限定提供データの三つの要件と営業秘密との違いを確認しよう
ITパスポート試験 令和6年度 問10 / 法務 › 知的財産権
過去問にチャレンジ
不正競争防止法で規定されている限定提供データに関する記述として,最も適切なものはどれか。
- ア
特定の第三者に対し,1回に限定して提供する前提で保管されている技術上又は営業上の情報は限定提供データである。
- イ
特定の第三者に提供する情報として電磁的方法によって相当量蓄積され管理されている技術上又は営業上の情報(秘密として管理されているものを除く)は限定提供データである。
- ウ
特定の第三者に提供するために,金庫などで物理的に管理されている技術上又は営業上の情報は限定提供データである。
- エ
不正競争防止法に定めのある営業秘密は限定提供データである。
会話形式の解説
講師今回は不正競争防止法の「限定提供データ」の定義を問う問題です。三つの要件と、何が対象から除かれているかに注目してください。
受験者名前に「限定」と付いているので、1回だけ提供するデータのことかと思いました。でも、営業秘密との違いもあいまいです。
講師そこが引っかけどころです。要件は、特定の者に業として提供すること(限定提供性)、電磁的方法で相当量が蓄積されていること(相当蓄積性)、電磁的方法で管理されていること(電磁的管理性)の三つです。「業として」は、反復継続して提供するという意味です。
受験者反復継続が前提なら、「1回に限定して提供する前提で保管されている情報」という選択肢は合わないということですね。
講師そのとおりです。「限定」が絞り込むのは提供先で、提供回数ではありません。
受験者「金庫などで物理的に管理されている情報」の選択肢は、管理していること自体は要件に近い気がします。
講師管理の方法が違います。要件は電磁的方法、つまりデータとしてアクセス制限などで管理していることです。金庫での物理的な管理だけでは当たりません。紙の資料などは、条件を満たせば営業秘密として保護される余地があります。
受験者では「営業秘密は限定提供データである」という選択肢はどうでしょうか。どちらも守られる情報なので、含まれるようにも見えます。
講師営業秘密は定義の段階で限定提供データから除かれていて、別の枠組みで保護されます。二つは重ならないものとして整理しておきましょう。
受験者そうすると、「特定の第三者に提供する情報として、電磁的方法で相当量蓄積され管理されている技術上又は営業上の情報で、秘密として管理されているものを除く」という選択肢が正解ですね。特定の第三者への提供、電磁的方法での相当量の蓄積と管理、秘密管理されたものの除外が全部そろっています。
講師はい、三つの要件と除外規定を過不足なく含んでいるので、これが正解です。なお、出題後の法改正で除外部分は「営業秘密を除く」という書き方に改められ、今は秘密として管理されていても営業秘密に当たらない情報なら保護され得ます。
受験者他社と共有するデータを守るための仕組みと考えると、営業秘密と分けられている理由も分かりやすいです。
講師そうですね。共有が前提のデータは秘密管理性を欠くので営業秘密になりにくく、著作権でも守られにくいという事情から設けられました。典型例はPOSデータ、気象データ、地図データ、機械の稼働データなどです。営業秘密の三要件(秘密管理性・有用性・非公知性)と並べて覚えると見分けやすくなります。
まとめ
限定提供データは、不正競争防止法で保護される、他社との共有を前提としたデータです。要件は、特定の者に業として(反復継続して)提供すること、電磁的方法で相当量が蓄積されていること、電磁的方法で管理されていることの三つです。「限定」は提供先を絞るという意味で、提供回数を制限する意味ではありません。金庫などの物理的な管理では要件を満たさず、営業秘密は限定提供データから除かれ、別の枠組みで保護されます。
解答・解説
正解はイです
この問題のテーマ
不正競争防止法が保護する「限定提供データ」がどんな情報を指すのかを、定義の要件に照らして判断できるかを問う問題です。
解き方の考え方
まず、限定提供データの要件を三つ思い出します。特定の者に業として提供すること(限定提供性)、電磁的方法で相当量が蓄積されていること(相当蓄積性)、電磁的方法で管理されていること(電磁的管理性)です。次に、営業秘密は対象から外されていることを確認します。各選択肢がこの要件のどれに反しているかを順に見ていけば、要件をすべて満たすものが一つだけ残ります。
選択肢ごとの解説
- ×ア 特定の第三者に対し,1回に限定して提供する前提で保管されている技術上又は営業上の情報は限定提供データである。「1回に限定して提供する」という説明は誤りです。限定提供データは業として、つまり反復継続して提供される情報を想定しているため、1回だけの提供ではこの前提に合いません。「限定」が絞り込むのは提供先であり、提供回数ではありません。
- ○イ 特定の第三者に提供する情報として電磁的方法によって相当量蓄積され管理されている技術上又は営業上の情報(秘密として管理されているものを除く)は限定提供データである。特定の第三者への提供、電磁的方法による相当量の蓄積と管理、秘密として管理されるものの除外という要素がすべてそろっており、定義に合っています。三つの要件と除外規定を過不足なく含んでいるので、これが正解です。
- ×ウ 特定の第三者に提供するために,金庫などで物理的に管理されている技術上又は営業上の情報は限定提供データである。金庫で保管するといった物理的な管理の説明は誤りです。限定提供データは電磁的方法で管理されていることが要件なので、物理的に管理しているだけでは当たりません。紙の資料などは、条件を満たせば営業秘密として保護される余地があります。
- ×エ 不正競争防止法に定めのある営業秘密は限定提供データである。営業秘密が限定提供データだとする説明は誤りです。営業秘密は定義の段階で限定提供データから除かれており、別の枠組みで保護されます。二つは重なり合わないものとして整理しておきましょう。
補足
限定提供データは、他社と共有することを前提にしたデータを保護するために設けられた類型です。共有が前提のデータは秘密管理性を欠くので営業秘密になりにくく、著作権でも守られにくいという事情がありました。営業秘密の三要件(秘密管理性・有用性・非公知性)と混同させる選択肢がよく出るので、両者を並べて覚えておくと見分けやすくなります。
※出題後の法改正により、限定提供データの定義のうち除外対象の書き方が「秘密として管理されているものを除く」から「営業秘密を除く」に改められています。現在は、秘密として管理されていても営業秘密に当たらない情報であれば、限定提供データとして保護され得ます。問題文と選択肢は出題当時の表現のままにしています。
POINT
- 限定提供データの要件は、限定提供性・相当蓄積性・電磁的管理性の三つです。
- 「限定」は提供先を特定の者に絞るという意味で、提供回数を制限する意味ではありません。
- 「業として」の提供とは、反復継続して提供することを指します。
- 営業秘密に当たる情報は限定提供データから除かれ、別の保護対象になります。
- 典型例には、POSデータ、気象データ、地図データ、機械の稼働データなどがあります。
