スコープの失敗はどれか、コストや期間の失敗と区別する
ITパスポート試験 令和5年度 問54 / プロジェクトマネジメント › プロジェクトマネジメント
過去問にチャレンジ
システム開発のプロジェクトマネジメントに関する記述a~dのうち,スコープのマネジメントの失敗事例だけを全て挙げたものはどれか。 a 開発に必要な人件費を過少に見積もったので,予算を超過した。 b 開発の作業に必要な期間を短く設定したので,予定期間で開発を完了させることができなかった。 c 作成する機能の範囲をあらかじめ決めずにプロジェクトを開始したので,開発期間を超過した。 d プロジェクトで実施すべき作業が幾つか計画から欠落していたので,システムを完成できなかった。
- ア
a,b
- イ
b,c
- ウ
b,d
- エ
c,d
会話形式の解説
講師今回は、プロジェクトの失敗事例をスコープ、コスト、スケジュールのどれにあたるかで分ける問題です。スコープとは、プロジェクトで作る成果物の範囲と、実施する作業の範囲のことです。四つの記述それぞれの原因に注目してください。
受験者cは「開発期間を超過した」と書いてあるので、期間の問題、つまりスケジュールの失敗かと思ってしまいました。
講師そこは結果の言葉につられやすいところです。予算超過や期間超過といった結果は、どの領域の失敗からでも起こり得ます。なので、分類するときは結果ではなく、何が直接の原因だったかを見ます。
受験者cの原因は「作る機能の範囲をあらかじめ決めずに始めた」ことですね。範囲を決めていないので、スコープの失敗ということでしょうか。
講師その通りです。作る機能の範囲は、成果物の範囲そのものです。結果として期間を超えていても、原因は範囲を定めなかったことにあるので、スコープのマネジメントの失敗になります。
受験者では、bは「作業に必要な期間を短く設定した」のが原因なので、こちらはスケジュールの失敗だと考えました。
講師その分類で合っています。bは結果も「予定期間で完了できなかった」と期間の話ですが、原因も期間の設定なので、スケジュールのマネジメントの失敗です。スコープの失敗ではないので、bを含む組合せは外れます。
受験者aは人件費を少なく見積もって予算を超えた事例なので、費用に関するコストのマネジメントの失敗ですね。
講師はい。aもスコープの失敗ではありません。残るdはどう考えますか。
受験者実施すべき作業が計画から抜けていた、というのは作業の範囲をきちんと定めていなかったということなので、スコープの失敗だと思います。
講師そうです。作業範囲の定義が足りなかった事例なので、スコープのマネジメントの失敗です。スコープの失敗だけを挙げているのは、cとdの組合せになります。
受験者費用の見積りならコスト、期間の設定ならスケジュール、機能や作業の範囲の決め方ならスコープ、と原因で分ければよいのですね。
講師それで整理できています。範囲・時間・費用は互いに影響し合うので、結果だけを見ると取り違えやすくなります。また、WBSは成果物や作業を細かく分解する手法で、作業の漏れを防ぐ代表的な手法です。範囲の変更を管理する変更管理と合わせて押さえておくとよいです。
まとめ
この問題は、プロジェクトの失敗事例のうちスコープのマネジメントの失敗だけを選ぶもので、正解はcとdの組合せです。スコープとは、プロジェクトで作る成果物の範囲と実施する作業の範囲を指します。人件費を少なく見積もったaはコスト、期間を短く設定したbはスケジュールの失敗にあたります。機能の範囲を決めずに始めたcと、必要な作業が計画から抜けていたdがスコープの失敗です。「期間を超過した」などの結果の言葉ではなく、直接の原因がどの領域にあるかで分類するのがポイントです。
解答・解説
正解はエです
この問題のテーマ
システム開発プロジェクトの失敗事例a~dの中から、スコープ(作る成果物と実施する作業の範囲)のマネジメントの失敗だけを選ぶ問題です。コストやスケジュールの失敗との見分けが問われます。
解き方の考え方
a~dのそれぞれについて、結果ではなく原因に注目します。「予算超過」「期間超過」といった結果は、どの領域の失敗からでも起こり得るためです。原因が費用の見積りならコスト、期間の設定ならスケジュール、機能や作業の範囲の決め方ならスコープに分類します。スコープに分類できた記述だけを含む選択肢を選びます。
選択肢ごとの解説
- ×ア a,baは人件費を少なく見積もったことが原因で予算を超えた事例で、コストのマネジメントの失敗です。bは作業期間を短く設定したことが原因で、スケジュールのマネジメントの失敗です。どちらもスコープの失敗ではないため、この組合せは誤りです。
- ×イ b,ccの「機能の範囲を決めずに開始した」事例はスコープの失敗です。しかし、bの期間を短く設定した事例はスケジュールの失敗なので、「スコープの失敗だけ」という条件を満たしません。
- ×ウ b,ddの「実施すべき作業が計画から欠落していた」事例は、作業の範囲の不備が原因なので、スコープの失敗です。しかし、bは作業期間の設定が原因なので、スケジュールの失敗です。「スコープの失敗だけ」という条件を満たさないため、誤りです。
- ○エ c,dcは作る機能の範囲、つまり成果物の範囲を決めずに始めた事例で、スコープの失敗です。結果は期間の超過ですが、原因は範囲を定めなかったことにあります。dは必要な作業が計画から抜け落ちていた事例で、作業範囲の定義が不足していたスコープの失敗です。スコープの失敗だけを挙げているのはc、dの組合せです。したがって、エが正解です。
補足
範囲・時間・費用は互いに影響し合います。そのため、cのように「開発期間を超過した」と書かれていても、スケジュールの失敗とは限りません。結果の言葉につられず、原因の部分を読むことが大切です。作業の漏れを防ぐ代表的な手法としては、成果物や作業を細かく分解するWBSや、範囲の変更を管理する変更管理が挙げられます。
POINT
- スコープのマネジメントは、プロジェクトで作る成果物の範囲と、実施する作業の範囲を定めて管理する活動です。
- 人件費や予算に関する問題はコストのマネジメント、期間や日程に関する問題はスケジュールのマネジメントの領域です。
- 「機能範囲を決めずに開始した」「必要な作業が計画から漏れた」は、どちらもスコープのマネジメントの失敗にあたります。
- 失敗事例は、結果(超過・未完成)ではなく、直接の原因がどの領域にあるかで分類します。
