マナビングITパスポート

スケジュール短縮では制約条件のどれを緩めるか

ITパスポート試験 令和5年度 問45 / プロジェクトマネジメント › プロジェクトマネジメント

過去問にチャレンジ

令和5年度 問45

プロジェクトマネジメントでは,スケジュール,コスト,品質といった競合する制約条件のバランスをとることが求められる。計画していた開発スケジュールを短縮することになった場合の対応として,適切なものはどれか。

  1. ア

    資源の追加によってコストを増加させてでもスケジュールを遵守することを検討する。

  2. イ

    提供するシステムの高機能化を図ってスケジュールを遵守することを検討する。

  3. ウ

    プロジェクトの対象スコープを拡大してスケジュールを遵守することを検討する。

  4. エ

    プロジェクトメンバーを削減してスケジュールを遵守することを検討する。

会話形式の解説

講師講師
今回は、プロジェクトの制約条件のバランスが論点です。スケジュール、コスト、スコープ(作業や成果物の範囲)は互いに影響し合います。期間を短くしたいとき、ほかの条件をどう動かせばよいかに注目してください。
受験者受験者
スケジュールを守るのが目的なので、どの選択肢も正しそうに見えてしまいます。何を基準に考えればよいのでしょうか。
講師講師
1つの制約を厳しくすると、ほかの制約のどれかを緩める必要がある、という関係を基準にします。期間を短くする主な方法は、作業をこなす力を増やすか、作業量を減らすかです。各選択肢で、作業量と作業能力がどちらへ動くかを確かめてみましょう。
受験者受験者
メンバーを削減する案は、作業能力が下がりますよね。人が減れば人件費は浮きますが、期間は短くならない気がします。
講師講師
そのとおりです。同じ作業量を少ない人数でこなすので、完了は遅くなるのが普通です。スケジュール短縮には逆効果になります。
受験者受験者
では、対象スコープを拡大する案と、システムを高機能化する案はどうでしょうか。高機能化は品質を上げる話なので、スコープとは別物だと思っていました。
講師講師
高機能化は、作るものが増えるという意味で、実質的にはスコープの拡大にあたります。どちらも開発やテストの作業量が増えるので、日数が余計にかかります。期間を縮めたいなら、スコープは広げるのではなく狭める方向で考えます。
受験者受験者
残るのは、資源を追加してコスト増を受け入れる案ですね。コストの制約を緩めて、その分で期間を縮めるという考え方でしょうか。
講師講師
はい。人員や機材を増やすことで、期間短縮が期待できます。費用と期間のトレードオフ(一方を得るために他方を差し出す関係)を検討するという、プロジェクトマネジメントの考え方に合った対応です。
受験者受験者
つまり、期間を縮めるには、コストを増やして資源を足すか、スコープを狭めるかを考えるのが基本で、作業量を増やす案や人を減らす案は逆方向ということですね。
講師講師
よく整理できています。補足すると、資源を追加して期間を縮める手法はクラッシングと呼ばれます。順番に行う作業を並行して進める手法はファストトラッキングといい、手戻りや品質低下のリスクが高まります。
受験者受験者
カタカナ語が似ていて混同しそうです。クラッシングは資源の追加、ファストトラッキングは作業の並行化、と覚えておきます。
講師講師
それで大丈夫です。ただし、遅れているプロジェクトに人を追加すると、教育や連絡の負担でかえって遅れることがあり、ブルックスの法則として知られています。資源の追加が常に効果的とは限らない点も覚えておいてください。

まとめ

プロジェクトのスコープ・スケジュール・コストは互いに影響し合うため、1つの条件を厳しくするとほかの条件の調整が必要になります。開発期間を短縮する主な方法は、コスト増を受け入れて資源を追加するか、スコープを狭めるかです。高機能化やスコープの拡大は作業量を増やし、要員の削減は作業能力を下げるため、どちらも期間短縮とは逆の方向に働きます。資源を追加して期間を縮める手法はクラッシングと呼ばれますが、ブルックスの法則が示すとおり、常に効果があるとは限りません。

解答・解説

正解はアです

この問題のテーマ

プロジェクトの制約条件であるスコープ・スケジュール・コストは互いに影響し合います。この問題は、開発期間を短縮するときに、どの制約をどう調整すれば適切かを問うものです。

解き方の考え方

まず、ある制約を厳しくすると、ほかの制約のどれかを緩める必要があるという関係を押さえます。期間を短くするには、作業をこなす力を増やす(資源を追加する)か、作業量を減らす(スコープを狭める)かのどちらかが基本です。各選択肢について、作業量や作業能力がどちらへ動くかを確かめると、期間短縮につながるかどうかを判断できます。

選択肢ごとの解説

  1. ○ア  資源の追加によってコストを増加させてでもスケジュールを遵守することを検討する。
    アの、資源を追加しコスト増を受け入れる対応は、コストの制約を緩めて期間を縮める方法です。人員や機材を増やすと並行して進められる作業が増え、期間短縮が期待できます。費用と期間のトレードオフを検討するという、プロジェクトマネジメントの考え方に合った対応です。
  2. ×イ  提供するシステムの高機能化を図ってスケジュールを遵守することを検討する。
    イの、システムを高機能化する対応は、実質的にスコープの拡大にあたります。開発やテストの作業量が増えて日数が余計にかかるため、スケジュールを守ることがかえって難しくなります。
  3. ×ウ  プロジェクトの対象スコープを拡大してスケジュールを遵守することを検討する。
    ウの、対象スコープを拡大する対応は、必要な作業を増やすので、期間短縮とは逆の効果になります。期間を縮めたいなら、スコープは広げるのではなく狭める方向で考えます。
  4. ×エ  プロジェクトメンバーを削減してスケジュールを遵守することを検討する。
    エの、メンバーを削減する対応は、作業をこなす資源を減らすことになります。同じ作業量なら完了は遅くなるのが普通なので、スケジュール短縮には逆効果です。

補足

資源を追加して期間を縮める手法はクラッシングと呼ばれます。また、本来は順番に行う作業を並行して進める手法はファストトラッキングと呼ばれ、手戻りや品質低下のリスクが高まります。なお、遅れているプロジェクトに人を追加すると、教育や連絡の負担でかえって遅れることがあり、これはブルックスの法則として知られています。資源追加が常に効果的とは限らない点にも注意してください。

POINT

  • スコープ・スケジュール・コストは互いに影響し合うので、1つを変えるとほかの調整が必要になります。
  • スケジュールを短縮する主な手段は、資源を追加すること(コストが増えます)と、スコープを狭めることです。
  • 高機能化やスコープの拡大は作業量を増やすため、期間短縮とは逆の方向に働きます。
  • 要員を削減すると作業能力が下がり、通常は完了が遅れます。

※出典:令和5年度 ITパスポート試験 問45