特許化で期待できる効果を排他権の使い方から考える
ITパスポート試験 令和4年度 問6 / 法務 › 知的財産権
過去問にチャレンジ
自社開発した技術の特許化に関する記述a〜cのうち、直接的に得られることが期 待できる効果として,適切なものだけを全て挙げたものはどれか。 a当該技術に関連した他社とのアライアンスの際に、有利な条件を設定できる。 b 当該技術の開発費用の一部をライセンスによって回収できる。 c 当該技術を用いた商品や事業に対して、他社の参入を阻止できる。
- ア
a
- イ
a,b
- ウ
a,b,c
- エ
b,c
会話形式の解説
講師この問題は、自社技術を特許にしたときに直接期待できる効果を問うものです。ポイントは、特許権が「発明を一定期間、独占排他的に実施できる権利」だという点です。排他的とは、他社がその発明を勝手に使うことを排除できるという意味です。
受験者他社の参入を阻止できるという記述は、まさに排他的な権利そのものなので適切だと思いました。ただ、ライセンスで開発費を回収できるという記述には迷いました。特許は自社だけで使うためのものだと思っていたので、他社に使わせるのは矛盾しているように感じます。
講師そこがよくある引っかけです。他社の実施を排除できる権利を持っているからこそ、他社に「使ってよい」と許諾することもできます。これを実施許諾といい、その対価が実施料、いわゆるライセンス料です。ライセンス料を得れば、開発費の一部を回収することにつながります。
受験者排除できる権利があるから、許可を出すことに価値が生まれるということですね。独占するのも、使わせて対価を得るのも、同じ権利の使い方の違いだと理解しました。
講師そのとおりです。残るのは、アライアンス、つまり業務提携の際に有利な条件を設定できるという記述です。こちらはどう考えましたか。
受験者提携は契約の話なので、特許とは直接関係ないのではと考えました。特許があるだけで交渉が有利になるものなのでしょうか。
講師特許で守られた技術は、相手が自由には使えないものです。そのため、提携の交渉で「この技術を提供できる」という有力な交渉材料になり、有利な条件を引き出しやすくなります。これも排他権から直接得られる効果です。
受験者整理すると、提携で有利な条件を設定できるのは「交渉に使う」、ライセンスで回収するのは「他社に使わせて対価を得る」、参入を阻止するのは「他社に使わせない」という使い方ですね。三つとも当てはまるので、全てを挙げた選択肢が正解だと分かりました。
講師よく整理できています。提携の効果だけの選択肢、提携とライセンスの選択肢、ライセンスと参入阻止の選択肢は、どれも一つ以上足りません。特にライセンス収入を外してしまう誤りが多いので気をつけましょう。
講師関連知識として、権利を侵害した者には差止請求や損害賠償請求ができます。ただし、実際に他社を排除するには、こうした権利行使の手続きが必要です。また、特許による保護期間は、原則として出願日から20年です。
まとめ
特許権は、発明を一定期間、独占排他的に実施できる権利です。この排他権には、提携交渉の材料にする、他社に実施を許諾してライセンス料を得る、他社の参入を阻止するという三つの使い方があります。問題の記述a〜cはそれぞれこの三つに対応するため、全てを挙げた選択肢が正解です。特許は自社で独占するだけのものと思い込むと、ライセンス収入による開発費の回収を見落としやすいので注意が必要です。
解答・解説
正解はウです
この問題のテーマ
自社で開発した技術を特許にしたとき、特許権の性質から直接どのような効果が期待できるかを問う問題です。特許権が独占排他的な権利であることを理解しているかが問われています。
解き方の考え方
まず、特許権は発明を一定期間、独占排他的に実施できる権利であることを確認します。次に、その排他権を「交渉に使う」「他社に使わせて対価を得る」「他社に使わせない」という3つの使い方に分けて考えます。a〜cがそれぞれどの使い方に当たるかを照らし合わせると、3つとも当てはまるので、全てを含む選択肢を選びます。
選択肢ごとの解説
- ×ア aaのアライアンス(業務提携)で有利な条件を設定できるという効果だけを挙げています。aは適切ですが、bのライセンスによる開発費の回収や、cの他社参入の阻止も特許化から直接得られる効果です。そのため、aだけでは足りません。
- ×イ a,baの提携交渉での優位とbのライセンス収入の2つを挙げていますが、cが抜けています。特許権は他社の実施を排除できる権利なので、権利範囲内の商品や事業に他社が参入するのを法的に阻止できます。cも適切なので、a、bだけでは不足です。
- ○ウ a,b,caは、特許による技術的な優位が交渉材料となり、提携の際に有利な条件を設定しやすくなるという効果です。bは、他社に実施を許諾して実施料(ライセンス料)を得れば、開発費の一部を回収できるという効果です。cは、排他的な効力により競合他社の参入を阻止でき、参入障壁になるという効果です。いずれも排他権から直接得られる効果なので、全てを挙げたウが正解です。
- ×エ b,cbのライセンス収入とcの参入阻止を挙げていますが、aが抜けています。特許技術は他社との提携交渉で有力な交渉材料になるため、aの効果も直接期待できます。そのため、b、cだけでは不足です。
補足
「特許は自社だけで使うためのもの」と思い込むと、bのライセンス収入を外してしまいがちです。特許は自社で独占することも、他社に使わせて対価を得ることもできる、という両面を押さえておきましょう。特許による保護期間は、原則として出願日から20年です。また、実際に他社を排除するには、差止めなどの権利行使の手続きが必要になります。
POINT
- 特許権は、発明を一定期間、独占排他的に実施できる権利です。
- 特許を他社に実施許諾すると実施料(ライセンス料)が得られ、開発費の回収に役立ちます。
- 排他的な効力によって、権利範囲内の商品や事業への他社の参入を法的に阻止でき、参入障壁になります。
- 特許技術は、他社との提携(アライアンス)の交渉で有利な条件を引き出す材料になります。
- 権利を侵害した者に対しては、差止請求や損害賠償請求ができます。
