イノベーター理論のキャズムはどの層の間の溝か
ITパスポート試験 令和8年度 問15 / 技術戦略マネジメント › 技術開発戦略の立案・技術開発計画
過去問にチャレンジ
マーケティングにおけるイノベーター理論では,新しい製品やサービスが普及していく過程に沿って,消費者を,イノベーター,アーリーアダプター,アーリーマジョリティ,レイトマジョリティ,ラガードという五つのグループに分ける。このとき,アーリーアダプターからアーリーマジョリティへの普及において生じる,越えることが困難な隔たりを表す用語として,最も適切なものはどれか。
- ア
カニバリゼーション
- イ
キャズム
- ウ
死の谷
- エ
レッドオーシャン
会話形式の解説
講師今回はイノベーター理論の問題です。注目してほしいのは、溝が「どのグループとどのグループの間」にあるのかという点です。選択肢の用語が、それぞれ何についての言葉なのかを確かめていきましょう。
受験者「越えるのが難しい」と聞くと、死の谷も当てはまりそうに思えて迷いました。どちらも溝とか谷とかのイメージなので。
講師死の谷も混同しやすい用語ですが、何の間にある障害なのかが違います。死の谷は、研究の成果を製品化・事業化する段階で立ちはだかる障害のことです。主な要因は事業化までの資金不足で、技術経営、つまりMOTの用語です。
受験者なるほど、死の谷は研究開発から事業化への「段階の間」の話で、消費者のグループの話ではないのですね。
講師そのとおりです。一方、キャズムは、初期に製品を採用する層から市場の多数派へ普及が移る段階で生じる断絶です。まさにアーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にある溝なので、これが正解です。
受験者どうしてその二つのグループの間で普及が止まりやすいのでしょうか。
講師採用するかどうかの基準が違うからです。アーリーアダプターは製品の新しさを評価しますが、アーリーマジョリティは実績を重視します。そのため、初期の顧客に支持されても、一般の市場に広まるとは限りません。
受験者カニバリゼーションは、カタカナ語なので何となく選びそうになりました。これはどういう意味ですか。
講師カニバリゼーションは、自社の製品どうしで需要を奪い合う現象です。新商品を出した結果、自社の旧商品の売上が落ちる場合がこれに当たります。消費者グループの間の溝とは関係がありません。
受験者レッドオーシャンは、競争が激しい市場のことでしたよね。市場の状態を表す言葉なので、普及の溝とは別物だと考えました。
講師正しい判断です。レッドオーシャンは企業どうしの競争が激しくなった市場を指し、対になる言葉は、競争のない未開拓の市場を指すブルーオーシャンです。
受験者整理すると、イノベーター理論の5つのグループのうち、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間の溝がキャズム、ということですね。
講師はい。補足すると、技術経営の分野では死の谷とあわせて「魔の川」「ダーウィンの海」も出題されることがあり、キャズムと混同しやすいので注意が必要です。普及の過程で「顧客層の間」に生じる溝ならキャズム、研究開発から事業化に向かう「段階の間」の障害なら死の谷、と覚えておくと判断しやすくなります。
まとめ
イノベーター理論では、採用する時期によって消費者をイノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードの5つのグループに分けます。このうちアーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にある、越えるのが難しい溝をキャズムと呼びます。新しさを評価する層と実績を重視する層で採用基準が違うことが、この溝を生みます。死の谷は研究開発から事業化までの障害、カニバリゼーションは自社製品どうしの競合、レッドオーシャンは競争の激しい市場を指す用語です。
解答・解説
正解はイです
この問題のテーマ
イノベーター理論の5つの消費者グループのうち、アーリーアダプターからアーリーマジョリティへ普及が進む段階にある「越えにくい溝」を何と呼ぶかを問う問題です。
解き方の考え方
まず、問題文が指しているのが「初期の採用層から多数派の層へ移る段階の断絶」だという点を押さえます。次に、各選択肢の用語が何についての言葉なのかを確認します。自社製品どうしの競合、研究開発から事業化までの障害、競争の激しい市場など、普及の過程とは別の場面の用語は外せます。残る顧客層の間の溝を表す用語が正解です。
選択肢ごとの解説
- ×ア カニバリゼーションカニバリゼーションは、自社の製品どうしで需要を奪い合う現象のことです。新商品を出した結果、自社の旧商品の売上が落ちる場合がこれに当たります。消費者グループの間の溝とは関係がありません。
- ○イ キャズムキャズムは、初期に製品を採用する層から市場の多数派へ普及が移る段階で生じる断絶のことです。この溝はアーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にあります。製品の新しさを評価するアーリーアダプターと、実績を重視するアーリーマジョリティでは、採用するかどうかの基準が違うため、普及がここで止まりやすくなります。
- ×ウ 死の谷死の谷は、研究の成果を製品化・事業化する段階で立ちはだかる障害を指します。事業化までの資金が足りないことがその主な要因です。技術経営(MOT)の用語で、顧客層の間の普及の溝を指す言葉ではありません。
- ×エ レッドオーシャンレッドオーシャンは、企業どうしの競争が激しくなった市場を指します。市場の状態を表す言葉で、普及の過程で顧客層の間に生じる溝を表すものではありません。
補足
技術経営の分野では、死の谷とあわせて「魔の川」「ダーウィンの海」も出題されることがあり、キャズムと混同しやすいので注意が必要です。見分けるときは、普及の過程で「顧客層の間」に生じる溝ならキャズム、研究開発から事業化に向かう「段階の間」の障害なら死の谷と覚えておくと判断しやすくなります。レッドオーシャンの対になる言葉は、競争のない未開拓の市場を指すブルーオーシャンです。
POINT
- イノベーター理論では、採用する時期によって消費者をイノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードの5つのグループに分けます。
- キャズムは、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にある、越えるのが難しい溝のことです。
- アーリーアダプターは製品の新しさを、アーリーマジョリティは実績を重視するため、両者の採用基準の違いがキャズムを生みます。
- 初期の顧客に支持されても、一般の市場に広まるとは限りません。
- 死の谷は研究開発から事業化までの障害、カニバリゼーションは自社製品どうしの競合を指す用語です。
