請負契約の再委託・報酬・解除、特約なしの判断方法
ITパスポート試験 令和8年度 問29 / 法務 › 労働関連・取引関連法規
過去問にチャレンジ
プログラム開発業務の委託に当たり,請負契約における注文者及び請負業者の権利や義務について特段の取決めがない場合の説明として,適切なものはどれか。
- ア
請負業者が,更に別の業者に仕事の一部を請け負わせる場合は,事前に注文者の承諾を得なければならない。
- イ
完成したプログラムに欠陥があるときは,注文者はいつでも欠陥の改修を請求することができる。
- ウ
注文者には,プログラムの引渡しを受けた時点で,報酬を支払う義務が生じる。
- エ
注文者は,プログラムの完成前であればいつでも請負業者に対して損害を賠償することなく請負契約を解除することができる。
会話形式の解説
講師今回はプログラム開発を請負契約で委託する場面です。「特段の取決めがない」とあるので、契約の特約ではなく民法の原則で判断します。問われているのは、再委託、欠陥への対応、報酬の支払時期、契約の解除の4点です。
受験者請負と委任のような契約の違いがいつも混ざってしまいます。請負はどういう契約として押さえればよいですか。
講師請負は「仕事の完成」を目的とする契約です。注文者は、完成した成果物に対して報酬を支払います。作業すること自体が目的の準委任とは、ここが違います。
受験者完成した結果に払うのなら、報酬は引渡しを受けたときに払う、という説明が合っていそうに思います。
講師そのとおりです。特段の取決めがなければ、成果物の引渡しと報酬の支払いは同時履行の関係にあります。同時履行とは、お互いの義務を引き換えに果たすという意味です。なので、引渡しを受けた時点で報酬の支払義務が生じるという選択肢が正解です。
受験者仕事の一部を別の業者に任せるときに注文者の事前承諾が必要、という選択肢も、もっともらしく見えました。勝手に任せられたら困る気がします。
講師実務ではそう感じますよね。ただ、請負は仕事を完成させることが目的なので、特約がなければ請負業者は承諾なしで一部を再委託できます。承諾が必要になるのは、再委託の禁止や承諾を必須とする特約を結んだ場合です。
受験者欠陥があれば改修を請求できるのは当然だと思うのですが、どこが誤りなのでしょうか。
講師修補、つまり欠陥の直しを請求できること自体は正しいです。誤りは「いつでも」の部分です。欠陥を知ってから一定期間内に通知する必要があり、請求権が時効で消えることもあります。2020年4月施行の改正民法で、以前の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に改められ、期間制限も「欠陥を知った時から1年以内に通知する」という形に整理されました。期間制限の形は変わりましたが、期間の制限なく請求できるわけではない点は同じです。
受験者完成前ならいつでも解除できる、という選択肢はどうですか。前半は正しいように見えます。
講師前半は正しいです。注文者は完成前ならいつでも解除できます。ただし、請負業者に生じた損害は賠償しなければなりません。「損害を賠償することなく」という後半の条件が誤りです。
受験者整理すると、請負は完成した成果物に払う契約で、報酬は引渡しと引き換え、再委託は特約がなければ自由、修補の請求には期間の制限があり、完成前の解除には損害賠償が伴う、ということですね。
講師よく整理できています。この種の問題では、「事前に承諾」「いつでも」「損害を賠償することなく」のような言い切りの表現が誤りの目印になりやすいので、文の最後まで読んでください。また、契約に別の定めがあればそちらが優先され、「特段の取決めがない」ときに民法の原則で判断する、という前提も覚えておきましょう。
まとめ
請負契約は仕事の完成を目的とし、注文者は完成した成果物に対して報酬を支払う契約です。特段の取決めがなければ、成果物の引渡しと報酬の支払いは同時履行となるため、引渡しを受けた時点で報酬の支払義務が生じます。特約がなければ、請負業者は注文者の承諾なしに再委託できます。欠陥の修補などの請求には通知期間や時効による制限があり、「いつでも」請求できるわけではありません。注文者は完成前ならいつでも契約を解除できますが、請負業者に生じた損害を賠償する必要があります。
解答・解説
正解はウです
この問題のテーマ
プログラム開発を請負契約で委託し、特に取決めがない場合に民法の原則がどう適用されるかを問う問題です。再委託、欠陥への対応、報酬の支払時期、契約の解除の4点が問われています。
解き方の考え方
まず、「特段の取決めがない」とあるので、契約の特約ではなく民法の原則で判断します。請負契約は「仕事の完成」を目的とし、注文者はその結果に報酬を支払う契約だという基本を押さえます。そのうえで、各選択肢の「事前に承諾」「いつでも」「損害を賠償することなく」といった言い切りの表現が原則と合っているかを確かめると、誤りを見つけやすくなります。
選択肢ごとの解説
- ×ア 請負業者が,更に別の業者に仕事の一部を請け負わせる場合は,事前に注文者の承諾を得なければならない。再委託に事前承諾が必要だとする説明は、原則とは異なります。請負は仕事を完成させることが目的なので、特約がなければ、請負業者は注文者の承諾なしに仕事の一部を別の業者に任せることができます。再委託の禁止や承諾を必須とする特約を結んだ場合に限り、承諾が必要になります。
- ×イ 完成したプログラムに欠陥があるときは,注文者はいつでも欠陥の改修を請求することができる。欠陥の改修を「いつでも」請求できるとする点が誤りです。完成品に欠陥があれば、注文者は修補などを請求できます。ただし、欠陥を知ってから一定期間内に通知しなければならず、請求権が時効で消滅することもあるため、期間の制限なく請求できるわけではありません。
- ○ウ 注文者には,プログラムの引渡しを受けた時点で,報酬を支払う義務が生じる。引渡しを受けた時点で報酬の支払義務が生じるという説明は、原則どおりです。特段の取決めがなければ、成果物の引渡しと報酬の支払いは同時履行の関係にあります。そのため、注文者はプログラムの引渡しを受けた時点で報酬を支払う義務を負います。
- ×エ 注文者は,プログラムの完成前であればいつでも請負業者に対して損害を賠償することなく請負契約を解除することができる。完成前の解除を「損害を賠償することなく」できるとする点が誤りです。注文者は、仕事が完成する前であればいつでも契約を解除できます。ただし、その場合は請負業者に生じた損害を賠償しなければなりません。解除できる点は正しいので、後半の条件まで読んで判断することが大切です。
補足
請負と準委任の違いもよく出題されます。準委任は作業や事務処理を行うこと自体が目的で、成果物の完成を約束するものではありません。また、問題文に「特段の取決めがない」とあれば民法の原則で判断し、契約に別段の定めがあればそちらが優先されることも覚えておきましょう。
※2020年4月施行の改正民法で、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に改められました。この改正で、欠陥に対する請求の期間制限は「欠陥を知った時から1年以内に通知する」という形に整理されています。選択肢イが「いつでも」とは言えず誤りであることは、改正の前後で変わりません。
POINT
- 請負契約は仕事の完成を目的とし、注文者は完成した成果物に対して報酬を支払います。
- 特約がなければ、報酬の支払いは成果物の引渡しと同時に行うのが原則です。
- 特約がなければ、請負業者は注文者の承諾なしに再委託できます。
- 注文者は完成前ならいつでも解除できますが、請負業者の損害を賠償する必要があります。
- 欠陥への修補などの請求には、通知期間や時効による制限があります。
