生成AIで作った楽曲と著作権、許諾が要るのはどの場合か
ITパスポート試験 令和8年度 問1 / 法務 › 知的財産権
過去問にチャレンジ
生成AIを用いた生成物の取扱いに関して、既存の著作物の著作権者から許諾を得ることが必要となる可能性のあるものだけを、全て挙げたものはどれか。 a 好みのアーティストの楽曲に似た音楽が得られるように生成AIを用いて楽曲を生成し、その楽曲をインターネット上にアップロードし、無料で公開した。 b 好みのアーティストの楽曲に似た音楽が得られるように生成AIを用いて楽曲を生成し、その楽曲を自分のPC上に保管し、個人で視聴した。 c 生成AIで音楽を生成したところ、偶然好みのアーティストの楽曲に似た音楽が生成できたので、自分のPC上に保管し、個人で視聴した。
- ア
a
- イ
a,b
- ウ
a,b,c
- エ
b,c
会話形式の解説
講師この問題では、生成AIで作った曲に既存曲の著作権者の許諾が必要になり得るかを判断します。見るポイントは二つです。既存曲を基にして作ったかどうかと、作った曲をどこで使うかです。
受験者私は、既存曲に似た曲ができた時点で、全部許諾が必要になると考えてしまいそうです。
講師似ているだけでは決まりません。著作権侵害かどうかは、類似性と依拠性で判断します。類似性は既存作品に似ていること、依拠性は既存作品を基にして作ったという関係のことです。AIが作ったものでも、人が作った場合と同じ枠組みで考えます。
受験者そうすると、偶然似てしまった曲は依拠性がないということでしょうか。
講師そのとおりです。偶然似ただけの場合は依拠性がないとされます。cはこれにあたり、しかも自分のPCに保管して個人で聴いているだけなので、許諾は不要です。
受験者bは好きなアーティストの曲に似せるつもりで作っているので、依拠性がありそうです。それでも許諾はいらないのですか。
講師bは依拠性が認められ得ます。ただ、使い方は自分のPCに保管して個人で聴くだけです。自分や家庭内で楽しむための私的使用の複製は、原則として許諾なしで行えます。ですから、aとbを挙げた選択肢は、許諾不要のbを含んでいる点で誤りです。
受験者aも無料で公開しているだけです。お金を取っていないなら、私的使用と同じように扱われるのではないかと思いました。
講師aのようにインターネット上で公開する行為は公衆送信にあたり、私的使用の範囲を超えます。しかもaは既存曲に似せる目的で作っているので依拠性も認められ得ます。無料であっても、著作権者の許諾が必要になり得ます。
受験者整理すると、許諾が必要になり得るのはaだけなので、aのみを挙げた選択肢が正解ですね。a・b・cすべてを挙げたものはbとcを含むので誤りで、bとcの組合せは、肝心のaが抜けているので誤りです。
講師正確です。補足すると、「お金を取っていないから問題ない」というのはよくある引っかけです。決め手は営利かどうかではなく、私的な範囲にとどまるか、公衆に向けて提供するかです。また、生成AIを使ったかどうかで侵害判断の枠組みが変わるわけではないことも押さえておきましょう。
まとめ
生成AIで作った楽曲でも、著作権侵害かどうかは人が作った場合と同じく、類似性と依拠性で判断します。偶然似ただけの曲には依拠性がないとされ、既存曲に似せる意図で作った曲には依拠性が認められ得ます。自分のPCに保管して個人で聴くことは私的使用のための複製にあたり、原則として許諾は不要です。一方、インターネット上で公開することは公衆送信にあたり、無料であっても許諾が必要になり得ます。そのため、許諾が必要になり得るのは、似せて作った曲をネットで公開したaだけです。
解答・解説
正解はアです
この問題のテーマ
生成AIで作った楽曲について、既存曲の著作権者の許諾が必要になり得るのはどんな場合かを問う問題です。侵害の要件である類似性・依拠性と、私的使用のための複製の例外を組み合わせて判断します。
解き方の考え方
まず、各行為で既存曲への依拠性があるかを確認します。似せる意図で生成したaとbには依拠性が認められ得ますが、偶然似たcには依拠性がないとされます。次に、利用の仕方を確認します。自分のPCに保存して個人で聴くbとcは私的使用にあたるので許諾は不要です。ネットで公開するaは公衆送信にあたり、無料であっても許諾が必要になり得ます。したがって、該当するのはaだけです。
選択肢ごとの解説
- ○ア aaは既存曲に似せる目的で生成しているため、依拠性が認められ得ます。さらにネット上で公開する行為は公衆送信にあたり、無料であっても著作権者の許諾が必要になり得ます。許諾が必要になり得るのはaだけなので、aのみを挙げたアが正解です。
- ×イ a,bbは既存曲に似せて生成していますが、自分のPCに保存して個人で聴くだけです。これは私的使用のための複製にあたり、許諾は不要です。許諾不要のbを含んでいるため誤りです。
- ×ウ a,b,ccは偶然似た曲ができたもので依拠性がないとされ、利用も個人で聴くだけなので許諾は不要です。bも私的使用として許諾不要です。許諾不要のbとcを含んでいるため誤りです。
- ×エ b,cbとcの組合せは、どちらも個人で保存して聴くだけの私的使用なので、許諾は不要です。一方で、許諾が必要になり得るaのネット公開が含まれていません。そのため誤りです。
補足
「お金を取っていないから問題ない」と考えるのはよくある引っかけです。判断の決め手は営利かどうかではなく、私的な範囲にとどまるか、公衆に向けて提供するかです。また、生成AIを使ったかどうかで侵害判断の枠組みが変わるわけではないことも押さえておきましょう。
POINT
- AI生成物が著作権侵害になるかどうかも、人が作った場合と同じく類似性と依拠性で判断します。
- 依拠性とは既存作品を基にして作ったという関係のことで、偶然似ただけの場合は依拠性がないとされます。
- 自分や家庭内で楽しむための私的使用の複製は、原則として許諾なしで行えます。
- インターネットへのアップロードは公衆送信にあたり、私的使用の範囲を超えます。
- 無料で公開した場合でも、著作権者の許諾が必要になり得ます。
