4年度 問22 / 経営戦略マネジメント › 経営管理システム
過去問にチャレンジ
SCMシステムを構築する目的はどれか。
- ア
企業のもっている現在の強み,弱みを評価し,その弱みを補完するために,どの企業と提携すればよいかを決定する。
- イ
商品の生産から消費に関係する部門や企業の間で,商品の生産,在庫,販売などの情報を相互に共有して管理することによって,商品の流通在庫の削減や顧客満足の向上を図る。
- ウ
顧客に提供する価値が調達,開発,製造,販売,サービスといった一連の企業活動のどこで生み出されているのかを明確化する。
- エ
多種類の製品を生産及び販売している企業が,利益を最大化するために,最も効率的・効果的となる製品の製造・販売の組合せを決定する。
会話形式の解説
講師今回はSCMシステムを構築する目的を問う問題です。選択肢には、SCMとは別の経営分析の説明が混ざっています。それぞれがどの手法の説明なのかを当てはめていくのがポイントです。
受験者SCMは聞いたことがありますが、CRMやERPなど似た略語が多くて、中身があいまいです。何の略でしたか。
講師Supply Chain Managementの略です。サプライチェーンは、調達から生産、物流、販売を経て消費者に届くまでの供給のつながりのことです。このつながりにかかわる部門や企業が情報を共有して、供給網全体を効率よくする管理手法をSCMといいます。
受験者そうすると、生産から消費までにかかわる部門や企業が、生産・在庫・販売の情報を共有するという選択肢が当てはまりそうです。
講師そのとおりです。それがSCMの考え方そのものです。情報を共同で使えば、過剰な流通在庫を減らせます。欠品を防いだり、納期を短くしたりもできます。その結果として顧客満足も高まるので、SCMの目的として適切です。
受験者私が迷ったのは、調達・開発・製造・販売・サービスのどこで価値が生まれるかを明らかにする選択肢です。これも調達から販売までの流れなので、SCMに見えました。
講師そこが一番紛らわしいところです。その説明はバリューチェーン分析にあたります。バリューチェーン分析は、自社の活動ごとにどれだけ価値を生んでいるかを調べる手法です。複数の企業で情報を共有して在庫を管理するSCMとは、目的が違います。
受験者流れを扱う点は同じでも、自社の中の価値を分析するのか、企業をまたいで供給を効率化するのかで分ければよいのですね。
講師はい。残りの二つも見ておきましょう。自社の強みと弱みを評価する説明は、SWOT分析で扱う内容です。弱みを補うために提携先を決めるのは企業戦略の判断なので、供給網を管理するSCMの目的ではありません。
受験者利益が最大になるように、製品の製造・販売の組合せを決めるという選択肢はどうですか。生産や販売という言葉が入っていて、少し迷いました。
講師それはプロダクトミックスの考え方です。製品構成を最適にするには、線形計画法などの手法が使われます。扱っているのは一社の製品の組合せで、供給網全体の管理ではないので、SCMとは異なります。
受験者整理すると、強み・弱みはSWOT分析、活動ごとの価値はバリューチェーン分析、製品の組合せはプロダクトミックスです。企業間の情報共有で在庫を減らすのがSCM、という理解でよいでしょうか。
講師その理解で大丈夫です。問題文に「企業間」「在庫」「情報共有」という語が出てきたら、SCMを思い浮かべてください。反対に「自社のどこで価値が生まれるか」という表現なら、バリューチェーン分析を疑うと引っかけを避けられます。
まとめ
SCM(Supply Chain Management)は、調達から生産、物流、販売を経て消費者に届くまでの供給網全体を管理する手法です。SCMシステムの目的は、部門や企業の垣根を越えて生産・在庫・販売の情報を共有し、流通在庫の削減や欠品の抑制、納期の短縮を進め、顧客満足を高めることです。強み・弱みの評価はSWOT分析、活動ごとの価値の把握はバリューチェーン分析、製品の組合せの決定はプロダクトミックスにあたり、どれもSCMの目的ではありません。特にバリューチェーン分析は「調達から販売まで」の流れを扱うためSCMと混同しやすいです。自社の価値を分析する手法なのか、企業をまたいで供給を効率化する手法なのかで見分けます。
解答・解説
正解はイです
この問題のテーマ
SCM(Supply Chain Management)システムを構築する目的を問う問題です。SWOT分析、バリューチェーン分析、プロダクトミックスといった、ほかの経営分析の考え方と区別できるかが問われています。
解き方の考え方
まず「サプライチェーン」は、調達から生産、物流、販売を経て消費者に届くまでの供給のつながりだと押さえます。SCMは、このつながりにかかわる部門や企業が情報を共有し、供給網全体を効率よくする管理手法です。選択肢の中から「企業や部門をまたぐ情報共有」と「在庫削減」が書かれたものを探せば、正解にたどり着けます。ほかの選択肢については、どの分析手法の説明なのかを当てはめると、誤りだと確かめられます。
選択肢ごとの解説
- ×ア 企業のもっている現在の強み,弱みを評価し,その弱みを補完するために,どの企業と提携すればよいかを決定する。アの、自社の強みと弱みを評価する説明は、SWOT分析で扱う内容です。弱みを補うための提携先を決めることは企業戦略の判断であり、供給網を管理するSCMの目的ではありません。
- ○イ 商品の生産から消費に関係する部門や企業の間で,商品の生産,在庫,販売などの情報を相互に共有して管理することによって,商品の流通在庫の削減や顧客満足の向上を図る。イの、生産から消費までにかかわる部門や企業が生産・在庫・販売の情報を共有するという説明は、SCMの考え方そのものです。情報を共同で使えば、過剰な流通在庫を減らせるほか、欠品を防いだり納期を短くしたりできます。その結果として顧客満足も高まるため、SCMの目的として適切です。
- ×ウ 顧客に提供する価値が調達,開発,製造,販売,サービスといった一連の企業活動のどこで生み出されているのかを明確化する。ウの、調達・開発・製造・販売・サービスのどの活動で価値が生まれているかを明らかにする説明は、バリューチェーン分析にあたります。バリューチェーン分析は自社の活動ごとの価値を調べる手法です。企業間で情報を共有して在庫を管理するSCMとは目的が違います。
- ×エ 多種類の製品を生産及び販売している企業が,利益を最大化するために,最も効率的・効果的となる製品の製造・販売の組合せを決定する。エの、利益が最大になるように製品の製造・販売の組合せを決める説明は、プロダクトミックスの考え方です。製品構成の最適化には、線形計画法などの手法が使われます。供給網全体の管理を目的とするSCMとは異なります。
補足
ウのバリューチェーンも「調達から販売まで」の流れを扱うため、SCMと混同しやすい選択肢です。見分け方は、目的が「自社のどこで価値が生まれるかの分析」なのか、「複数の企業で情報を共有して供給を効率化すること」なのかです。「企業間」「在庫」「情報共有」という語が出てきたら、SCMを思い浮かべるとよいでしょう。
POINT
- SCMはSupply Chain Managementの略で、調達から販売までの供給網全体を管理する手法です。
- SCMの特徴は、部門や企業の垣根を越えて、生産・在庫・販売などの情報を共有する点にあります。
- SCMで期待される効果は、在庫の削減、欠品の抑制、納期の短縮と、それらによる顧客満足の向上です。
- 強み・弱みの評価はSWOT分析、活動ごとの価値の把握はバリューチェーン分析、製品の組合せの決定はプロダクトミックスと、それぞれ結び付けて覚えます。
